法科大学院

FD活動

2010年度 第3回

  • 日時 2011年3月8日(火)
  • 場所 朱雀キャンパス 218教室
  • 出席者 16名
テーマ 「共通的な到達目標(コア・カリキュラム)」をどう受け止めるか
報告者 「『共通的な到達目標』をどのように位置づけるべきか?」
松宮 孝明教授

各分野からの報告
「民法について」 和田真一教授
「刑法の検討」  浅田和茂教授
「商法分野」   山田泰弘教授
「刑事訴訟法」  渕野貴生教授
「憲法分野」   市川正人教授
「民事訴訟法分野」加波眞一教授

将来法曹になるにふさわしい法律学の学識を確実に修得していることの保証のため、法科大学院教育において到達すべき共通目標を設定するとして、「法科大学院における共通的な到達目標」(いわゆる「コア・カリキュラム」)が策定された。FDフォーラムでは、すでに、第一次案が発表された段階で、その内容について検討する機会を持ったが、今回は、「コア・カリキュラム」が策定されたことを踏まえ、立命館法科大学院の教育の中でそれをどう受け止めていくかについて、意見交換を行った。フォーラムでは、松宮孝明教授(法務研究科長)の総論報告のほか、憲法・民法・刑法・商法・行政法・民事訴訟法・刑事訴訟法の各科目につき、科目担当者間の検討結果を踏まえた報告が行われた。


「『共通的な到達目標』をどのように位置づけるべきか?」


まず、認証評価における位置づけを見れば、例えば、次回本学が認証評価を受ける予定である日弁連法務研究財団の基準では、「6-1授業」の箇所に、「◎開設科目が効果的に履修できるよう、授業の計画・準備が適切になされ、適切な態様・方法で授業が実施されていること」とある。この註として、①②それぞれに「法科大学院の学生が最低限習得すべき内容を踏まえ…」と書かれている。

次に、作成の基本的考え方を見るならば、「法科大学院コア・カリキュラムの調査研究」グループは、コアカリキュラムについては「授業内容を定めるものと理解されるのではないか」という指摘がなされたが、「このような誤解を避ける趣旨で、以下においては共通的な到達目標と言う表現を用いることとする」としている。したがって、学習指導要領のような硬い授業内容を定めるものではないことになる。むしろこれは、「法科大学院修了者が、いずれの法科大学院における学修を経ても、共通に到達すべき目標を明らかにしようとする」ものとされている。そこには、法科大学院を修了し法務博士の学位を得た者が、将来法曹となるにふさわしい法律学の学識を確実に修得していることを保証することができるようになるという狙いが示されている。

要するに、法律基本科目教育や法律実務基礎教育の共通目標を設定することで、修了者が将来法曹となるにふさわしい法律学の学識を確実に修得していることを保証しようとするもの(「ミニマム・スタンダード」)だが、ここに示されている理解の程度にいたっていない学生は修了に値しないというトーンだとすれば、このハードルはかなり高く、修了要件の厳格化につながるのではないか。共通到達目標では、どこまで理解させるべきかについても一定の共通性を要求しているが、これは真剣に考えるとかなり大変な話である。授業で教える項目と自学自習の項目を切り分けることはできるが、そのような自学自習等の結果、この程度の水準にまで達しているかをチェックするのはなかなか難しい問題がある。各分野の報告を聞いてから、新年度における具体的対応方法を考えたい。


各分野からの報告では、「共通的到達目標(コア・カリキュラム)」と本学の教育内容の照応関係、「コア・カリキュラム」策定を受けて、4月以降の教学の中でどう受け止めていくかに関する各分野の検討状況が報告された。全体として、「コア・カリキュラム」であげられた項目については、各年次の教育全体の中でカバーできているが、全部を正課で扱えない場合もあるので、自学自習を促進することが同時に必要であること、どこまでそれらが院生の中に定着できているかの検証の課題があること、また、この「コア・カリキュラム」は「ミニマム・スタンダード」であり、司法試験の出題と必ずしも連動しているわけではないので、その点を院生にも正確に理解させる必要があることなどが指摘された。

その後の議論では、①共通的到達目標の意味合いについて、これが新司法試験の出題範囲等と連動しておらず、修了要件的意味合いが強いが、これをどう考えるか。②L1の科目でカバーしていても、それらを受講していないS1の入学前の学習状況においてカバーしていないものもあるといったた態をどう考えるか。③「コア・カリキュラム」には、到達目標として、「説明できる」とかいろいろなレベルのことが書いてあるが、これを我々が教育においてどのようにいかすのか。授業で「触れた」ということと「学生が修得した」という点には違いがあるが、この点をどうするかといった論点につき意見交換が行われた。その結果、新年度において院生に「コア・カリキュラム」を配布し、同時に、その位置づけや本学のカリキュラムとの関係を説明し、院生が、自己の学修に生かせるようにすること、各科目において、「コア・カリキュラム」の性格を踏まえつつ、これを教育の中に生かしていく必要があるといった点が共通の認識となり、具体的な方法等は、教務委員会や教授会で検討することになった。

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