立命館大学図書館

  1. TOP>
  2. 研究支援>
  3. 電子ジャーナル問題

電子ジャーナル問題

電子ジャーナル問題とは、一般的に電子ジャーナルの価格が毎年上昇することで、購読が困難となり、大学などの学術情報基盤が脅かされる状況に陥っていることを指します。そもそもジャーナルの価格が毎年上昇する理由は、①研究が論文評価(被引用数など)で計られている実態を背景に、論文数が世界的に増加(世界平均で年4.5%増)しており、出版社の編集体制やシステムに掛かるコストが増加しているため、②出版社の寡占化が進み出版社間での競争が働きにくいため、③ジャーナルは他のジャーナルで代替がきかないという商品としての特殊性を有するため、の主に3点が挙げられます。このためジャーナルについては、出版社との契約交渉によって価格上昇を抑制することはできても、価格を永続的に上げさせない、といった抜本的な解決を図ることができません。

こういった状況の中、2000年頃から、電子ジャーナルをパッケージにして販売する「Big Deal」と呼ばれる購読型のモデルが登場しました。Big Dealは、大学が従来購読していたジャーナル(冊子)の購読料に、プラスαの料金を支払うだけで、アクセス可能なジャーナル数(電子)を大幅に拡大できるモデルとして、世界中で急速に浸透しました。

Big Deal導入前後

ジャーナル(冊子)の平均価格の上昇は1990年以降、人文社会科学系:年8.7%、自然科学系:年8.2%と世界的に上昇していますが、これに対し、電子ジャーナルの場合は2012年以降、平均が人文社会科学系:年5.5%、自然科学系:年4.4%で上昇を続けています。冊子に比して電子の価格上昇は低いものの、Big Dealは契約額の規模が大きいため、毎年4~5%程度の上昇でも次第に図書館予算を圧迫するようになり、世界中の大学で問題として認識されるようになりました。特に日本の場合は、①海外製品への課税の導入、②為替の動向に左右されやすい、③大学予算に占める図書館資料費の減少傾向、などもあり、最近では国内の大規模大学でもBig Dealを解体するところが出始めています。

ただBig Dealの解体を判断する際に注意しなければならないのは、Big Dealの価格上昇よりも、タイトル毎に個別に電子ジャーナルを契約する方が価格の上昇率が高いことです。このため、Big Dealの解体によって一時的にコストを削減できても、数年後には解体前の支払水準に戻ってしまうこともあります。Big Dealを解体した大学の中には、図書館と学内研究者との間で電子ジャーナルの選定に多大な労力・時間をかけ、個別契約するジャーナルのタイトル数を毎年少しずつ削り、図書館資料費を抑制しているところもあります。

このようにジャーナルの価格上昇によって世界的に学術情報基盤が危機に瀕していることを背景に、出版社に対抗する研究者コミュニティの動きの一つとして出てきたのが、論文をウェブ上に無料公開するオープンアクセス(Open Access:OA)です。

Big Deal cancel

Revised 2019.11.21