教員紹介

国際文化学域

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欧州統合という「実験」
キーワード :
フランス、欧州統合、国際関係

能勢 和宏准教授

所属専攻:
ヨーロッパ・イスラーム史専攻
専門分野:
西洋近現代史
ヨーロッパは現在EU(欧州連合)のもとで、わたしたちの常識とは異なる世界を構築しているように見えます。通貨は統一され、国境は存在意義を大きく失い、また近年はカーボンニュートラルの実現に向けた野心的なプロジェクトをスタートさせました。なぜヨーロッパはこうした欧州統合と呼ばれる企てを成功させたのでしょうか。また欧州統合は本当に世界を変えたのでしょうか。歴史学という学問を用いて、一歩下がった視点から欧州統合を眺めることで、この壮大な「実験」の行く末について考察しています。

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受験生へのメッセージ

歴史を研究しているというと、三国志や戦国武将が好きなのかと聞かれることも多いのですが、ごめんなさいまったくわかりません。歴史学はわたしにとって現代社会を知るためのひとつのツールです。歴史学に限らず文学部では現代社会を観察するための様々なツールを手に入れられます。

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移動と変容
キーワード :
インド洋、アラビア半島、移動

馬場 多聞教授

所属専攻:
ヨーロッパ・イスラーム史専攻
専門分野:
中世イスラーム世界史、インド洋海域史
中世イスラーム世界は、今日のように国境に区切られていない陸と海を様々な人々や物が移動することで、幾度もの変容を経験しました。そうしたなかでもアラビア半島南西部に興ったラスール朝では、インド洋周縁部で生産される種々の産物が行き交うとともに、北方や東アフリカ出身の人々やイエメン出身の人々が社会を構成していたことが知られています。さらにはイエメンを出奔して、インド洋をわたる人々も見られました。こうした人々や物の移動が往時の世界に与えた影響を探り、現代の世界を考え直すことを意図して、研究を進めています。

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受験生へのメッセージ

現代の地図を見ると、世界は国境で分断されていて、国ごとに異なる人間集団が固まって暮らしているのが当然のような印象を受けます。しかし、そうした区分は最近になって表れた新しい現象です。世界史を学ぶことで、私たちが当たり前に受け入れている世界をとらえなおすことができるようになります。

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近代ユーラシア商業のネットワークと太平洋世界

森永 貴子教授

所属専攻:
ヨーロッパ・イスラーム史専攻
専門分野:
近代ロシア社会経済史
近代ロシア商人史が専門ですが、これを出発点にユーラシア大陸の商業ネットワークや民族などを研究しています。ユーラシアではロシア人の他にユダヤ人、ギリシア人、タタール人、アルメニア人、モンゴル人などの多様な民族が独自のネットワークを形成しました。彼らは中世に北方の毛皮を、近代に中国の茶を求めて国境を越えていきました。その活動は探検も含めて太平洋、地中海にも広がっています。研究の中で面白いのは、彼らのローカルな文化や慣習の違いがあるのに、「モノ」への欲望は共通している点です。現代のグローバル社会を生きる私たちにとって、「ヒト」の交流・混淆がもたらすものを考えるのは大きな意味があると思います。

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受験生へのメッセージ

歴史は単なる年表や人名の羅列ではありません。歴史の本当の面白さは、「異文化としての過去」に生きた人々が、どんな世界観や価値観を持ち、それが現代までどうつながっているのか知る事です。受験生の皆さんには「歴史が好き」という気持ちや興味関心を大事に、学ぶ楽しさを知ってほしいです。

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モダン・アートに発して文学、音楽、そして聖書学へ
キーワード :
モダニズム、絵画、批評

上田 高弘教授

所属専攻:
文化芸術専攻
専門分野:
西洋美術史、比較芸術学
モダン・アートというと、何が描いているか分からない抽象画や、既製品をただ置いただけのオブジェなど、「美術」の定義を混乱させる作品が思い浮かぶかもしれません。言い換えると、かつては美術と認められなかった事物や行為を作品と映じさせる「批評」の文脈があるわけで、その解明が本来の研究関心なのですが、美術にかぎれば正直、お腹いっぱいという感じで、それもあって近年は音楽(オペラ)や文学に関する論文を公表するなど、レパートリーを拡げています。そうしてさらに一歩、踏み込もうと構想を温めているのが、若いころから関心を抱いてきた新約聖書学の分野でのささやかな試論。研究生活も終盤に入って、残り時間との競争です。

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受験生へのメッセージ

皆さんくらいの年頃の私は画家志望で、毎日絵筆を握って画布に向かっていました。尊敬できる恩師との出会いによって研究の道に入って、書きたいことを書いてきたのは大満足なのですが、「不惑」の四十代もとっくに過ぎてから再び絵筆を手にとって作品を発表したり、と惑いはまだ続いているようです。惑うことを、皆さんも怖れないでください。

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グローバルな視点から要塞築城を捉える
キーワード :
テクノロジー、文化史、身体性

唐澤 靖彦教授

所属専攻:
文化芸術専攻
専門分野:
軍事史
軍事史のなかでも、要塞築城が専門。特に、明治期に築造された、国土防禦のための洋式砲台・堡塁と附属建設物の研究です。様式美と機能美が一致したこの軍事建築群は、赤レンガや石等を主材料として不思議な美に溢れています。同じ時代、要塞は世界中で造られていました。アメリカ、台湾、ヨーロッパ、オーストラリア等での現地調査による比較を通じて、グローバルに存在する要塞築城がどのようなローカル性を発揮したのか、そしてローカルな要塞築城技術を生んだグローバル的動態は何かを考えながら、紀淡海峡の島々、舞鶴、広島湾の島々、佐世保、台湾の基隆と澎湖諸島、三浦半島、下関と北九州、そして対馬の山の中で泥だらけになってます。

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受験生へのメッセージ

南北戦争(1861-65年)ではアメリカ史上で未曾有の戦死傷者が出ました。テクノロジーが進展しているのに、将軍たちが50年前の戦い方をしたからです。イメージや発想の固着が引き起こす困難は、時代の変化が著しい現在とこれから、ますます増えます。固着に陥らないためにどんな視点が必要か。軍事史の研究はそれを考えさせてくれます。

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魂の記録として文学/哲学を読む

國司 航佑准教授

所属専攻:
文化芸術専攻
専門分野:
ヨーロッパ(特にイタリア)の文学と哲学
私はこれまで、近現代のイタリアの文学と哲学、とりわけ十九世紀の詩人ジャコモ・レオパルディと、二十世紀の哲学者ベネデット・クローチェの二名を主な研究対象としてきました。ですが、彼らの研究に飽き足らず、中世イタリアの詩人ダンテから、二十世紀ドイツの文献学者アウエルバッハまで、時代も国籍もさまざまな作家に手を出したこともありました。共通しているのは、ヨーロッパの言語を用いて執筆された作品を分析し、そこに作者の魂の記録を見出そうと試みたことでしょうか。言語も時代も何もかもが違う環境で生み出された作品を本当の意味で理解するのはまったくもって困難な作業ですが、それが少しでも達成されたと感じられる瞬間、何とも言えない感動を味わうことができます。

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受験生へのメッセージ

時代を超えて受け継がれてきた文学作品や哲学書には、何度読んでも味わいきれないほどの豊富な魅力が詰まっています。非常に長い時間をかけてじっくりとテクストに向き合うことが要求されますが、それを乗り越えて得られる感動は他には代えがたいものがあります。こうした感動を、みなさんと共有していけたらと思います。

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ラテンアメリカの近現代の思想形成と文化変容
キーワード :
ラテンアメリカ、ポスト植民地主義、先住民族、社会思想

崎山 政毅教授

所属専攻:
文化芸術専攻
専門分野:
ラテンアメリカ思想史、地域研究
僕の研究は「ラテンアメリカ思想史」を取り扱っています。ときにはチェ・ゲバラのような革命家、ときにはカルロス・フエンテス(メキシコ)やホルヘ・ルイス・ボルヘス(アルゼンチン)のような詩人・作家、ときにはふつうの人びとが生活のなかで感じ取る自由や平等、公正・不公正の感覚、そしてときには先住民族の宇宙観までの広い領域が研究対象です。ですから、理論や本から得られるものに研究は限定されません。人類学や農村社会学のフィールドワークのような調査からわかるものごとを、理論や歴史資料の分析と繋ぎ合わせて受け止め、考察し、できるならば現地に投げ返す。これが僕の研究のもっとも大切な、そしてもっとも面白いところです。

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受験生へのメッセージ

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見えないつながりを考える比較文学・比較文化
キーワード :
南洋、山人、海民

須藤 直人教授

所属専攻:
文化芸術専攻
専門分野:
比較文学
南太平洋の島々と海の世界を、日本とつなげて考察する比較文学・比較文化研究をしています。比較文学者イ・オリョンの著書『縮み志向の日本人』によると、多くの日本論が「日本にあって西洋世界にないもの=日本独特のもの」と考えています。同じく比較文学者のエドワード・サイードは『オリエンタリズム』で、西洋世界は東洋を「自分で自分を語ることができないよそ者」とみて代弁してきたと述べています。「私たち」「よそ者」のイメージを作る競合は、西洋諸国が世界中を植民地化したことで世界共通のものになり、意外なところでつながっています。その見えない「つながり」を見つけ、意味を考えるのが面白いところです。

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受験生へのメッセージ

コンピューターで自分の傾向、能力、性格を見極め、目標設定するのはよいことでしょう。ただし目標を実現できたとしても、例えば40歳で人生再設計、50歳で再び方向転換、60歳でまた、というようなことが必要な世の中になるかもしれません。その覚悟をし、好きな学問を存分に学び、柔軟多様で変幻自在な生き方・考え方を研究しましょう。

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