在学生の声

4,000名超の文学部生、一人ひとりがオンリーワンの活動を行っています。その活動の一端を紹介します。

2020

特別企画

学生の知的なレスポンスを促し、 すすんで学ぶ姿勢を育てる。


授業概要

多くの名作を生んだ英米文学。「英米文学概論Ⅰ」は、小説・詩・演劇を中心に、英語で書かれたさまざまな文学作品を取り上げ、そのスタイルや表現の技法、特徴を学ぶ講義形式の授業。多種多様な作品の比較分析を通して、英語文学への理解を深め、文学的感性を涵養することを目標にしています。第11回の今回は、前回に引き続き小説の語りの技法を学ぶ授業。英文学を代表する作家ジェイン・オースティンとヴァージニア・ウルフを取り上げ、人物造型や心理描写について学びます。専門分野の導入科目のため、1回生を中心に約130名が受講しています。


ここが見どころ・授業のポイント

POINT①

コミュニケーション重視の双方向型授業
「英米文学概論Ⅰ」の授業では、manaba+R※のアンケート機能(出席カード)を生かし、竹村先生が独自に作成した「レスポンス・シート」をフル活用。毎回の授業で受講生に質問やアンケートを行い、回答を求めるなど、受講生とのコミュニケーションを重視した双方向型の授業を行っています。授業内で提出される課題に対して受講生から寄せられた回答とコメントは、manaba+Rで自動集計され、教室に設置された複数台の大型モニターとZoom画面にリアルタイム表示。受講生全員で共有します。
※manaba+Rとは予習・復習や出席管理、課題の出題・提出など、授業を支援するWebツールです。立命館大学の全学生がmanaba+Rを利用できます。 students/students30_sub01 manaba+Rのレスポンス・シートの課題で受講生から寄せられた回答を授業中に円グラフで表示


POINT②

アクセス手段は「3Way」
また「英米文学概論Ⅰ」では、授業の様子を教室に設置されている動画配信用のカメラとオンラインミーティングツールのZoomを使ってライブ中継。収録した授業の動画をその日のうちにクラウド上にアップしてmanaba+Rから視聴できるようにするなど、対面授業も含め、受講生が3つの方法で授業にアクセスできる方法を用意しています。長引く新型コロナウイルスの影響。さまざまな理由を抱える受講生が、それぞれの事情にあわせて授業に参加できる機会をつくりたいというのが、竹村先生の思いです。 students/students30_sub02 TA(ティーチングアシスタント)の大学院生がZoomからの出席者を確認



POINT③

仕掛け満載で、アッという間の90分
竹村先生は、受講生が講義を楽しみながら聞けるように、随所に面白い仕掛けを散りばめて授業を展開しています。今回も、題材として取り上げた『高慢と偏見』の登場人物の複雑な人間関係をまとめた図や、主人公エリザベスの心境変化を時系列で追った手作りアニメーションが登場。途中、作品のTVドラマを全員で鑑賞する場面もありました。授業時間は90分。でも多くの受講生にとっては、短い時間だったに違いありません。


授業の流れ

■SCENE①

Q&A:前回授業を振り返る
竹村先生は、毎回授業の冒頭に質問コーナーを設け、前回の授業を振り返ります。質問は、前回授業の最後にレスポンス・シートで受講生から寄せられたもの。その中から10個を選び、ひとつひとつ回答します。質問者はラジオネーム(ペンネーム)でよばれ、質問内容とともに大型モニターに表示。Zoom画面でも共有されます。 students/students30_sub03 オンライン上と対面の両方の学生に語りかける竹村教授



■SCENE②

講義:キャラクターづくりが名作の条件
質問コーナーが終わると、講義がスタートします。今回は「小説の語りの技法」の2回目。竹村先生は、名作とよばれる小説において、プロット(筋書き)とともにキャラクター=登場人物がどれほど重要な役割を果たしているかを、著名作家の言葉を引用しながら紹介しました。

■SCENE③

レスポンス・シート課題①:「あなたの推しキャラ、教えてください!」
ここで先生から、レスポンス・シートを使った最初の課題。Zoom参加も含めた受講生全員に、好きなキャラクターをたずねる質問が出されました。受講生はスマホを取り出し、manaba+Rに回答を送信。結果はその場で集計され、モニターに表示されます。小説、映画、アニメなどジャンルを問わず、意外な回答が多く寄せられました。 students/students30_sub04 受講生がスマートフォンを使ってmanaba+Rからレスポンス・シートを提出する様子


■SCENE④

講義:人を引きつけるキャラクターとは?
課題が終わると、講義再開。話題は、人物造形=キャラクターづくりへ移ります。竹村先生は、英国の小説家E.M.フォースターの言葉を引用し、名作と言われる小説で人びとを感動させるのは、説得力を持って読者を驚かせる立体的人物と解説。一例として偉大な作家ジェイン・オースティンの代表作『エマ』と『高慢と偏見』を取り上げ、人物相関図や心情変化の折れ線グラフなど、アニメーションを駆使しながら紹介しました。

■SCENE⑤

ドラマ鑑賞:映像作品との比較分析
ジェイン・オースティンの名作『高慢と偏見』では、一人の男性をめぐって揺れ動く主人公エリザベスの心の内が巧みな筆致で描かれています。それが映像ではどう表現されているかを比較分析するために、英国のテレビ局が制作したドラマ『高慢と偏見』の抜粋(10分程度)を、Zoom参加者も含めた全員で視聴しました。 students/students30_sub05 教室にて資料動画を視聴する様子



■SCENE⑥

講義:小説で使われる心理描写文型
講義再開。話題は小説の心理描写へと移ります。竹村先生は、小説が得意とするのは人間の心理描写、人間心理の奥底に分け入るのは小説しかできない技と解説。その表現手段である文体を言語学者の研究を紹介しつつ解析しました。

■SCENE⑦

レスポンス・シート課題②:『高慢と偏見』は、5文型のどれ?
ここで、この日2回目の課題。『高慢と偏見』の原作の一節が、「心理描写の文体5文型」のどれに当てはまるかを番号で答える問題が竹村先生から出されました。受講生は、いつものようにスマートフォンやパソコンで回答。モニターには、番号ごとの比率を示す円グラフが映し出されます。最も多かったのは、3番の「自由間接話法」。ただ他の番号にもそれぞれ多くの答えが集まり、受講生が多様な意見をもつことが一目瞭然で分かりました。

■SCENE⑧

講義:自由間接話法とヴァージニア・ウルフ
オースティンが『高慢と偏見』で実験的に用いた自由間接話法は、その後20世紀になって多くの作家によって多用され、モダニズム文学が生まれます。先生は、その先駆者としてオースティンと同じ英国の作家ヴァージニア・ウルフを取り上げ、代表作『ダロウェイ夫人』の特徴的な文体について解説を加えました。 students/students30_sub06 授業の様子


■SCENE⑨

レスポンス・シート課題③:授業の感想、質問を書いて提出
竹村先生の講義は、時間を10分ほど残して終了。余った時間を利用して、受講生は授業で感じたこと、意見や質問を書いてmanaba+Rに送る作業に取り組みます。レスポンス・シートを使った課題は、この日3回目。寄せられた質問は、次の授業の冒頭で取り上げられます。


■From Teacher

主体的に学ぶ姿勢を育てたい。刺激いっぱいの教室でありたい。

students/students30_sub07

竹村はるみ
国際文化学域
教授

「英米文学概論Ⅰ」は、130名以上が履修登録する大教室の授業。受講生は、講義を一方的に聞くだけの受け身の姿勢になりがちです。そんな中、課題を与えることで受講生と直接対話する機会をつくり、自らすすんで学ぼうとする姿勢を身に付けてほしいと思ったのが、レスポンス・シートの活用を始めたいちばんの理由です。

実際にやってみると、本学の学生はとても素直で、瞬発力も抜群。課題を与えると俊敏に反応し、すぐに答えを返してくれます。その内容も、多種多様。受講生は、自分とは違う意見や想像もしていなかった答えと出会い、時には共感し、時には心を動かされ、新たな気付きと発見を得ています。大学の授業で大切なのは、教員と受講生、また受講生同士の意見のやりとり(対話)です。レスポンス・シートは、私と受講生だけでなく、受講生同士のつながりを広げ、互いに刺激しあう機会をつくりだす役目も果たしています。

3つの授業形態(対面授業・ライブ配信・オンデマンド)を併用するやり方も、思った以上の成果を挙げています。受講生は、それぞれの事情に合わせて3つの方法を使い分け、授業をおさらいするためにオンデマンドを活用するなど、それぞれのやり方で学習し、相乗効果を上げています。私の願いは、柔軟な視点を持ち、文学的感性や創造力を備えた人材を社会に送り出すこと。そのために枠にとらわれないチャレンジを、これからも続けていこうと思っています。


■From Student

先生と直接話せる対面授業が好き。

(対面参加のKさん)
秋学期に対面授業が再開されてからは、毎回欠かさず教室に来て竹村先生の授業を受けています。分からないことがあっても対面授業なら先生と直接お話ができるし、教室に来れば他の人の意見も聞けて、楽しく勉強ができるからです。竹村先生は、今まであまり馴染みがなかった英米文学の世界をさまざまな視点から読み解き、わかりやすい言葉で解説してくれます。「そんな考えもあるのか」と、気付かされることもしばしば。これからも竹村先生の授業は、対面で受けようと思っています。

いつも新しい発見がある授業。

(オンライン参加のYさん)
小説を読むのも、英語の勉強も大好き。だから今日も楽しく勉強できました。印象に残っているのは、TVドラマと原作を対比しながら登場人物の作り方を学んだこと。会話だけで登場人物の性格まで浮き彫りにする小説の表現技法に驚きました。Zoom参加でしたが、ドラマの映像も問題なく視聴できたし、レスポンス・シートのやり取りも、教室の人たちと同じようにできました。特に2つ目の課題は、自分では一択のつもりだったのに、意見が分かれてビックリ。受講生全員の意見を知ることができて、いつも新たな発見があります。

対面授業とは違うオンラインの良さ。

(オンライン参加のMさん)
直前の授業がオンラインのため、竹村先生の授業はいつもオンラインで参加しています。レスポンス・シートでのやりとりは、授業中に先生とリアルタイムで対話しながら勉強できるので、とても便利で使いやすいと思います。教室にいる他の人の意見に触れられるし、先生もアンケートの結果や受講生の反応を見ながら授業を進めていかれるので、それだけ勉強を深めることができます。


新型コロナウイルス感染症の状況によって、2021年度は2020年度の授業方法と異なる場合もあります。

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