立命館大学図書館

   
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「第5回:物事の本質を読み解く」田尾 啓一 先生(テクノロジー・マネジメント研究科)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ 尾畑(経営学部 3回生)

田尾 啓一 先生の研究概要

―― 先生は、学生のころ図書館をどのように利用されていましたか?

学生の頃は暇な時間が多かったので、よく新聞や雑誌を読みに行っていました。自分がとってない新聞ではどんな書き方がされているのかだとか、スポーツや碁など中心に読んでましたね。

―― 主にどういった本を読まれてたんですか?

数学では岩澤健吉の『代数函數論』など、気に入った本を分からないながら時間をかけて読んでました。研究テーマだけでなく、興味ある分野の近くをうろうろして、面白い本を発見してといった感じでした。暇でなければできない利用方法ですね。そういったようにして、自分のコアになる本を見つけて、自分の考えを形成し、土台となってくれる本を見つけるのがいいですよ。

―― 私はプレゼンの準備をするにしても、本を読むのは面倒なんで、つい楽をしてネットで簡単にキーワードを検索しがちなんです。

確かにネットは楽ですが、その結論に行き着くまでの背景が書かれてないです。本は著者の考え方・論じ方を学ぶだけでなく、考える力も得られます。あぁ、そういう風に考えるのかと思いながら読んでいくのがいいですね。

―― 理想的な勉強方法を実践できるよう頑張りたいです。

そういう風に、なんでだろうと遡って本を探していき、疑問に思って、読んで、考えての繰り返しです。そうして遡っていくと最近の本ではカバーしきれないんです。たとえば時価会計については100年以上にもわたる議論の経過がありますからね。ネットにはかかれていない細かい論議を追っていくことができるのが、本のいいところだと思います。そういった派生している元をたどると行き当たりますよ。

―― 自問自答しながら読み進めていかないといけないのですね。これから卒論を書かないといけないんですが、相当数の本を読まなければいけませんね?

どれだけ読めばいいかといった量は人それぞれです。疑問に思っていることが分からないと読む量は自然と増えます。また、疑問に思っていることがすでに解決されている事もあるので、研究テーマ周辺の本は読む必要がありますよね。未知の分野だと調べるものがないですが、歴史を追っていける分野は、膨大に本があるので読む量は増えるのではないでしょうか。書く量も増えますよ。

―― やはり答えを追い求めるだけではなく、考えて読まないとダメですね。

論述するにしても、裏づけに深い説得力がつきますし。自分で考えるから、疑問が生まれて自然と読みたくなる。本で補いながら、対話をしながら読むと考える力が養われます。知識が豊富になれば、自然と自分で考えるようになり、本を読みたくなってくると思います。どうしてだろうと思える自分の未整備なところを、本を読んで補っていってみてください。

―― 先生は大学のほかに、コンサルティングのお仕事もされてますが読む本に変化はありますか?

サラリーマン時代は企業自体が膨大な知識体系を成していたので、ノウハウだけで充満してました。教員になってからは求められるからではなく、自ら力をつけていこうと自然と読む量は増えました。

―― 図書館に要望はありますか?

ちょっと遠いですね。あとは、購入希望を依頼して、本が届くまでに時間がかかることですかね。今すぐ欲しいという本を図書館に依頼するのには不便ですよね。

―― お気に入りの著者はいますか?

『星新一』です。気分転換にいいんです、数分で読める短編集が多いんで。ためになる本ではないですが、気休めになるんでいいんです。本より音楽ならお気に入りはたくさんあるんですがね。衣笠のほうに『モーツァルト全集』が揃ってましたよ。

―― AV資料は少しありますけど音楽ディスクがあるとは知りませんでした。

今読んでいる本といえば、『財務会計の概念および基準のフレームワーク』『会計測定の基礎』で、会計を勉強している学生にはお薦めです。ただ、すぐには役に立たない内容です。しかし長期的に役に立つかもしれない、自分の土台形成につながる内容だと思って読んでいます。

―― 今の私に欠けてる読み方です。すぐに役立つ部分や、長ったらしい論述は飛ばしがちなので。

ようは、深いレベルで理解していることが重要です。世の中の底流を、海の底に置き換えてみると分かりやすいです。海の表面は波が立っていますが、底のほうは静かに流れています。大体の人は、世の中の表面上ばかりに注目してしまい、経済の暴落などに翻弄されがちです。そうではなく、海の底のように、流れの変化のないところに注目してみてください。技術理解にしてもシステムの考え方など、深いレベルで理解する必要があります。表面は変化するとすぐに役立たなくなるので。

―― 今すぐにではなく、自分の土台を形成する読み方がいいのですね。卒論をきっかけに実践してみようと思います。

今はネットで検索しやすくなりましたが、出会いがしらがなくなっています。ぜひ時間がある時期に自分の考えを深め、形成してくれる本をじっくり読んでください。研究テーマの本だけではなく、生き方の本の両方を読んで、そしてコアになる本を見つけてみてください。

―― 目先の利益を得ることばかりを考えるのではなく、長期的に自分を高めていこうと読むことが重要なのですね。なによりも、常に疑問を持っていることが原動力になってくるんですね。自由な時間が多い大学生活だからこそやる気次第で実践できると思います。今日は貴重なお話をありがとうございました。