浅羽:自分自身が研究している学問分野は何か、ディシプリンに対する意識はお持ちですか。
ディシプリンがはっきりしないところが弱点
井出:それを明確にできないところが一番の弱点だと自分でも思っています。産業社会学部を卒業して、修士課程は国際関係研究科で途上国政治論を学び、博士課程では国際経済学の教授に指導を受けました。さらに今は、経営学部で教えています。自分でも自分のディシプリンは何なのだろうと考えることがあります。ディシプリン横断的にさまざまな先生の指導を受け、多様な視点を得られるという点はメリットですが、下手をすれば、器用貧乏で終わる危険性も否めません。
川村:私もよくその点を指摘されました。「あなたは何をやりたいの」と。国際法、国際政治、国際思想、いずれに依った論文も書きましたが、ディシプリン横断的なところが専門分野であることは、時には弱点になると思います。一方で、今の職は、国際法と国際関係論の両方が教えられるという理由で採用されたので、就職に生かせる場合もありますね。
中根:私も同意見です。国際関係学の学際的なところをメリットだと感じる一方、自分の研究領域は曖昧だなと感じることはあります。
多様な分野を修めたことが教員としての強みに
浅羽:私自身、ディシプリンに対するこだわりが強いので、研究分野を明確にしたいという気持ちがあります。ただ、同時に、教員としては、多様な分野を教えられることが強みになる場合もありますね。
中戸:個人的には、「何でもあり」の研究科で学んで良かったと思っていますが、就職する際にディシプリンが問われることはあると思います。専門分野が明確でないというのは、就職したり、学会で評価を受けたりする際には、マイナスに働く場合もありますね。
ディシプリンを明確にもちつつ柔軟性も必要
佐藤:僕もディシプリンはもつべきだと思います。研究者として意見を発する場合は常に、依拠するディシプリンの視点から発言する必要があるからです。 しかしそれだけに偏ってはおもしろくありません。たとえば、僕が京大で参加していた共同プロジェクトでは、専門外のことについても報告することが求められました。僕は国際政治学が専門ですが、開発経済論のイシューを発表したことがあります。国際関係学を学んでいて良かったのは、そうした多様な学問分野について一通りの知識を得ていたことです。
浅羽:就職が厳しい今、ディシプリンは明確に持ちつつ、臨機応変に何でもできる雰囲気を漂わせ、業績を出していくという二面性が必要なのかもしれません
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