法科大学院

FD活動

2020年度 第3回

  • 日時 2021年3月2日(火)17:30 ~ 18:35
  • 場所 203教室
  • 出席者 14名
テーマ 法曹コースと法科大学院教育
報告者 ①坂田隆介准教授(特修憲法)
②和田真一教授 (特修民法)
③松宮孝明教授 (特修刑法)

本年度の第3回FDフォーラムでは、「法曹コースと法科大学院教育」をテーマとして取り上げた。

 立命館大学法学部では、当法科大学院との連携協定に基づく法曹進路プログラム(法曹コース)が2019年度入学生から適用されており、今年度から法学部2回生による同コース設置科目の履修が開始されている。法曹コースは、法学部を3年で早期卒業し、法科大学院既修者コースへの接続を図ることで5年一貫型教育を図るものであるから、法曹コース設置科目において、法科大学院未修コースと同等の教育内容を実現する必要がある。そこで今回は、今年度開講された科目の授業担当者から、法科大学院教育の内容を実現・担保するための試みや、共通クラスがある場合の調整、その他成績評価方法などについて報告をしてもらい、教員間で意見交換と情報共有を図ることとした。

 まず、坂田隆介准教授の報告によると、特修憲法(春学期)では、法学部科目の憲法Ⅰ・憲法Ⅱの学習を踏まえて、事前に論点(判例・学説)を予習させたうえで、事例問題を検討していく方法をとっている。法科大学院の授業内容との関係では、憲法訴訟・統治(法曹)の対象範囲もあわせると、未修者コースの必修科目である憲法A・憲法B・憲法Cの対象を全てカバーしており、授業レベルとしても、ほぼこれらと同等の水準を確保している。授業方式の面では、事例問題への回答という点で法科大学院の授業よりも実践的な内容となっており、また、受講生の特徴として、意欲のある学生が熱心に受講している。憲法Ⅰ・Ⅱでは取り上げられなかったテーマも取り扱われることから、学部講義のフォローとしての意義も認められる。

 次に、和田真一教授からは、特修民法(春学期)の授業内容について報告された。授業方法は、設例をもとに、答案構成、論点の説明を行う方式である。共通クラスでは担当者と授業内容等を調整している。考慮すべき点としては、法学部2回生春学期の時点では、民法Ⅰα・民法Ⅰβ(民法総則)の履修しか終えておらず、しかも反復学習もないまま、受講せざるを得ないことや、2回生春学期では答案の体裁はできていないことなどがある。答案を添削・返却するという方式については、他の授業では添削の機会がないこともあり、受講生の評判は高い。全体としては、2回生春学期の特修民法だけで法曹コースの科目として十分か、状況を見ていく必要があり、自主企画演習の活用によって補充する方向性も示された。

 最後に、松宮孝明教授から、特修刑法(秋学期)に関して報告された。秋学期の開講であるため、春学期に刑法総論を履修し、秋学期で刑法各論を並行して履修することを見据えて、特修刑法では総論・各論をともにカバーする授業内容が可能となっている。授業方法は、簡単な事例問題を示して予習を指示し、事前に答案を提出させ、授業前日に添削・採点して返還するものである。授業当日は、提出された答案を素材にして作成した「モデル答案」に赤とコメントを入れながら、解説をしていく。成績評価との関連では、総復習の意味を込めて出題した最終到達度検証があまりできておらず、復習による定着が課題として指摘された。なお、全回で実施したコミュニ―ケーションペーパーによると、授業内容は受講生に概ね好評であった。

 各報告の質疑応答を通じて、学部生の答案作成能力を高めるための指導方法や、法曹コースの科目を受講する学生の意欲や実際の進路傾向、当法科大学院既修者コースへ進学した学生に想定される学習レベルなどについて、活発に意見交換がされた。また、法科大学院未修者コースの法律基本科目は講義科目であるため、たとえば判例を理解し内在化を図るといった指導が可能であるが、この点を法曹コース設置科目の答案作成指導の中でも実現していく必要があるとの意見も出された。判例百選の具体的な使用方法など、法学部2回生春学期の時点で使用できる教材レベルについての意見交換もされた。

 以上のように、本フォーラムにおける各報告と質疑応答、意見交換を通じて、法曹コースで実現されるべき授業内容についてのノウハウが共有されたといえる。2021年度から憲法・民法・刑法以外の法分野の科目も順次開講されていくが、今後の教育・指導において活用していく旨が確認された。

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