FD活動
2019年度 第2回
-
日時
2020年3月3日(火)
16:00-17:05 - 場所 202教室
- 出席者 16名
テーマ | 第1回共通到達度検証試験の分析と検証 |
---|---|
報告者 |
①趣旨説明 島田志帆教授・FD委員長 ②中山布紗教授 (民法) ③松宮孝明教授 (刑法) ※憲法については、坂田隆介准教授作成の資料配布 |
本年度の第2回FDフォーラムでは、「第1回共通到達度検証試験の分析と検証」をテーマとして取り上げた。
既に昨年度の第2回FDフォーラムにおいて、「共通到達度確認試験を含む短答式問題との関わり」とのテーマのもと、授業内における短答式問題への取組みや共通到達度確認試験へ対応するための方策等を取り上げていた。本年度は、2020年1月12日に第1回共通到達度確認試験が実施されたことを受けて、第1回試験の特徴や傾向、それらを踏まえた未修者1年の授業内容のあり方について、民法・刑法の担当者に報告していただいた。なお、憲法の担当者にも報告を依頼していたが、急病により欠席となったため、資料配布のみ行っていただいた。
まず、中山教授からは、出題方式・試験時間は昨年度実施の第5回施行試験と同様であり、全分野からのバランスが考えて出題されているほか、出題内容は条文、基礎的知識、基本判例の理解を問うものであることが報告された。試験成績は、得点率が約7割以上の層(A)と、4割程度にとどまった層(B)とに分かれ、その格差は大きいものの、学内平均(47.01)は全国平均(47.13)に準じている。問題別にみると、判例知識がきちんと定着していないがゆえに正解率が悪かった問題がみられたほか、正答率が50パーセント未満となった問題のほとんどが、春学期開講の民法Ⅰと民法Ⅱで取り扱った事項であった。以上を踏まえて、民法科目の課題としては、すでに民法Ⅰや民法Ⅲで実践されているような、基本的な知識、条文知識の定着を促す練習問題(ドリル的な問題)を日頃から解かせることの重要性、予習よりも復習に重点を置いた学習、最低限判例の結論を理解させ、また、改正民法の新設条文を丁寧に説明する必要性などが挙げられた。
次に、松宮教授からは、まず、実施時期の問題点が指摘された。正課の授業を1週残して試験が実施されたが、最終週の授業で扱う予定であった刑法各論の一部からも出題がされた。出題傾向としては、前半(〇×式)・後半(5択式)ともに刑法総論・各論から満遍なく出題されているが、判例問題が圧倒的多数であり、重要判例を事案とセットにして学習することが求められている。また、試験成績は、全国平均を1ポイント以上上回るものとなったが、現在の授業運営の方法が通用しているといえる。刑法Aでは施行試験の過去問を、刑法Bでは司法試験の択一式試験の過去問を、それぞれ復習問題として利用し、解説の時間が長くなることもあったが、受講生からは好評であり、総じて授業を通じて共通到達度確認試験への対応力が定着したといえる。
なお、憲法科目からは、資料によれば、全体的に出来が悪いほか、GPAとはきれいには相関していない点が指摘された。試験結果からみると、総論と統治が弱く、また、最新判例が出題されているが憲法Aでは取り扱っていない、などの問題点がある。統治を扱う憲法Bでは、知識確認は対応しやすいが、憲法Aでは、知識確認と考え方の修得とのバランスに工夫が必要であり、対応について憲法分野で協議したいとの意見が出された。
以上の報告をもとに、質疑応答が行われた。まず、民法科目では、民法Ⅲでは、出題内容は授業内容と一致しており、試験結果とGPAに相関関係が認められること、また、民法Ⅳでは、範囲が広いため重点に絞って教えており、施行試験の過去問をレジュメに添付して、小テストとして2回実施しているとのことであり、民法科目全体として共通到達度確認試験への対策がとられていることが示された。さらに、刑法と同様、試験の実施時期は最終授業週との関係で問題があることも示された。刑法科目からは、判例問題が多く出題されるが、判例の事実関係の説明と授業時間との兼合いが難しいとの意見があり、また、試験成績とGPAとの相関は必ずしも見られず、個人の得意不得意により刑法特有の動きがみられると指摘された。
科目を超えた共通の問題としては、問題別の全国正答率が開示されていないため、分析と対応に限界があるとの指摘がされた。また、既修者の短答式問題への対応策の要否も問題提起されたが、データ上、やはり未修者への短答式問題への対応が重要である旨の意見も出された。また、短答式問題が廃止された科目の中でも、論文式問題で短答レベルの知識も問うようになったものがある一方(商法、民事訴訟法)、短答式試験廃止の影響はないとするもの(刑事訴訟法、行政法)もあった。なお、試験結果には、入試成績との相関関係がないことも指摘された。
以上のように、本フォーラムにおける各報告と質疑応答・意見交換を通じて、共通到達度確認試験の分析結果と対応策の必要性が共有されたといえる。今後は、各分野において、実践的な対応策を議論していく旨が確認された。