私たちは恥ずかしい行状をしていませんか?

野澤和典(豊橋技術科学大学)

 1997年11月30日現在、59カ国に2,190名の隊員を派遣し、様々な支援・交流活動をしている海外青年協力隊について、あるいはそれら派遣国(即ち、異文化)について理解できる月刊誌『クロスロ−ド』1998年2月号のp. 40に掲載されたある日本語教師隊員のインドネシアからの報告の一部をまずご紹介しましょう。

 [引用はじめ]  ある日のコ−ヒ−ブレイクの時です。バリを訪れる日本人観光客は、どんなことを嫌っているかという話になりました。アンケ−トなどに、バリの男性があまりにしつこくするので、それが不愉快でたまらない、という日本人女性観光客が多いという話をしました。その時参加者は顔を曇らせ、口々に英語混じりの日本語で次のようなことを訴えました。
 「それはひどい。そういうインドネシア人がいることは認めるけど、私たちをそんなふうにしたのは日本人の女性たちです。日本の男性がタイやフィリピンなどへ行って遊ぶのと同じように、何年も前から、日本人の女性がやって来て、私たちを一時的な遊び相手にしてはお金を置いていったりしたのですから・・・。」
 私は大変恥ずかしい気持ちになりました。その後、ホテルなどで周りを見回すと、彼らが指摘したとおり、ブランド商品を身につけた三人以上、四人、五人という女性だけの団体客は、圧倒的に日本人です。インドネシア人だけでなく、他の国の観光客からも、きっと奇異な目で見られているに違いないと思いました。  [引用おわり]

 年数回しか海外へ出かける程度の私でさえ、男女のグル−プ別を問わず、似たような上記の状況に遭遇してきています。最小限の異文化衝突で終わってくれと祈りながら、問題が大きくならないことを願っていました。

 一般的な観光客に限らず、ビジネスで海外に出かける日本人にも大変横柄な言葉や態度で現地の人たちに接する人が少なくありません。特になぜか優越感を持っているアジアの友人たちなどを前にしてが多いようです。お金をたくさん使ってくれる「お客様」だからであるとか、ビジネス上での「お得意様」だからであると、現地の人たちは結構我慢してくれます。しかし、経済力や技術力はあっても、国際人・異文化人間としてのマナ−や品位が伴わないようなアンバランスな人たちは、軽蔑こそされ決して尊敬などされないのです。私はそういった大人を立ち直せるには遅すぎると感じている者の一人ですが、海外に出て、異文化に接した時に必須のマナ−や約束事が明確にあることを理解し、行動しなければならないということを、できれば異文化理解教育をしてきている小学校レベルからの学校教育の中で学んでいって欲しいと思います。外国語(国際語としての英語)が上手にできればよいという問題ではないのです。言語と文化は切り離せなく、同等の重要性を持っているのですから、文化を軽んずることはできないのです。私たちは自文化を代表する文化大使なのですから、国際人・異文化人間としての心得を修得し行動する必要があるのです。そのためには、あらゆる関連図書を読破したり、できる限り積極的に内外の異文化交流活動や異文化トレ−ニング研修会に参加したりして経験を積むしかありません。

 これまでに創り上げられた日本人の負のイメ−ジを瞬時に大きく修正できるはずもありません。一人ひとりが自覚して国際人・異文化人間をめざす地味な努力を続け、文化相互主義に基づく様々な交流を積極的にしていかない限り、イメ−ジ・チェンジは不可能でしょう。


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