立命館大学図書館

   
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「第28回:よく遊び、よく学び」大野 敦 先生(経済学部)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ 張、石井

大野 敦 先生
大野 敦 先生の研究概要

―― 立命館の図書館で「これは良いな」と思える機能・環境は何ですか?

主に三つあります。一つ目は教員専用の教員ラウンジがあることです。特別感があって先生になったんだなという気分になります。これは教員だけの特権だと思います。

二つ目は学生さんが使える施設で言うと、ぴあらですね。学生さんが館内で自由に喋ってよいスペースは、僕らの時代にはありませんでした。気軽に本を持ち込み、ディスカッションができて、発表の予行練習やインターネットが使える空間が図書館内にあるのはとてもよい環境だと思います。

三つ目はマンモス私立の魅力の一つで、本の入手が容易なことです。衣笠、APUの本もすぐに、取り寄せることができ、借りられます。APUの本は1ヶ月しか借りられませんが、衣笠やBKCの本は200冊、200日借りられるので便利です。延滞のペナルティーがやさしいのも良い点の一つだと思います。

―― ぴあらにどんな印象を受けましたか?

ぴあらに対しての好印象は先の質問で言いましたが気になる点もあります。それはぴあらに教員が入りにくい雰囲気があることです。
プロジェクター、インターネットという環境は教員の研究室では準備できないので、学生さんの練習を聴く際などに、教員にも気軽に使える雰囲気があるとより良いと思います。

―― ぴあらを使うなら学生と一緒に利用されますか?

そうです。教員同士では使いませんね。ゼミなどの学生のプレゼン練習に付き合うときなどに利用したいです。しかし、入りにくい印象があります。

―― ぜひ学生に実践してほしい図書館の利用方法はどのようなものがありますか?

是非、本を借りて欲しいです。ぴあらに行くのも良いですが、本に直接触れるのは魅力的です。
図書を借りることは図書館利用のコアであると思います。ICU(国際基督教大学の学生は一人当たり図書貸出冊数年60冊)に負けないくらい本を借りて、日本で一番本を借りる学生になってほしいです。本に囲まれた空間は幸せな空間だと思います。
古典的な図書は個人で所持していたほうがいいと思いますが、通常の図書は図書館で借りて、個人的に気に入ったものを買うというのが良いと思います。

―― 大野先生が経済学を専攻されたのには何か理由があったのでしょうか?

偶然ですね。もともと大学時代はシェイクスピアについて勉強したかったので文学部に入りました。しかし、自分でセンスないなと思い、また、先生にも社会科学が合ってそうと言われ、経済学部に入りなおしました。
そして、たまたま入ったゼミが国際経済学の先生で、貿易の研究を勧められて、金融の方がかっこいいなと思いつつ、今の分野の研究を始めました。だけど今はこの分野を研究していることに、とても満足しています。

―― アフリカの開発学が研究対象なのですか?

アフリカも研究対象の一部であって、東南アジアなども研究対象です。7年前くらいにTICADというアフリカの開発に関する国際会議を実施した際に、「日本の経験をアフリカに」という政策の傾向がありました。
.その時代に研究がスタートしたので、日本やアジアの成長の経験をアフリカにどう伝えるかが関心の一つでした。それから時代状況も変わり、現在、日本の経験について胸を張って伝えていいものなのかというのは、改めて熟慮する必要があると思います。
東日本大震災の結果を考えると、日本の経済成長は、原発事故によって一つの県をつぶしただけだという面もあります。こうした点はちゃんと考える必要があると思っています。経済発展は確かにプラスになるけれど、その日本的な開発システムを日本とは文化が異なる外国に導入して良いのかということも研究しています。

―― 学生時代、現在の図書館の利用方法や利用頻度はどれくらいですか?

学生時代はほぼ毎日でした。図書を借りる、インターネット、試験対策、彼女とのデートの待ち合わせなど、様々な利用方法でした。学生時代、友人の間では僕を探すときには図書館か校庭の木の下か食堂に行けばいいという話になっていました。
現在では利用頻度は減ってしまっています。先生になると職場の学校にいる時間はできるだけ少なくしたいのです。図書を事前に調べて、図書館では図書を借りるだけの若干味気ないものになっています。
立命の図書館は図書をリザーブしてくれることも嬉しいサービスです。一方で気になるのは、MDCの本をMDLで借りられないことです。片方の図書館で両方の図書館の図書を借りられないのは、距離も遠いし、夏になると暑いので面倒だと思っています。あと、以前、MDCの自動書庫がメンテナンス中で図書が借りられなかったことがあったのはショックでした。

―― 学生時代に影響を受けた本はありますか?

現在、MDL2階レファレンスカウンター前の教員お勧め本コーナーで展示しています。他にはスーザン・ストレンジの『国際政治経済学入門』です。この本は当時のゼミの先生に薦められ、私が現在の研究分野に入るきっかけとなった一冊です。本書では、構造的な権力が分析されています。

―― 最近では電子書籍もつくられ、便利で持ち運びしやすくなっていますが、先生にとっての図書の魅力は何ですか?

電子書籍として売られているものは使っていないのですが、図書をPDF化して持ち運ぶことはあります。海外出張の時に便利です。
しかし図書のほうが、読みたいときにパッと手に取ってサッと読むことができ効率的です。その他にコストが安い面や、自分の探したい該当のページを探すステップの速さも図書の魅力です。やっぱり数世紀にわたって使われている紙というメディアはすごいです。しかも図書を持ち運ぶ姿はかっこいいですよね。持ち運んで歩いていたら「あいつ勉強してるんだな」と思われるじゃないですか。

―― 先生にとって図書館とはどのような場所ですか?

大学の図書館は「知の源泉」なんですよ。大学に入学して一番嬉しかったことは、図書館に入れることでした。大学の図書館は高校とは違い、入門書があまりなく、専門的な図書が豊富です。本の層の違いとその層の違いから出てくる知識のイメージが、大学の図書館の魅力です。大学1年生のときは、このような興奮がありました。専門的な英語の図書がたくさんある環境は嬉しかったです。

―― 最後に学生へメッセージをおねがいします。

「よく遊び、よく学び」です。その学びの中で大学の図書館は近くにあって、すぐアクセスできることの貴重な価値を噛み締めてほしいです。市中の図書館の品揃えはやはりそれなりです。社会人になったら専門性の高い本が揃っている大学の図書館からは疎遠になるので大学生活の中でよく利用しないと、もったいないです。
大学時代に本を読んでいた人は、社会人になっても図書館のなかで自分の欲しい情報を得る技量があります。それは学生時代に自然に養われていて、大学時代によく図書館を利用していた人は、今でも面白い友人だったりします。

―― 本日は貴重なお話をありがとうございました。

今回の対談で紹介した本

国際政治経済学入門 : 国家と市場 / スーザン・ストレンジ著 ; 西川潤, 佐藤元彦訳 東洋経済新報社 1994