教員紹介
- 哲学・思想
私は中世ヨーロッパの世界を研究しています。それは遠い過去ではありますが、現代ヨーロッパの基礎はこの時代に形成されたのです。中世ヨーロッパ研究の面白さというのは、私たちとは異なった過去世界の文化や価値観を知るばかりではなく、それをつうじて「現代」をより深く認識することができる点にあるといえましょう。私の場合、キリスト教世界である中世ヨーロッパにおいて、正統のローマ・カトリック教会から「異端」とされた人々の運命に関心があります。異端者をはじめとしたマイノリティに対する迫害と不寛容の歴史は、現代の世界の各地に起きる宗教対立という私たちの「今」を考え直す材料を与えてくれるからです。
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上田 高弘教授
- 所属専攻:
- 文化芸術専攻
- 専門分野:
- 西洋美術史、比較芸術学
モダン・アートというと、何が描いているか分からない抽象画や、既製品をただ置いただけのオブジェなど、「美術」の定義を混乱させる作品が思い浮かぶかもしれません。言い換えると、かつては美術と認められなかった事物や行為を作品と映じさせる「批評」の文脈があるわけで、その解明が本来の研究関心なのですが、美術にかぎれば正直、お腹いっぱいという感じで、それもあって近年は音楽(オペラ)や文学に関する論文を公表するなど、レパートリーを拡げています。そうしてさらに一歩、踏み込もうと構想を温めているのが、若いころから関心を抱いてきた新約聖書学の分野でのささやかな試論。研究生活も終盤に入って、残り時間との競争です。
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現代社会を形成する「近代化」は、寛容や平等の精神をとなえた17・18世紀ヨーロッパの啓蒙主義に始まります。しかし、世界の紛争や虐殺は今なおやむことを知りません。とりわけ20世紀ヨーロッパでは、ナショナリズムの台頭に伴い、反ユダヤ主義が強まり、ナチズムのホロコーストにまでいたりました。なぜ啓蒙の精神から、このようなことが起こったのでしょうか。現在の私の研究は、ドイツの近代化過程において失われたものと獲得されたものの社会的・思想的要因を言語芸術と哲学から解明することです。
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“The unknowable”をキーワードに、19世紀アメリカ文学を研究しています。科学発展により知識が拡大した時代に、むしろ「不可知なもの」の意義や成り立ちを追究していた作家たちに関心があります。フレデリック・ダグラス、エミリー・ディキンスン、スイシンファーなどは、宗教的な謎にくわえ、失われた証拠、奴隷制に奪われた知識、権力をあざむく秘密作りの技法など、生活に根ざした知の限界を描きました。解らなさを見つめることで、彼らはどんな人生の機微に触れたり、社会問題に迫ったり、新たな知のあり方を模索したりしたのか?そうした探究に、なぜ詩やミステリー、自伝など特定の文学形式が選ばれたのか?こちらも手探りで考えています。
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