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「第14回:広い知識は競争力の源」谷口 忠大 先生(情報理工学部)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ 村岡、内田

谷口 忠大 先生

谷口 忠大先生の研究概要

―― 先生は学生時代からよく読書はされていたのでしょうか?図書館は利用されていましたか?

学部生の頃はサークルに没頭していたため、あまり本は読みませんでした。 しかし難しそうな本には興味があり、図書館で借りては挑戦しようとはてしていました。 特に、レヴィ・ストロースとかヒルベルトとか、なんとなく人名がかっこよさそうな書には惹かれましたね。 完全にミーハーですが。まあ、ほとんど読まずに図書館に返してしまうことが殆どでしたが(笑)。 本を読んだ後は、断片的な内容は残りますが、詳しく何が書いてあったかは忘れてしまうものです。 だから、僕は買って読む方なんですが、メモを取る習慣がある人なら図書館は便利だと思います。

―― 先生が考える、本の魅力について教えてください。

今日は、頭の中にある発想やスキルなどが資本になっている時代、つまり知識社会です。 情報理工学や学術、経営の分野などですと顕著ですが、つまり自分の持っている思想や考え方、知識が競争力の源となっているわけです。 自分の専門分野以外の事を知らない人が多い中、広い知識を持っているという事自体が競争力になりえます。 専門分野を研究する上でも、他分野についての知識を持っていることは重要で、専門分野外で、知りたいことを効率よく引き出すには、専門の論文よりかは、他分野についての本を、読んでいた方が、スムーズだと思います。

―― おすすめの本を教えて下さい。

「現代システム論とは何か」という人、難しい単語が好きという人におすすめなのが、河本先生が書かれた『オートポイエーシス2001』です。第三世代のシステム論「オートポイエーシス」を、キーワード形式で紹介している面白い本です。 そして私が書いた本なのですが、『コミュニケーションするロボットは創れるか』もおすすめです。 人間は情報の解釈を行うとき、相手の頭の中が分からないのにコミュニケーションできています。 だからロボットも一人称視点で考えないといけません。 そして生物記号論に関する本で、動物から世界はどのように見えているのだろうかという事が書かれているユクスキュルの『生物から見た世界』もおすすめです。

―― 学生はどのように読書をすすめていくべきだと思われますか?

マスメディアや過去や現在の権威が、作り出した考え方に押しつぶされないように、雑多に多様な本を読むことが大切ですね。読書をする際も、本に書かれていることをそのまま鵜呑みにするのではなく、常に逆の立場や意見の書もひもとき、自分で思考することが必要だと思っています。ある事柄に対して、Aという意見が本に書いているから、私もAという意見だというのではなく、もう一方の、Bという反対意見からも、光を当てるように多様な視点を意識して、読書をすることが重要だと思います。

―― 先生は「ビブリオバトル」という新しい読書推進の取り組みをされていますが、生まれたきっかけを教えてください。またどのような内容か教えてください。

例えば輪読会で1つの本を皆で読んでいく場合ですが、その本自体の選択を間違うとあまりみんなの為にならない本を読むことに半期費やしてしまい、時間の無駄になってしまいかねません。また、ついつい自分の担当している場所しか読まないというので勉強の効果もあがりにくくなります。
そこで、勉強会そのものに「良い本に出合える仕組み」を組み込めないかと考えて、考案したのがビブリオバトルです。参加者がそれぞれ1冊読んできて、各自が5分間のプレゼンを即興で行い、みんなが「一番読みたいと思った本」を相互投票で選びだすことで「チャンプ本」を選出します。自分の紹介する本を「チャンプ本」として、選んでもらうには、面白い本であるとともにプレゼン方法についても工夫しなければなりません。

ビブリオバトルとは

1. 参加者が事前に面白い本を見つけて、それを読んでくる。
2. 一人5分で本の紹介を行っていく。その後、3分程度の質問・議論を行う。これを参加者が順番に行う。
3. 最後に「どの本を読んでみたくなったか?」で投票を行い、チャンプ本を決める。

詳しくは、ビブリオバトル公式サイトにて!

―― 相手に物事を伝える能力もつきそうですね。

特に日本人は自らの考えを主張する教育をあまり受けていません。だからこそ、少しやると大きく伸びるみたいです。 ビブリオバトルはレジュメやパワーポイントを用意しないという縛りがあります。コミュニケーションにおいて即興性が大事です。 相手が人なので、その場の空気を感じながら言葉を紡ぐ必要があります。 プレゼンする人がうつむいてレジュメを読むだけでは聴いている側はつまらないものです。

―― 友人や研究室の仲間と一緒に、ビブリオバトルを開いてみたいと思います。本日は貴重なお話を、ありがとうございました。

今回の対談で紹介した本

オートポイエーシス2001-日々新たに目覚めるために / 河本英夫著 新曜社 2000
コミュニケーションするロボットは創れるか-記号創発システムへの構成論的アプローチ / 谷口忠大著 NTT出版 2010
生物から見た世界 / ユクスキュル, クリサート著 ; 日高敏隆, 羽田節子訳 岩波書店 2005