立命館大学図書館

   
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「第37回:読書で自己評価は高まる」安岡 高志 先生(教育開発推進機構)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ 小川

安岡 高志 先生

安岡 高志 先生の研究概要

―― 学生時代に影響を受けた本を教えてください。

特にこの一冊と言う本はないのですが、私が若い頃は世界文学全集という全30巻にもなる文集が流行っていました。大学生になりその本を読み始めたのですが、全て読み終えるのに2年ほどかかりました。その中で一番内容を記憶している物語はヘルマンヘッセの『車輪の下』です。これは主人公が学問に押しつぶされていく物語ですが、自分が学問をする本当の意義を理解していなかったからです。学問とは自分がしたいことの社会的意義、すなわち、自分の行いが世の中のためになるという正義の御旗を自分の中に見つけるためのものだと感じました。

―― 世界文学全集を読んで何を得ましたか?

たくさんの人生を疑似体験できたことです。人生とは一度きりで自分は他人の人生を経験することはできないですね。しかし、本を読むことで様々な人生を疑似的とはいえ体験できます。この様々な体験が自分の価値観を生み出します。つまり自己評価が高くなるのです。ここで言う自己評価が高まるとは「自分は偉い」などといった感情ではありません。「自分が考えていることや行おうとしていることが、社会的価値があるかどうかを判断でき、そこに価値を見出すことができる」ということを指します。

―― 図書館の利用頻度を教えてください。

ここ(立命館大学)に来てからよく利用します。授業で利用する本は常時20冊以上借りています。こんなに図書館とは利用価値があるのか!と思うくらい本当に図書館は便利な場所です。論文を書くときや講演をするときにもよく利用します。また、他のキャンパスから本を取り寄せてくれるところもとても便利です。

―― 先生にとっての図書館の位置づけとは何ですか?

とにかく便利な場所、といったところでしょうか。図書館では何冊もの本の見比べができますからね。

―― 他大学とは異なる立命館大学の図書館の特色とは何ですか?

そんなに変わらないです。ぴあらのような場所も他大学にはありますしね。しかしこういう場は最近になってできたものです。そもそも図書館とは本を保管する場所だったのですが現在は本を活用する場所になっていますね。従って図書館は活用されなければ意味がないと思います。

―― どうすれば今より図書館が活用されるとお考えですか?

少し意地悪な言い方になりますが、授業のスタイルが予習(文献や本を読んむ)をしてこなければ、授業に参加できないような形になれば、図書館の活用率は大幅に上昇すると思います。しかし、日本の大学の授業はほとんど予習をしてこなくても授業に参加できます。この点が改善されれば今より図書館が活用されると思います。

―― 先生はもともと理系の科目を教えていたのに、なぜ大学評価を行うようになったのですか?

授業評価を1984年から始めました。私は大学生のときから話の上手な先生とそうでない先生の差が大きいので、大学教員は話し方教室を受けるべきだ!と思っていました。そんな折、授業評価に出会い、これは改善の道具として有効であると思ったのがきっかけです。すなわち、自己評価において、授業評価導入に価値を見出したということです。ただ、授業評価の分析は化学の手法ととてもよく似ており、何の違和感もありませんでした。化学は縦軸と横軸をとって結果を図に表すことが多いですね。実は授業評価もこのように図式化することで授業評価の性質を見える化できるのです。

―― 実際に教える立場になってみてどう感じますか?

「教える」と「教わる」には雲泥の差があります。人に教えることで本当の意味でその物事について理解できます。自分が理解していると思っていても、実際人に教えてみると意外とあやふやだったり本当に理解していないことに気がつきます。そういったことを踏まえると、ぴあらのような生徒同士で教えあいのできる場所は大変有意義な場所だと思います。

―― 最後に先生のお薦めの本を教えてください。

『不死細胞ヒーラ』ヘンリエッタ・ラックスの永遠(とわ)なる人生レベッカ・スクルート著 ; 中里京子訳 という本です。患者から切り取られたがん細胞は本人の知らぬ間に培養され研究材料として使われています。医学には非常に貢献しているはずなのに患者本人や子孫の方は何の恩恵も受けていない…などといった内容の本です。おもしろくて、幾つか考えさせられる課題がありますので是非読んでみてください。

今回の対談で紹介した本

『車輪の下』/ ヘルマン・ヘッセ作 ; 実吉捷郎訳 岩波書店  1963
『不死細胞ヒーラ : ヘンリエッタ・ラックスの永遠 (とわ) なる人生』/ レベッカ・スクルート著 ; 中里京子訳 講談社 2011.6