立命館大学図書館

   
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「第40回:図書館は知識の宝庫」川村 健一郎 先生(映像学部)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ 関根・宮崎

川村 健一郎 先生
川村 健一郎 先生の研究概要

―― 先生の研究分野について教えてください。

映像マネジメントと言えばいいでしょうか。わかりにくい表現かもしれません。アートマネジメントという研究領域があります。芸術そのものは、一見、非営利的な活動に思えますが、たとえば、公立美術館の運営には多額の税金が投入されているなど、まったくお金がかかっていないわけではありません。こうした公共的活動をどのように効果的、かつ効率的に実践するのか。こうしたことを考えるのが、研究としてのアートマネジメントの役割です。そのアートマネジメントのアートを、「映像」に限定したのが映像マネジメントいう分野とお考えください。単に、映画会社を経営するノウハウではなく、映像が社会の中でどのような役割を担っているか、映像がどんな制度のもとで多くの人に受容されているかを研究しています。

―― 学生におすすめの本はありますか。

映画監督とか映画に関わっている人の本を読むことが多いので、そうした書籍をあげたいと思います。1冊目は、映画美術監督木村威夫さんの『わが本籍は映画館』(春秋社、1986年)。木村さんの本籍は、本当に映画館だったんですよ。木村さんのおじいさんがかつて寄席経営をしていて、その場所が映画館になったんです。木村さんは、戦争が激しかったころに映画会社(日活)に入って、その後、大活躍をします。彼が美術を担当した映画にまつわるエピソードが満載のエッセイ集です。2冊目は、日本の実験映画の第一人者とも言うべき(そうした位置づけにとどまらない活動の幅をお持ちですが)松本俊夫さんの処女評論集『映像の発見 アヴァンギャルドとドキュメンタリー』(三一書房、1963年=清流出版、2005年)。この本に刺激を受けて、思わず映画を一緒に作りたいと松本さんの元にかけこんだ人もいたほど、当時から大変な影響力を持っていた本です。

―― 学生時代に読んで印象に残っている本を教えて下さい

ポール・ジンマーマンという人が書いた『マルクス兄弟のおかしな世界』(晶文社、1973年)ですね。確か古本で買いました(立命館の図書館には所蔵されていないようです)。この本の翻訳者の一人が中原弓彦さんで、有名な小説家小林信彦のペンネームですね。この人は『日本の喜劇王』、『世界の喜劇王』という本も書いています。マルクス兄弟は、トーキーになってすぐの1929年にデビューして、戦後までハリウッドで大活躍した、本当の兄弟コメディアンです。『マルクス兄弟のおかしな世界』は、彼らの映画作品について、1本ずつ丁寧に解説を付した本で、高校時代に草月ホールでマルクス兄弟の映画を見て以来、彼らの作品が大好きになってしまったので、そのときまだ見ぬ作品の内容を知りたくて、この本を手に取ったわけです。

―― 先生は学生時代、図書館をどのように利用されていましたか

研究のために使っていたというのもありますが、やはり憩いの場でしたね。いるだけで楽しかった。古い建物だったので、その空間を含めて居心地が良かったんですよ。ただで本を借りられるのが何よりの魅力でした。学生時代は本をなかなか買えなかったので、手当たりしだいに借りていました。借りていないときがなかったくらいです。もちろん、全部読み切れませんが、ちょっと関心が向く本であれば、とにかく借りちゃう。そうやって、小説や哲学書を抱えては、気の向くままに、自宅で読み耽っていました。

―― 最後に学生へのメッセージをお願いします。

今は恵まれているので検索によってすぐほしい本やPDFで論文を読むことができる時代ですが、私が学生のころはパソコンのデータベースがなかったので、ピンポイントで読みたい本を見つけることが難しかったですね。研究テーマにあわせた論文・書籍は脚注にある参考文献から次々と手繰り寄せて関連するものはすべて読むようにしていました。極端に言うと、本文を読むよりもそれを参考にしている本を調べて、こういう標題をかくにはこの本を読まなきゃという情報を得ていました。ですので、学生の皆さんにはまず、図書館という場所に行って物理的に本を探して欲しいのと、本に書かれてある脚注などもぜひ注目してみてもらいたいと思っています。

―― 映像学部生に向けて一言お願いします。

映像の作り手にとって、図書館は、間違いなく、アイディアを獲得できる場所です。原作に使えそうな、著作権が切れている古典もたくさんありますし、その意味では、ネタの宝庫です。そういう意識で、図書館を利用してもらうのもありだと思います。

―― 本日はありがとうございました。

今回の対談で紹介した本

『映像の発見 : アヴァンギャルドとドキュメンタリー』
『わが本籍は映画館』
『マルクス兄弟のおかしな世界』