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立命館大学 国際関係学部 国際関係学部 校友会
 立命館大学国際関係学部 校友会 校友会業種別懇談会 #2「外務省懇談会」
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profile
松本百太 さん
国際関係学部2回生
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魯 芳 さん
井上 広勝 さん
2001年 国際関係研究科卒業
外務省国際協力局緊急・人道支援課勤務
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岩田 康雄 さん
2005年3月国際関係研究科卒業
在チュニジア日本国大使館勤務(政務・経済・領事担当)
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魯 芳 さん
甲藤 岳史 さん
2000年3月立命館大学国際関係学部卒業
外務省経済局経済連携課勤務
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魯 芳 さん
多久島 容子 さん
1998年国際関係研究科博士課程前期修了
外務省地球規模課題総括課勤務
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魯 芳 さん
吉永 潤 さん
1999年3月国際関係学部卒業
外務省広報文化交流部総合計画課勤務
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林 夏音 さん
1999年3月国際関係学部卒業
国際関係学部校友会長
   

外務省の仕事、辛いところは

松本:外務省で仕事をしていて、つらいなという部分もたくさんあると思いますが・・・在外、本省勤務でも大変なところと、あと外務省に入る前に想像していたのと、入ってからのギャップなどもあれば教えていただきたいと思います。語学研修も大変ですよね。

在外では途上国での生活、本省では国会対応

吉永:いろいろあり過ぎて・・・(笑)。順番に質問項目どおり、一つ一つ挙げていきたいと思うんですけれども、在外は仕事がおもしろいので、何が大変かというと、まず人間関係ですよね。途上国の大使館というのは小さいですから、変な人がいたら、すぐに影響が出る(笑)。余りこんな話はしないほうが良いのですが、そういうことは当然どこでもあると思いますが、公務員だから、問題のある人でもずっと残るため、問題が多いんですね。これは本省も共通した話ですけれども。あと、在外で大変なところというと、仕事がおもしろいことはおもしろいので、逆に生活が大変かなあと、途上国では。というのが一つ。

 あとは、在外でよくあるのは、パナマだとたまにあるのが議員のアテンドで、議員の先生がよく視察だとか訪問で来ます。それのアテンドというのは非常に大変です。

 ただ、本省で何が大変かというと、当然仕事は大変なんです。生活は日本だから、全然良いのですが。具体的に仕事で何が大変かというと、それは部署ごとで違ってきます。共通して大変だと思われるのは、やっぱり国会対応でしょうね。国会会期中はどこの課でも、大抵のところは国会答弁というのがあって、国会の質問が出ないのがわかるまで、だれかが残っていないといけないし、質問が出たら、朝までに答弁を仕上げて、朝イチで大臣とか副大臣の勉強会の資料を用意して、局長や課長に同行しないといけない。そういう国会対応ですね。これが一番不毛で、時間がかかって、かつ消耗する作業です。そういうところですかね。

本省では、他省庁との調整が大変。語学の勉強も大変でした

井上:中央アジアのキルギスは途上国だったので、生活環境は厳しい面もありました。家に帰ると停電で真っ暗だとか、冷蔵庫をあけると停電だから肉とかが腐っていたということもありました。まだキルギスはそれでも良いのですが、アフガニスタンとかイラク(国際関係学部の卒業生で今、アフガニスタンに1人いますけれども)では大使館の中で生活しなきゃいけない。国によっては生活面での大変さというのはあると思います。

 私は帰国してからまだ半年しか本省勤務をしていませんが、結構他省庁との調整が大変だと思います。緊急・人道支援課だと、たとえば私が所属する海外で大地震が発生したときに日本から国際緊急援助隊を派遣しますけれども、そういうときには警察庁とか、海外保安庁とか、消防庁とか、場合によっては防衛省などいろんな役所が絡んでくる調整が結構大変。

  入省する前と入省した後のギャップについては、外務省には非常に多様なバックグラウンドの人がいることです。NGO出身でずっと海外にいた方とか、大学の研究者出身とかいろんなバックグラウンドのある人がいるので、すごい刺激になります。

  私の場合ロシア語は未習で、しかも入省の際には希望していなかったので、ゼロから勉強しました。今まで関心を有していなかった地域の語学を学ぶのは大変でしたけれども、今から振り返ると、自分の視野が広がり、良かったのではないかと思います。

専門言語が「英語」。外務省員としての高いレベル求められるプレッシャー

甲藤:在外勤務の大変なところ。やっぱり在外公館のほとんどは途上国になるので、日本と比べれば、治安の悪いところ、衛生状態の悪いところ、気候の厳しいところというのはたくさんありますから、本人は仕事で行くからいいとしても、やっぱりついていく家族もそういった環境で生活をすることになるので、その負担というのはあると思います。お子さんのいる家庭では、教育の問題もあると思います。本省に関して言うと、やっぱり業務量が多いので、どうしても夜遅くなることが多いというのはあります。

  外務省に入省する前と、入省した後のギャップ。入省する前は非常に華やかなイメージを持っていましたが、入省した後に感じたのは、非常に地道な仕事が多い。華やかに見える部分は、本当に一部分というのを非常に強く実感したというところはあります。

  あと、語学研修の大変なところ。私の場合は英語なので、中途半端だと、簡単にばれてしまう(笑)。特殊言語と違って英語を話せる人はたくさんいるので、そういう聴衆がいるところで、例えば通訳をしないといけない場合は、外務省員として本当に高いレベルを求められると思うので、そういうプレッシャーというのは感じますね。

在外では、大使館に厳しい意見も。語学面では、英語と専門言語の両立に苦労

岩田:大使館というのはどうしても、在留邦人に余りいい目で見られないところもあるんですね。大使館関係者ではない人たちが3人集まると、大使館の悪口で盛り上がるところもなきにしもあらずで(笑)、だから、その批判にも一理あるところもあるんですが、中には思い込みが先行しているところもあるのかなということも正直感じます。

  それから、語学研修の大変なところ。これはやっぱり英語と自分の語学をどう両立させていくのかというところです。自分の語学だけではなくて、やっぱり英語ができないとだめですね。英語はできて当たり前というイメージがあって、外交官は特に英語ができてなんぼ、というイメージがあります。ただ、やっぱりそれも一理あるんですね。この前も経済産業省から、ミッションの方がチュニジアを訪問されたのですが、当然彼らは英語は喋れるけれども、フランス語は喋れない、アラビア語はもちろんだめだとなると、チュニジアにおける会議の場では、やっぱり共通言語はみんな英語になってしまうんですね。そういう意味では、やっぱり英語というのは好き嫌いを問わずに、絶対に使われる言語になってしまう。言語が異なる人が集まるとそういったときにやっぱり最低限の英語能力がないと、どうしても仕事ができないということになってしまいます。やっぱり英語は好き嫌いを問わずに、どんどんやっていくというのは必要だと思いました。でも、これを両立させるのは大変でしたね。

緊急事態なら寝ずに対応しなければいけない

多久島:外務省の仕事は、国家の仕事なので、自分のペースで仕事ができない。つまり、緊急事態、災害なんかが起きれば、それは寝ずにでも対応しなければいけないし、国会の話が出ましたけれども、国の仕事として、あしたの朝までにやらなければいけないということがあれば、いかに体調が悪かろうとも、それをやらなければいけない。ただ、特にギャップとか、そういうのはなくて、むしろ、だからこそやりがいがある職場であるし、非常に長期的な国の仕事にかかわるので、一生続けていける職場だと思っております。それは女性でもそうだろうと思います。 

大変な点としては、私の場合は2年間の語学研修の後に、もう二、三カ月後には、自分のところの大使とミャンマーの首相級の通訳をしなければいけなかったんですが、ちょっと待ってくださいと言える状況ではない、即戦力でやらなければいけないということ。それから、あと好き嫌いにかかわらず、どこにでも行かなくてはいけない。それは赴任地も希望が通る場合もあるし、やはり世界は広いので、どこかに、だれかが行かなくてはいけない。あるいは、その国の中でも例えば、ミャンマーなんかは娯楽とかもないし、自由に移動ができない。危険な地域も多くあって、国の中でも自由に移動ができなかったり、あと業務の中でも、女性でも僻地に行かなければいけない。

  私は大使館で政務と経済協力をやったんですけれども、例えば小学校建設の協力とか、国境地域のしかも停戦地域などにあるんですね。山を2日間ぐらいかけて行かなければいけないようなところにもプロジェクトがありますし、一度はやっぱり崖から落ちそうになって、このまま死ぬんじゃないかと思ったこともあるし、あるいは難民キャンプのようなところも行かなければいけませんし、衛生状態も悪いし、お手洗いのない場合は、自分で考えて隠れて用を足さなければいけない、そういうところは大変だと思います。

  ついつい、大変さをいろいろしゃべってしまうんですけれども、いずれにしても、やりがいがある仕事であるということと、あとその国を好きになることができれば、そういうことも楽しむことができれば、非常にやりがいのある職場だと思うし、実際そういう人が外務省に多いと思います。

女性が外務省で働くことについて教えてください

:国際関係学部は女子学生が多いので、是非お伺いしたいのですが、先ほどの発言の中で、女性でも一生働いていけますとお伺いしました。しかし、やはりどうしても女性特有の人生のイベントがありますよね。結婚、出産、場合によっては、親の介護等、女性に負担のかかるライフイベントが発生する可能性があると思うのですが、そういった場合の制度としてどういったものがあるのか、またそれらの制度は利用しやすいものなのか、教えていただけますか。

多久島:一般的に言って、まず仕事の上において男女の差別はない。つまり、女性でも十分活躍できる場所であるということ。それから、確かに結婚を機にやめる人が、昔は非常に多かったんですけれども、最近は特に私の世代ぐらいからは、産休・育休取得後に復帰したいと考えている人が増えていると思います。

  外務省に来たら、多分、例えば国際協力局であれば、半分くらいが女性という印象です。実際には、大使館も含めた外務省全体における女性の割合は約4分の1だそうですが。

  また、女性の課長も増えてきています。それはやっぱり、産休・育休の制度を抵抗なくとれる環境ができつつあるということ。基本的に細かい問題はいろいろあるんですけれども、そういう方々が戻ってきて、また同じように活躍したいときは活躍できる場が用意されているということで、昔の女性の先輩方のご苦労が、今どんどん環境の変化で強まってきているんじゃないかと思います。

:もう1点質問させてください。外交官のお仕事ですから、海外赴任になることも多いと思います。既婚の女性外交官の皆さんは、配偶者の方やお子さんを日本に残して単身赴任されているのでしょうか、それとも家族とともに赴任されたりしているのでしょうか。

多久島:そこは節目だと思うんですけれども、ある程度配慮されるケースもある。つまり、ご主人の勤務地がここなので、こういう勤務地がいいということについては考慮される場合もあり、されない場合もあります。ただ、やはりやめていく女性は多いし、一番大きいのは、女性が結婚しにくい、独身女性が非常に多いことだと思います。40代、50代になって、仕事と家庭、私はどっちもあきらめずにやりましたという人は、まだそんなに多くないですね。

:女性職員も多いということで、今後様々な経験値が積み重なって、制度や人事にも反映されてゆくということですね。

多久島:そうですね。つまり、4分の1は女性で支えられているわけですから、その人たちがちゃんと働ける環境が整わなければ、それは組織としての力にならないということです。

:そうですよね。4分の1の方が女性ということは、その方々がその分の外務省の仕事を支えているということですよね。4分の1の方が働きにくい環境であれば、当然、省としてのパフォーマンスが落ちてゆきますし、日本の外交の質にも関わってくる話にもなりますよね。

 
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