教員紹介

  • 哲学・思想

国際文化学域

中世ヨーロッパ世界との対話から現在を理解する。
キーワード :
キリスト教、異端、迫害

小田内 隆教授

所属専攻:
ヨーロッパ・イスラーム史専攻
専門分野:
西洋史、キリスト教史
私は中世ヨーロッパの世界を研究しています。それは遠い過去ではありますが、現代ヨーロッパの基礎はこの時代に形成されたのです。中世ヨーロッパ研究の面白さというのは、私たちとは異なった過去世界の文化や価値観を知るばかりではなく、それをつうじて「現代」をより深く認識することができる点にあるといえましょう。私の場合、キリスト教世界である中世ヨーロッパにおいて、正統のローマ・カトリック教会から「異端」とされた人々の運命に関心があります。異端者をはじめとしたマイノリティに対する迫害と不寛容の歴史は、現代の世界の各地に起きる宗教対立という私たちの「今」を考え直す材料を与えてくれるからです。

MESSAGE

受験生へのメッセージ

支配者やエリート以外の民衆やマイノリティの声はあまり記録に残らないため、研究にはつねに史料の沈黙がたちはだかります。しかし、歴史研究の醍醐味は未知なこと、暗闇にかくされたことを探り出すこと、調査と発見の楽しみにあるのではないでしょうか。何かを見出したときの高揚感は他に代えがたいものがあります。

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国際文化学域

モダン・アートに発して文学、音楽、そして聖書学へ
キーワード :
モダニズム、絵画、批評

上田 高弘教授

所属専攻:
文化芸術専攻
専門分野:
西洋美術史、比較芸術学
モダン・アートというと、何が描いているか分からない抽象画や、既製品をただ置いただけのオブジェなど、「美術」の定義を混乱させる作品が思い浮かぶかもしれません。言い換えると、かつては美術と認められなかった事物や行為を作品と映じさせる「批評」の文脈があるわけで、その解明が本来の研究関心なのですが、美術にかぎれば正直、お腹いっぱいという感じで、それもあって近年は音楽(オペラ)や文学に関する論文を公表するなど、レパートリーを拡げています。そうしてさらに一歩、踏み込もうと構想を温めているのが、若いころから関心を抱いてきた新約聖書学の分野でのささやかな試論。研究生活も終盤に入って、残り時間との競争です。

MESSAGE

受験生へのメッセージ

皆さんくらいの年頃の私は画家志望で、毎日絵筆を握って画布に向かっていました。尊敬できる恩師との出会いによって研究の道に入って、書きたいことを書いてきたのは大満足なのですが、「不惑」の四十代もとっくに過ぎてから再び絵筆を手にとって作品を発表したり、と惑いはまだ続いているようです。惑うことを、皆さんも怖れないでください。

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国際文化学域

人間は何を考えているのか。
キーワード :
ドイツ語圏文化、言語芸術

長澤 麻子教授

所属専攻:
文化芸術専攻
専門分野:
ドイツ思想史
現代社会を形成する「近代化」は、寛容や平等の精神をとなえた17・18世紀ヨーロッパの啓蒙主義に始まります。しかし、世界の紛争や虐殺は今なおやむことを知りません。とりわけ20世紀ヨーロッパでは、ナショナリズムの台頭に伴い、反ユダヤ主義が強まり、ナチズムのホロコーストにまでいたりました。なぜ啓蒙の精神から、このようなことが起こったのでしょうか。現在の私の研究は、ドイツの近代化過程において失われたものと獲得されたものの社会的・思想的要因を言語芸術と哲学から解明することです。

MESSAGE

受験生へのメッセージ

学問の基礎、人間の思考は言語です。人間の言語を学び続けることを忘れないでください。

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国際コミュニケーション学域

文学はなぜ「解らなさ」にこだわるのか
キーワード :
アメリカ文学、詩・散文、 文学と知

石川 まりあ准教授

所属専攻:
英語圏文化専攻
専門分野:
19世紀アメリカ文学・文化、思想史、 文学形式
“The unknowable”をキーワードに、19世紀アメリカ文学を研究しています。科学発展により知識が拡大した時代に、むしろ「不可知なもの」の意義や成り立ちを追究していた作家たちに関心があります。フレデリック・ダグラス、エミリー・ディキンスン、スイシンファーなどは、宗教的な謎にくわえ、失われた証拠、奴隷制に奪われた知識、権力をあざむく秘密作りの技法など、生活に根ざした知の限界を描きました。解らなさを見つめることで、彼らはどんな人生の機微に触れたり、社会問題に迫ったり、新たな知のあり方を模索したりしたのか?そうした探究に、なぜ詩やミステリー、自伝など特定の文学形式が選ばれたのか?こちらも手探りで考えています。

MESSAGE

受験生へのメッセージ

人生がどんどん変わっても、一緒に連れて歩きたい本はありますか。私には『赤毛のアン』がそんな一冊です。子どものころ家の片隅で没頭した物語はなんとも離れがたく、引越しのたびに連れていきます。逆に留学に連れ出してくれたのは、ディキンスンという詩人でした。みなさんの大学生活も、良い道連れ(本も人も知識も)が増えていく時間になりますように。

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