清水:地方公務員の仕事のやりがいは、どんなところにありますか。
少しずつ仕事ができるようになることが嬉しい
藤田:私は仕事を始めたばかりで、まだできることは少ないけれど、少しずつでもできることが増えると嬉しいですね。また予算に関わる業務は全体像をつかむのが難しいんですが、それが垣間見られた時にはおもしろさを感じます。
地域が元気になるきっかけづくりに関わるのがやりがい
鈴木:地域が元気になっていくための最初のきっかけづくりに関われることが、やりがいです。補助金を交付したり、制度を整えたり、行政にしかできない支援があります。私たちのお手伝いによって、地域が自力でうまくやっていけるきっかけをつくれた時は「やって良かった」と思います。
自分の仕事が世の中をいい方向に変えていくと実感できる
原田:自分のやっている仕事が世の中をいい方向に変えていくと実感できるところが、民間企業とは違う大きなやりがいだと思います。民間企業で働いていた頃は、自分の売上が上がったり、他社との競争に勝ったりすることにやりがいを覚えましたが、心のどこかで矛盾を感じていました。現在は、たとえば小学校で英語教育が始まるという歴史的瞬間に関わることもできます。感動的だったのは、小学校で実際に英語の授業を見学した時のこと。子どもたちが外国人を相手に“I like soccer”などと答える姿を見た時、こういう環境をつくるために、微力ながら役に立てたことを誇りに思いました。
清水:予算などお金に関わる業務は、責任も大きいと思いますが、いかがですか。
予算担当ならではのやりがいを感じたい
藤田:そうですね。経理予算担当になり、行政における予算の重要性には日々実感させられます。各課がさまざまな事業に取り組みたいという熱意を持っていても、予算がつかないと実施できませんからね。私はまだ経験していませんが、限られた予算を効果的に事業に割り当てることができれば、予算担当ならではのやりがいを感じられるのではないかと思います。そのやりがいを感じるためにも、今は基礎知識を身につける努力をするしかありませんね。
各市町村の役に立てたことが嬉しかった
鈴木:青森県では、冬、除雪作業に莫大な費用がかかるんです。しかし一市町村の単位では、国からの支援を得ることは難しいのが実情です。入庁1年目のこと。青森県として各市町村全体の状況をとりまとめて総務省に説明し、除排雪費用への財政的な措置につなげることができました。各市町村全体の役に立てたことが、嬉しかったですね。
人脈をつくる大切さを実感
藤田:やりがいとは違うけれど、同期や上司との飲み会も楽しいですよ。地方自治体の仕事は、人と人とがつながって、人脈を通じてうまくいくことが多いので、人間関係をつくる大切さを感じています。
いかに多くの人と協力できるかが仕事の成否にかかわる
酒井:その通りですね。行政の仕事は一人でできるものではありません。いかに適任の人にやってもらうか、また頼める相手とのパイプをどれだけ持っているかが、仕事の成否にかかわります。その時々で一緒に仕事をする人と真摯に向き合い、信頼関係をつくっておけば、別の機会に再び一緒に仕事をすることになっても、スムーズに仕事が運ぶことが多いと感じています。
ケースワーカーとして働いていた頃、市町の役場の方とよく一緒に仕事をしました。2011年、熊野が紀伊半島大水害に見舞われた時、1週間ほど被災地支援で再び熊野を訪れたんです。その時、現場で災害支援の陣頭指揮を執っていたのは、当時一緒に仕事をしてすごくお世話になった方で、そのご縁もあって、自らの支援業務をより円滑に進めることができました。そうやって部署が変わっても、県庁職員はもちろん、他の自治体の職員や地域の方々などとも何度も一緒に仕事をする機会があります。だから仕事上での付き合いはもちろん、仕事以外でも意識的に交流の機会を持つようにして、親密な関係を築くことも大切なんです。
楽しみながらプライベートでもイベントに参加
鈴木:私も同じですね。とりわけ現在は、まちづくりに関わる仕事に携わっていることもあり、地域でイベントが開催されたら、自分が関わっていなくても顔を出すようにしています。といって仕事だからなどと意識せず、楽しみながら参加していますよ。
清水:県の役割と、市町村の役割の違いがわかりにくいのですが。
住民と直接接するか統括するかが県と市町村の役割の大きな違い
藤田:市役所や町役場では、住民の方と直接接する機会が多いのに対し、県庁では、各市町村が動きやすいように制度を統括するなど、より大きな仕事をするというイメージがありますね。
酒井:各都道府県、あるいは部署によっても役割分担はさまざまだと思います。私が関わった健康福祉事業では、例えば市は、独自に福祉事務所を運営しており、ケースワーカー業務を行っていますが、ほとんどの町村は個別には福祉事務所を構えておらず、ケースワーク業務は県が行っています。一方で県は、各市町が実施する各福祉サービスの制度やルールをとりまとめたり、さまざまな手続きの事務処理を行ったりするのが主な仕事です。とりわけ福祉は、住民の方々に近いところで実践しようという動きがあるので、県や市町村の役割はさらに変わっていくかもしれません。
清水:県と市町村が協力することもあるのでしょうか。
イベントや観光誘致では協力することも
鈴木:観光誘致やイベント開催などでは県と市町村が連携することが多いですね。一緒に実施するほうが予算的にも人員的にも充実しますし、同じ時期に同じようなイベントを実施しては、効果も半減してしまいますから、調整のためにも互いにひんぱんにやりとりしています。
政令指定都市である神戸市は独自事業が多い
原田:神戸市は政令指定都市で県に準じる権限を持っているため、兵庫県下のその他の市町村とは異なり、単独で事業を進めることが多いように思います。
|