卒業生からのメッセージ

文学部での学びが社会でどのように活かされているかを、卒業生からのメッセージを通じて紹介します。

2021

その他

近代の遺跡からも情報を知り得る。 考古学の新たな視点にのめりこんだ大学生活。

考古学・文化遺産専攻 2017年卒業

名古屋城調査研究センター

愛知県の観光名所であり、国の特別史跡でもある名古屋城。1615年(慶長20)の築城当時から現存する石垣の調査を行うのが、私の主な業務内容です。石垣は地上に見えている部分だけでなく、地下にも続くとても深くて大きいもの。一つひとつ目視で確認しながら、どの部分が壊れているのか、またどの部分にひびが入っているのかを地道に調べ「石垣カルテ」を作っています。

まだ入庁して3年目ですので、アドバイスをいただきつつ、調査計画を立てたり現場の監督をしたりと幅広く業務に携わっています。城内を掘ったりお堀にボートを浮かべて調査したりするのは楽しく、とても興味深く仕事に関われています。
graduate/graduate43_sub01 石垣調査の様子

現在は発掘調査など考古学の分野で働いていますが、大学入学当初に興味があったのは近代の歴史を中心とした文献史学でした。考古学は古代の歴史を深掘りする作業という固定概念があり、どこか遠い世界のようにも感じていたのです。
その考えが変わるきっかけになったのは、近現代の考古学を研究されている先生の授業でした。授業の中で、「当時軍需工場があった埼玉や戦場となった沖縄では陶器製の手榴弾が発掘されている。戦争中は鉄不足で武器すら陶器で作られていたことが見えてくる。考古学とは物を分析する学問である」と教えていただきました。これに深く感銘を受け、歴史を新たな角度から読み取っていける考古学にどんどんのめり込むようになっていったのです。

将来は文化財関係の職に就きたいと考えるようになり、ゼミでの発掘調査や遺物の整理作業には積極的に参加しました。とくに大学・大学院を通して参加した、京都市内における近代京焼窯跡の発掘調査は印象に残っています。

京焼窯は、窯自体が貴重なものであるにもかかわらず、開発により壊されたり文化として消え去りつつあったりという状況です。近代の遺構や遺物は古代のものに比べて軽視されがちなのですが、近代であっても調査し、次の時代へと繋いでいかなければいけません。縄文時代や弥生時代と同じ眼差しで近代も調査する大切さを学んだことは、現在の仕事にもしっかりと生かされています。
graduate/graduate43_sub02 奈良県 赤膚山元窯での記念写真

名古屋城は金のシャチホコや天守閣に注目が集まり、石垣はあまり目立たない存在です。しかし、築城から現在まで残っている石垣は名古屋城の歴史を今に伝える存在ともいえます。 そんな貴重な石垣に関心を持っていただけるよう、市民向け講座等、様々な取り組みを考えています。新型コロナウイルスの蔓延により頻繁に開催できてはいませんが、少しずつ広まっていけばと願っています。

立命館大学には個性豊かな先生がたくさんおられます。そのおかげで、私自身も縄文時代や古墳時代など従来の考古学の枠にとらわれない考古学的思考を持つことができました。土器や石器だけではない、考古学のさまざまな魅力をぜひ知っていただきたいです。

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