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天野 晃 先生(生命科学部)

2021.05.01


『日本人の源流:核DNA解析でたどる』
斎藤成也著(河出書房新社、2017)

DNA配列が解析できるようになって質的に変化した研究の一つが生物の進化の解析ではないかと思う。どのようにしてDNAの配列から進化上の分岐を調べるかは分子進化学の書籍などで勉強できるが、本書では、分子進化の観点から日本人がどのような経路で現在の遺伝的集団となったかという解析の系譜が具体的なデータを以って説明されており、最後に主張される結論がどのような統計量に基づいているのか、他の可能性がどのくらいあるのかということがよくわかる説明になっている。研究では、はっきりしない結論になることも多いが、ややこしいデータを解釈するアイディアこそが大事であることがよくわかる内容である。

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『代謝がわかれば身体がわかる』
大平万里著(光文社、2017)

生物の研究では、なぜこの現象が起こっているのかという疑問が発端となって色々な仕組みが解析されたり説明されたりしてきたことがわかるが、仕組みを細かく調べる余り、元々の現象を忘れてしまっている説明もよく見かける。この本では、体で起こっている代謝という現象について、まず、細かい仕組みが詳しく説明されるが、最後にきちんと体全体で起こっている現象の説明までたどりついている点で貴重な本である。生命とは、細かい現象の複雑な相互作用で実現されるシステムであることがよくわかるのとともに、勉強や研究では、最後の目的を見失わないで目の前の課題に取り組むことがとても難しいことが実感できる本である。

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『なぜヒトは学ぶのか:教育を生物学的に考える』
安藤寿康著(講談社、2018)

大学に入るまでは、学校教育の項目は厳密に決まっていて、学習する項目を選択する必要がないが、大学に入ってからは、正課も選択性になり、正課外の時間に期待される学習項目は自由に選択できるようになる。ここで、はたと自分は何を勉強したいのか、そもそもなんで勉強しているのかという疑問に突き当たることになって、答えがみつからないと大学での授業に身が入らなくなる。この本では、ヒトにとって教育と学習がかなり遺伝的に本能的な行動で、この欲求を体系化してやり過ぎてしまったのが近代以降の学校教育であることが説明される。こういう客観的な視点から、自分の学習欲求や、先生の教育欲求を眺めると、自分が何を学びたいのかが少し見えてくるのではないかと思う。

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『誰のためのデザイン?:認知科学者のデザイン原論』
D.A.ノーマン著(新曜社、2015)

理系の仕事では仕事の50%はプレゼンと言われていて、想像以上に方法や結果を説明する機会が多い。図形的なプレゼンも文章でのプレゼンも、説明に使う部品の選択がとても重要で、説明なく意味が伝わるものを上手に選択することが良いプレゼンを作る必須の技術で、このことは家電製品やソフトウェアのインタフェースの設計とまさに同じ設計技術である。本書は、アップル製品のインタフェース設計に多大な影響を与えた著者により、様々な実例を挙げて電化製品やシステムのインタフェースに使う部品が、どのように使いやすいものと使いにくいものになっているかをたくさんの具体例を使って説明しており、人に伝わるプレゼンを作るときだけでなく、人に何かを説明するときにどうすれば伝わるかを考えさせられる、人の認知の仕組みに関するとてもわかりやすい書籍である。

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『化学探偵Mr.キュリー』
喜多喜久著(中央公論新社、2013)

最近の大学生は5行以上の文章が読めないなどとマスコミに言われているが、真偽はともかく、読書量の少ない学生が非常に多いという印象ではある。卒論などの文章を書くときには、読書量の差が如実にでるので、できれば、楽しく読める小説を読む習慣は持って欲しい。本書の作者は、薬学部出身で製薬企業勤務時にミステリを書いて専業作家になったそうで、瀬名秀明や森博嗣、知念実希人など、最近少しずつ増えている理系研究者出身作家の系譜の一人であり、理系の人間が読んでも科学的な破綻が少なく安心して読める面白い本である。是非、こういう小説から始めて、書籍を継続的に読む習慣を身に付けて欲しい。

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『論理トレーニング』
野矢茂樹著(産業図書、1997.11)

よく日本語は英語に比べて論理的な表現に向いていないと言われるが、けしてそんなことはなく、論理的な人が書く日本語は十分論理的である。自分が論理的でないことを自覚させられて、論理的なものの見方や考え方を学習するのは非常に難しいが、本書は論理的な思考の学習を目的とした数少ない教科書の一つである。自分がいかに論理的でないかがよくわかるので、是非読んでみて欲しい。

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