在学生の声

4,000名超の文学部生、一人ひとりがオンリーワンの活動を行っています。その活動の一端を紹介します。

2020

特別企画

資料も課題もWebでやり取り。 ガラッと変わった実習授業の学び方。


授業概要

今や必需品となったインターネットの地図検索サービス。そのベースとなっているのが、GIS(地理情報システム)です。「GIS理論および実習Ⅱ」は、世界標準のGISプラットフォーム「ArcGIS」の複雑な操作を習得し、そのスキルを用いて地理的な社会課題を発見、解決する力を身に付けるGIS中級者向け実習授業。第10回目の今回は、主にエディタ機能を使って属性情報を編集する方法をついて学びます。


ここが見どころ・授業のポイント

POINT①

Zoom、manaba+R※などをフル活用/
新たな教育メソッドとして注目を集める反転授業。村中先生の「GIS理論および実習Ⅱ」は、全15回の授業すべてでZoomやmanaba+Rをなどプラットフォームとして活用。次の授業の資料や課題を授業前にmanaba+Rに掲載し、予習を行った上で授業参加できるようにしたり、授業を記録した動画を録画配信し、授業内容を振り返りながら課題に取り組めるように工夫するなど、Webのメリットを最大限に活用しながら予習・復習の学習環境を充実させているのが最大の特色です。
※manaba+Rとは予習・復習や出席管理、課題の出題・提出など、授業を支援するWebツールです。立命館大学の全学生がmanaba+Rを利用できます。

POINT②

課題がメインで、授業はサブ/
使用するテキストは、GIS入門書『図解!ArcGIS10』(古今書院)とオリジナル教材。受講生は、manaba+Rを通じて資料や課題、マニュアルの配布を受け、テキストに掲載されている演習問題を事前学習。授業では、村中先生がオリジナルの資料を使って補足説明を行ない、TA・ESのサポートのもと不明点の確認や応用学習に集中。授業で確認した知識を使って課題を作成し、manaba+Rから提出します。
*TA(ティーチングアシスタント):授業や教学活動をサポートする大学院生
ES(エデュケーショナルサポーター):授業において、先生や学生のサポートをする学部学生
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manaba+Rの授業資料と課題を掲載しているページのキャプチャ画像

POINT③

教室での「密集」を避けるためにグループ分け/
「GIS理論および実習Ⅱ」は、履修登録者数がおよそ30名。教室となるマルチメディアルームの定員は40名で、登録者が全員教室で出席すると、密集した状態になります。そこで村中先生は、受講生を2つのグループに分け、グループごとに隔週で対面授業を行っています。対面授業でない週はオンラインでZoomから参加するか、オンデマンドで授業動画を視聴するかを学生が選んで受講します。また授業には毎回手袋と消毒液を持参し、授業が始まる前にパソコンデスク、マウス、キーボードを消毒。換気も徹底しています。指導用のデスクと受講生が座るパソコンデスクの間も2mの距離をとるなど、密集を避け、新型コロナウイルス禍の中、受講生の安全安心を確保するために細心の注意を払っています。
students/students31_sub02 共有のパソコンを使用するため授業前にはアルコールで消毒をするなど感染防止対策を徹底
students/students31_sub03 受講生同士の距離が2m以上空くように調整



授業の流れ

■SCENE①

ポリゴンデータと属性情報の統合がテーマ
この日の授業は、テキスト第3章の演習問題「属性の結合」です。教材に使うのは、一般公開されている大学キャンパス内の地図データです。このデータは建物の形状を示すポリゴン(多角形)データで、名称は記されていません。そこで建物名などの属性情報が書き込まれたExcelファイルを取り込み、ポリゴンデータと統合する方法を学ぶのが授業のメインテーマです。

■SCENE②

オリジナル資料を使って補足事項を解説
授業中、村中先生はテキストの説明をほとんどしません。受講生が事前にテキストを学習している前提で、オリジナルの資料を使いながら補足事項や注意点だけを説明していきます。この日は、Excelファイルを読み込めなかった時の対処の仕方と、Excelファイルを結合した後の出力処理を解説。受講生のパソコンと画面共有しながら、操作の手順をひとつひとつ実演指導します。 students/students31_sub04 PCを使って授業を行う村中准教授


■SCENE③

授業の模様をライブで配信
授業の様子は、教員席の前に設置されたカメラに収録され、教室の受講生の端末やZoom参加者のパソコン画面にライブ配信。村中先生が操作するパソコン画面も、受講生全員で共有され、オンライン参加の受講生でも教室の受講生と同じ環境で勉強ができます。カメラで収録した授業の動画は、すぐにWebにもアップロード。授業に参加できなかった人や、授業を振り返る受講生がオンデマンドで視聴できます。 students/students31_sub05 対面授業を行いながら同時にZoomでも配信


■SCENE④

進み具合は、チャットで確認。教室ではTA・ESもサポート
ひととおり解説が終わると、先生は教室で参加している受講生と教員席の前のカメラに向かって『みなさん、できましたか?』と受講生に声がけします。Zoom参加の受講生からは、チャットで『できました』『大丈夫です』と返事が届きました。教室では、質問がある受講生の手があがります。すると、そばにいるTA・ESがすぐに駆け付けてアドバイス。その場で問題解決してくれます。Zoom参加の受講生からチャットや音声で質問があった場合は、その場で先生がすぐに対応してくれます。

■SCENE⑤

エディタ機能を使って属性情報を書き換える
ポリゴンデータと属性情報の結合が完了すると、次は取り込んだ属性情報の編集作業。「エディタ機能」(前回までの授業で学習)を使って、ポリゴンデータに関連付けられた情報を書き換える方法を学びます。作業の難易度も、ここでグンとアップ。そこで村中先生は今度はテキストを使い、デモをまじえながら2つある編集方法をひとつひとつ順を追って詳しく解説しました。 students/students31_sub06 ArcGISのソフトウェアを使って実習に取り組む受講生


■SCENE⑥

次回の提出課題について解説
これで教科書の第3章STEP7までの学習は終了。村中先生は、次の授業までに提出する課題について説明を始めます。前回の授業では、地図上に新たに道路を書き加えたデータを作成。今回提出する課題は、そこで作成したデータに、今回作業した属性データの修正を反映したレイアウトをつくるというもの。受講生がどのように課題に取り組んだか、理解はどこまで進んでいるかをチェックできるようにデータ作成の条件が示され、授業は終了しました。



■From Teacher

学びの選択肢を広げたい。そんな思いが出発点。

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村中亮夫
地域研究学域
准教授

新型コロナウィルスの影響が広がる中、大学生が求めるものも変化しています。分からないことを直に質問したいという理由から対面授業を希望する人がいる一方、感染を心配してWebでの参加を求める人も少なくありません。私一人で、そのすべての要望を満たすことはできませんが、さまざまな事情を抱える学生がそれぞれの都合に合わせて勉強できるよう選択肢を広げることならできる。そんな思いで始めたのが、この取り組みです。

まだまだ試行錯誤の段階ですが、今は多くのメリットを感じています。本学の学生は学習意欲がとても高く、授業の選択肢が3つ(対面・ライブ配信・オンデマンド)ある中で、それぞれの事情に応じてベストな機会を選び、積極的に参加していますし、課題にも自らすすんで取り組んでくれています。 この取り組みを始めてから、授業のあり方がガラッと変わった気がします。去年までは対面授業のみであったため、授業に参加できなかった学生は課題も提出できなかったのですが、授業の動画をオンデマンドで視聴して課題を提出したり、新型コロナウイルス感染症への心配などで教室には足を運べなくてもWebならと、Zoomで参加する学生も少なくありません。選択肢が広がったことで、勉強に向き合う学生の姿勢は明らかに変化しました。改善すべき点や課題は、探せばたくさんあるでしょう。ひとつひとつ検証しながら、この取り組みを前へ進めていければと思っています。


■From Student

反転授業の相乗効果で勉強も進みます。

(対面参加のTさん)
公務員になって、観光関連の仕事につくのが今の目標。そのために「GIS学術士」(公益社団法人日本地理学会認定)の資格を取得しようと、資格に必要な村中先生の授業をとりました。先生は、教科書の補足資料をつくってくださったり、操作の手順を実演で示しながら教えてくださるので、講義をしっかり聞けば力はつきます。課題で悩むこともありますが、次の授業で先生がしっかりフォローしてくださるので、相乗効果で勉強が進みます。オンラインか、対面かは、その時の事情で決めていますが、イチオシは断然対面授業です。先生の話を直接聞けるし、疑問があっても手をあげればTAやESの方が対応してくれるからです。授業は、どんどん難しくなります。対面授業を中心に、しっかり勉強していきたいと思っています。

端末2台使えば、まるで対面授業です。

(オンライン参加のYさん)
いつもオンラインで授業を受けています。家にいると落ち着いて先生の話を聞けるし、家にあるパソコンの方が使い慣れていて、何かと便利だからです。オンラインで受講する時は、タブレットとパソコンを使い分けています。タブレットは、Zoom用。パソコンは、ArcGISを立ち上げて作業する専用です。1台でどちらもやろうとすると、2つの画面を行き来しないといけないので混乱しがちですが、2台あるから教室で対面授業を受けているような感覚で勉強できます。就職すれば、きっとどこかでGISと関わる場面であるはず。村中先生に教えていただきながら、実践で役立つスキルを身に付けたいと思っています。


新型コロナウイルス感染症の状況によって、2021年度は2020年度の授業方法と異なる場合もあります。

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