教員コラム

文学部には100名を超える教員が在籍しています。一人ひとりのリアルな教育・研究活動を紹介します。

COLUMN

京都の地図と文化をデジタルアーカイブ化
時代と空間の架け橋に

地理学専攻

地域研究学域
教授

矢野 桂司

時代や場所を超えて、「京都という空間」にいつでも誰でも触れることができる「デジタルアーカイブ」の研究に取り組んでいます。研究成果の一つが「近代京都オーバーレイマップ」です。これは、明治25年頃から現代に至るまで、京都の複数の時代の地図をグーグルマップ上に位置を合わせて重ね、今の場所にかつて何があったのか、時代ごとにどう変化していったのかを、ひと目でわかるようにした地図になります。この地図で例えば立命館大学の衣笠キャンパスの場所を見てみると、大正11年には現在建物がある場所に、大きな池があったことがわかります。「近代京都オーバーレイマップ」は、インターネット上で公開していますので、誰もが自由に見ることができます。

※記事最下部にリンクがあります。

大正から昭和にかけて活躍した京都の鳥瞰図絵師・吉田初三郎の鳥瞰図(歴史都市防災研究所蔵)

さらに時代をさかのぼり、8世紀から12世紀にかけての平安京時代の京都の地図を現代に重ねたのが「平安京オーバーレイマップ」です。これは京都市平安京創生館(京都アスニー)が保有する「平安京跡イメージマップ」が元になっており、地図右上のスライドバーを左右に動かすことで、平安京時代と現代の地図を行ったり来たりすることができます。2つのオーバーレイマップはどちらもスマホでも見られるので、京都を散策しながら覗けば、悠久の時を体感することができるでしょう。

他にも私は京都の鉄道やバスの昔の写真や、世界中に散逸している日本と京都の「古地図」を、デジタルデータとしてアーカイブしています。古地図や屏風は経年劣化が避けられませんが、デジタル化することで半永久的に保存できるのです。文化資源はデジタル化されることで、様々な研究者が容易にアクセスできるようになります。文学部では2020年度より、世界から注目が集まる「京都」を学問的に捉え直す「京都学」と、ICTを活用しデジタルに人文学を捉える「デジタル人文学」を新たな領域「クロスメジャー」としてスタートさせます。私の研究は、地域研究学域、そして分野横断的な「クロスメジャー」において、時代と空間をつなぐ「架け橋」のツールとなるはずです。

立命館大学研究活動報RADIANT Issue #7 を参照

PERSONAL

矢野 桂司

専門領域:
地理学、地理情報科学、地理情報システム、京都学
オフの横顔:
日頃のストレスは銭湯通いで発散。大学までの自転車通勤路にお気に入りの銭湯が4カ所あり、そこに行くのが一番のリフレッシュになっている。