卒業生からのメッセージ

文学部での学びが社会でどのように活かされているかを、卒業生からのメッセージを通じて紹介します。

2019

マスコミ

歴史を通して本質を見る目ができた。仕事と子育てを掛け算で。

日本史学専攻 2009年卒業

神戸新聞社経済部 記者

日本史学専攻を選んだ理由

元々、友人や家族の間で、テレビや新聞の報道内容が話題になることが多かった経験から、報道には世論や政治を動かす力があると興味を持っていました。

「困っている人や悩みを抱えている人が過ごしやすい世の中になること」にも関心があったため、大学に入る前からマスコミの仕事がしたいと思っていました。

高校では放送部に入り、ラジオやドキュメンタリー番組を制作するなど、楽しい経験をしました。印象に残っているのは、兵庫県の地域に伝わる伝統芸能「播州歌舞伎」を子どもに教えている方を取材したことです。当時から、今につながる歴史をひも解くことに興味がありました。

私の歴史好きは父の影響だと思います。中務(なかつかさ)という苗字が珍しいので、父が名前にまつわるルーツを調べてよく聞かせてくれていました。

高校2年生の時、歴史学者で立命館大学文学部の教授でもある山崎有恒先生の講演を聞きました。伝え方が魅力的な先生で、教科書で年号を覚えるだけの歴史ではなく、出来事の裏に隠された人々の考えや政治的な狙いを話してくれました。歴史学の面白さを感じ、ものごとの裏側や真意を知ることが大事だと思ったんです。そこで、立命館の日本史学専攻に入学しました。

2つのゼミで複眼的に学んだ学生時代

立命館大学文学部の魅力は専門科目が開かれていて、日本史研究学域に入っても他学域の授業の多くが履修できることです。

1~2回生では日本史以外にも幅広い授業が選択でき、専攻の枠にとらわれずに視野や興味の幅を広げることができました。文学部がある京都は歴史の舞台が身近で、学ぶのにいい場所だと思います。3回生では、現代史ゼミを選択しました。この時代は政治的に今に直接つながっている出来事が多いのに、高校では詳しくやらないため興味がありました。

もともとマスコミ志望ではありましたが、政治的なトピックについては、大学でより深く考えるようになったと思います。高校までの授業とは違う、別の側面から歴史を学ぶことができました。

また、副専攻で朝鮮語も勉強しました。当時は韓流のドラマや映画が流行っている頃で、面白そうだと思って。文学部ではゼミ(専門演習)のクラスを希望すれば2つまで選べるため、現代史のほかに韓国映画研究ゼミにも入り、韓国の現代史を描いた映画を研究しました。

卒業論文では2つのゼミで学んだことを生かし、歴史的に日韓関係がどのように今につながっていったかを研究しました。他のメンバーも、「なぜある県にはブラジル移民が多いのか」や「鉄道の歴史」など、長い日本史の中でピンポイントに興味のあることがらを取りだし、自由に研究していたので面白かったです。

2つのゼミの他にアルバイトもやっていて忙しかったですが、それぞれのスケジュールを管理し優先順位をつけて生活していました。「やりたいことは全部やりたい」という性格なので、どれも諦められなくて(笑)。そうやって身についたマルチタスクのスキルは、今の仕事にも生きています。

歴史を学んだことが記者としての強みに

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卒業後は、子どもの頃から身近だった地元紙の神戸新聞に入社しました。最初は本当に忙しかったです。新聞記者は取材や連載、企画などを整理しながら同時進行で進めていかなければなりません。大学でマルチタスクをこなしていたおかげで、仕事が立て込んだ時も落ち着いて対処できました。

また、日本史学専攻で歴史の重要性を学んだことも、原稿を書くのに生きています。例えば私は卒業論文で韓国と日本の歴史的な関係について研究したのですが、教科書や報道だけでは知り得ない多様な背景があることに驚きました。その経験から、同じ出来事を書くにしても、潮流に流されることなく、背景を丁寧に調べることを大切にしています。「より魅力的な記事にするには」と考えた時、歴史学を学んだことが強みになっています。

子育てと仕事の両立を目指して

現在は、2人の子どもを育てながら記者を続けています。入社した10年前とは職場環境も大きく変わりました。神戸新聞では、2017年に「女性活躍推進委員会(2018年、ワーク・ライフ・デザイン委員会に改組)」がスタートしました。私も委員として参加し、女性の育児・介護とキャリア形成の両立などについて協議しています。

昔の社内は男女ともに休みが取りづらく、家庭を持つのが難しいケースもありました。それを変える取り組みを全社的に行い、今では女性の育休取得率や復職率が大きく向上しています。それに、子育ては生活者の目線を知るとても重要な経験だと思います。家庭を守っているからこそ見えてくる視点を、取材にも反映させたいですね。

本質を見極め有意義な学生生活を

社会が大きく変化している中で、今後メディアのあり方がどう変わっていくのか、なかなか読めません。そんな中、新聞社の変わらない部分や強みは「取材力」と「信頼性」です。見せ方がどう変化しても、この2つは今まで通り磨いていきたいと思います。

これから進学を目指す人には、「大学も会社も、ブランドに頼らず本質を見極めることが大事」と伝えたいですね。今の時代、大学を出ただけでいい人生が歩めるとは限りません。目指す学部で何を学びたいかを考え、イメージしておくと、より有意義な学生生活が送れると思います。

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