松本:日本の国際協力についてどんな意見をお持ちでしょうか。
世界に貢献できる大きな可能性を秘めている
不破:できることはたくさんある、すごく大きな可能性を秘めていると思っています。自分が所属する団体に限らず、日本人のNGOの多くが、細かいことに気づき、きめこまやかな支援を実践できていると実感します。またイギリスの大学院に留学中、ガーナに調査に行った時、現地の黒人と、白人の大学生の間で、どちらも意識しないうちに上下関係ができてしまうように感じたんです。一方、アジア人、日本人に対しては、これまでほとんど接点がなかっただけに、バックグラウンドを持ちこまずに人間関係をつくりやすいと感じました。課題を上手に吸い上げ、現地の人と良好な関係を築きながら、きめ細かく支援する。そうやって世界に貢献するポテンシャルは高いと思います。
迅速な支援の実施が課題
浅川:その点はもう少しマクロな視点でも同じようなことがいえますよね。日本は、中東やアフリカ、欧州の内戦や民族紛争に対して、世界から中立的な立場を保っていると思われていますし、利権を強く意識したり、偏った主張をしたりして外交や国際協力をすることは比較的少ないと言えると思います。そのため紛争の構図において被害側・加害側のいずれの民族の人々であっても「紛争自体の被害者には変わりない」という観点から、中立的立場で双方平等に支援することが可能になっているという欧州での支援の事例があります。そうした日本の良さをもっと生かしていけたらと思います。
あとJICAの職員としては、もう少し迅速な支援はできないものかと考えますね。支援を要請されてから実際にプロジェクトが動きだすまでに数年かかるというのが往々にして見られます。じっくり要請内容を検討し、計画を練って一番効果的な支援方法や支援内容を探ることはもちろん大切ですが、それをより迅速に、またその検討段階でも何かもっとできることはあるはずではないかと思います。また、NGOを含めて民間の団体ともっと連携していくことも今後の課題の1つだと考えています。
大切なのは一人ひとりが真剣に考えること
矢口:日本が国際社会の中でどうありたいかをみんなが真剣に考えなければならないと思っています。ODAには税金が使われているのに、多くの人はどう使われていのかほとんど関心を持っていません。そうしたことについて小さい頃から教え、考える機会と力をつくることが大切ではないでしょうか。 もう一つは、自戒を込めて「○○バカ」になってはいけないと思います。マクロな視点でどうあるべきかを見極め、日本の国際協力を進めていかなければならないと考えています。
一般の人たちの理解を高める努力が必要
藤善:一般の人たちの理解を高める努力の必要性は、私も実感します。「こんな時に、海外支援におカネを使っている場合じゃない」という声は私も耳にしたことがあります。それに対して、なぜ国際協力が必要なのか、きちんと理由を説明していかなければならないと思います。
不破:国が拠出したお金に対する成果を説明する基準も、事業実施側としては納得がいかないことがあります。私たちは「こんな状況がこう良くなった」と説明したいけれど、求められるのは、「何人対象」「何個配った」といった数での根拠に偏りがちです。彼らなりにアカウンタビリティを持とうとしていることは理解できるけれど、もっと違う指標での審査を考えるべきだと思います。
矢口:東日本大震災が発生した時、相当数の国・国際機関から支援が届いたのは、これまで日本がていねいに国際協力をやってきた成果です。アフガニスタンにあるジョイセフのカウンターパートからは、2千ドルをいただきました。「大した金額じゃないのはわかっているけれど、気持ちです」と、本当に貧しい国でも集めて、送ってくれた。それこそ数では数えられない日本人の気質が世界に浸透した成果だと思います。
藤善:そうした成果をもっと多くの人に知ってもらうことが、考え方を変えるきっかけの一つになるのではないでしょうか。
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