浅羽:博士号は「足の裏の米粒」といわれます。取らないと気持ち悪いけれど、取っても食えないという意味です。博士号についてどうお考えですか。
博士号は免許証のようなもの
佐藤:博士号は車の運転免許証のようなものですね。つまり、博士号という免許証を取得して初めて、研究の継続やポストの獲得という運転を本格的に行うことができる、ということです。私たちの世代は、博士号がなければポストをつかむことが難しいことから、博士課程の3年間で博士論文を出すことが求められました。博士論文を提出しない場合、満期退学となって一度大学を出なければなりませんでしたから、3年間で必ず博士号を取らなければと考えていました。
博士号がなければ何も始まらない
川村:博士論文執筆中に院生研究会があって、OBの先輩が「とりあえず博士学位を取得できたら光が見えてきます」と話されたのを今でもよく覚えています。当時はピンときませんでしたが、非常勤講師のお誘いをいただくようになったのも、博士号を取得してからでした。就職の機会が少なくなる今、博士号がないと何も始まらないというのが実態だと思います。
中川:確かに今は、博士号をもっていないと非常勤講師の口もありません。
博士号を取得しても、就職できるとは限らない
井出:採用審査の際の「足切り」の基準の一つが博士号の有無であることも多いと思います。取得しないと応募資格すら得られないとはいえ、取得したからといって採用されるとは限りません。取得した後で何年も苦労することもあります。
浅羽:博士号はあくまでも免許証。研究者を目指すには、長期的な展望をもって、覚悟を決めて「入院」しないといけないわけですね。
博士号を取らなければならない雰囲気はなかった
中戸:皆さんより少し上の僕たちの時代はまだ、ちょうど過渡期で博士論文を書くことは奨励されていましたが、絶対に博士号をとらなければならないという雰囲気でもありませんでした。僕たちよりも上の先生方には、大学院に進学する数も少なかったですが、修士課程修了後にすぐに教職についた方もいらっしゃったくらいです。今では考えられませんが…。
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