平田:今後、商社という業界は、どのようにビジネスの内容が変化していくと予想していますか?
世の中の流れに合わせ、変化し続けることが求められる
B:商社には、ポートフォリオ・マネジメントが必要だとよくいわれます。つまり世の中の流れに合わせてビジネスのポートフォリオを変えていく。事業も、企業の形態も柔軟に変わっていけるところが商社の強みです。もちろん自分の所属する部署がなくなってしまったら辛いけれど、企業全体としては今後も変化し続けていくことが求められると思います。
仲介するだけでなく、付加価値をつけて売ることが必要
北野:上司からはよく「右から左にモノを流す人にはなるな」と言われます。仲介するだけのトレーディングではなく、そこでバリューを発揮する必要があるということです。ただメーカーからパイプを買って海外に売るだけでなく、現地で新たなサービスを提供するなど付加価値をつけて売っていくことが求められます。
メーカーの一歩、二歩先を提案する。そこが商社のおもしろいところ
A:メーカーの考えていることの一歩、二歩先を提案できないと、商社は生き残れません。メーカーが考えつかないようなことを思いつき、実行する。そこがおもしろいところでもありますね。
平田:メーカーの中には、商社を介さずに自ら作り、販売し、自社だけでビジネスを完結させることを強みとする企業も多いと思いますが。
商社はリスクヘッジの役割も果たす
B:商社を介することで、リスクをシェアするという考え方もあります。メーカー1社だけですべてを負わず、リスクを軽減した方が良い場合もある。ビジネスには、多様な考え方や方策があるということです。
強い部分にスペシャライズしていくのでは
深田:私たち新入社員の配属先でも、業績を伸ばしている部署にはたくさんの人数が配属され、市場が縮小気味の部署には配属人数も少ないことが見てとれます。同じように企業も今後、強い部門をよりスペシャライズしていくのかなと感じています。
総合商社としての「総合力」も残っていく
B:強みや得意分野を伸ばすことはもちろん必要ですが、やはり総合商社ですから、「総合力」も強みとして残っていくと私は見ています。
平田:将来の職業を考える際、女性は特に、結婚や出産・育児について考える方が多いと思います。商社の職場では、女性のワークライフバランスはどのぐらい考慮されているのでしょうか?
産休や育休制度を活用し働き続ける女性も多い
北野:私の所属する本部には女性社員が多く、現在も育児休暇から復帰したばかりの人も働いています。時短制度を利用したり、残業をせずに定時で仕事を終える女性社員もいます。もちろん産休や育休制度もあります。けれど子どもを産んで、今と同じペースで働くのは厳しいなと思います。
仕事か、家庭か、どちらに価値を置くかで働き方も変わる
A:人それぞれ何に価値を置いて働くかによって変わるのではないでしょうか。当社のある女性社員は、独身時代と同じパフォーマンスを維持するために、早朝5時に起きてひと仕事してからお子さんを託児所に預け、夕方5時にお子さんを引き取って面倒を見た後、また仕事に戻るという生活をしています。また一方では時短制度を活用して育児を優先させながら仕事を続けている女性社員もいます。
深田:結婚を機に女性は管理部門に異動する場合もあると聞きますね。
平田:多くの企業において、CSR(企業の社会的責任)活動にも力が注がれていますが、企業にとってのCSR活動の意義について考えることはありますか?
社会貢献活動が、結果的に企業の利益につながる
B:当社では最近、ある公益財団に寄付を行いました。一見慈善活動はお金儲けと相反するように思いますが、企業にとって実は重要な意味を持ってくると思います。企業の価値として大事なのは株価や時価総額などかもしれませんが、それらも会社に対する株主及び関係するステークホルダーからの評価によって決まるものです。よって社会貢献活動を行うことで、企業が社会から評価されることも、企業の価値を上げるという意味では、結果的に企業の利益につながってくると思います。今後はますます企業にとってCSRが重要になっていくでしょう。当社も社会貢献活動に戦略的に取り組んでいく意向を持っています。
植林のボランティアが将来ビジネスシーズになる場合も
深田:当社では、東南アジアで植林活動を行っています。それ自体はボランティアですが、いずれ育った木をビジネスに使うことも視野に入れています。このように、長期的にはビジネスと関わっていく社会貢献活動もありますね。
東日本大震災への支援も継続
A:当社でも東日本大震災で親御さんを亡くしたお子さんに対して奨学金を贈ったり、被災した企業に基金を入れるといった活動を続けています。お金だけでなく、社員から有志を募り、毎週のように被災地でボランティア活動に従事しています。
北野:私の会社でも、東北復興支援のためのボランティア活動への参加者を募る回覧が回ってきます。またタイで洪水があった時にも、復興支援の募金を行いました。
事業戦略の一環としてCSR活動がある
井上:非常時の支援だけでなく、当社では地域のお祭りに参加するとか、清掃活動を行うといった地道な活動も行っています。多くの企業が今後、事業戦略の一環としてCSR活動に積極的に取り組んでいくでしょうね。
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