教員コラム

文学部には100名を超える教員が在籍しています。一人ひとりのリアルな教育・研究活動を紹介します。

COLUMN

小中高の英語授業改革-「使える」英語力の育成を目指して

国際英語専攻

国際コミュニケーション学域
教授

湯川 笑子

社会のなかで自分の研究を役立てるために私が取り組んでいるのは「英語教員の養成・研修」です。生徒が確かな基礎知識をもとに英語が使えるようになるための教育方法を研究し、それを小中高の先生方に紹介しています。これまで日本の学校の英語教育は、語法・文法を教え、英文和訳をするのが主でした。授業内で話されることばも日本語が中心でした。しかしそれではコミュニケーションで使用できる英語力を身につけることはできません。「確かな知識と使える英語」を習得するためには、英語の豊富なインプットとアウトプットが必須だからです。そこで、現職の先生およびその卵である学生には、モニタ(プロジェクター)で視覚的に情報を伝えながら、基本的に英語で進める英語授業、つまり英語でコミュニケーションする中で英語を教える手法を勧めています。 

ある市の、100校を超える中学校の英語改革プロジェクトに参加しました。5年間の授業改善の結果、生徒の英語の成績が大幅に伸びました。また、ある小学校では、卒業前の6年生を対象に、教員志望者による5回の特別連続授業を提供しました。その後、児童がペアになって初対面の外国人の方と3分間おしゃべりをする(Let’s Talkという会話課題)という活動を支援しました。小学校の先生方は、「英語で外国人とコミュニケーションする成功体験を持たせたい、それを中学校での英語学習への動機づけとしたい」という強い願いを持っていらっしゃったことから、それに応えて8年間継続しました。

英語は「ことば」ですから、相手に伝わらなければ学んだ意味がありません。泳げるようになりたい人が、プールサイドでいくら手足の動きや息継ぎを詳細に教えてもらっても、実際に水に入って泳がなければ泳げるようにはなりません。英語も、それを用いたコミュニケーションを通じてしか使えるようにはならないのです。そのとき大切なのは、「これを伝えたい」というメッセージ内容と意志を持つことです。言語教材にCanという助動詞があるからといって、「She can swim. She cannot swim. Can she swim?」という例文を棒読みさせて文法ルールのみに注目するのは最善の教え方ではありません。これではそもそも話題の中心であるはずのsheがだれなのか不明で、結局その人が泳げるのかどうかもわからないからです。たとえば象とかイノシシなど(泳ぎとは無縁に見える動物)の写真を見せて、「Can it swim?」と聞く方がメッセージを伴います。

コミュニケーションを念頭に置いた英語科指導法を学んだ卒業生と研修に参加された先生方が、あちこちで素晴らしい授業をし、英語が好きで高い英語力を持った生徒を育てています。これからも、本当に使える英語を教えられる教員を、一人でも多く育てていくことが私の目標です。

PERSONAL

湯川 笑子

専門領域:
英語教育、バイリンガル教育
オフの横顔:
昔からスポーツ好きでした。今も健康のための筋トレを続けています。自宅にある健康グッズは、トレッドミル、ワンダーコア、トランポリン、ダンベル、昇降台、チューブなど。持っているだけでなくもっと活用しないといけないのですが…。