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「第61回:大学生として「上手く」勉強する」中妻 拓也 先生(総合心理学部)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ 西川

2018.01.30

―中妻先生が何について研究をされているのか教えてください。

今、主にやっているのは、社会心理学的な文脈での『共感』とか『共感性』といったものの研究です。あと、生理指標を取ったり、『共感』についての歴史も。『共感』について包括的にやってる感じですね。僕が使っているのは、どちらかというと”Empathy(感情移入)”の方の共感です。『共感』という言葉と、”Sympathy(同情、思いやり)”とが結びつく以前からずっとある概念で。実際のところ、今も日本語の『共感』っていうものは、はっきりどちらとも言い切れないんです。

―興味を持ったきっかけについてお話いただけますか?

大学院生になろうかという時ですね。当時の指導教官の人に、「お前、そろそろテーマを決めろ」と言われておりまして、何にしよっかなーって考えている時に、友達と映画を観に行きまして。その友達に「いやー、今の主人公のあの場面には共感できたわ。お前もやろ?」って言われた瞬間に、「いや全然わからへんけどな」って思って(笑) 「『共感』って何やろ?」ってところにたどり着きましてね。『共感』研究してみようと思い立ちました。

―学生時代、どんな本を読んでいらっしゃいましたか。

大体は読みましたよ。もう小説もマンガも、学術書も仕事柄読みますし。あかんなと思うのは恋愛小説だけですね! しんどいんですよ。「最後ハッピーエンドになるやろ! まどろっこしい!」って思ってしまうんで。大学生のうちに読んどいたら本が面白なって思えるかもしれない人は、森見登美彦さんです。『太陽の塔』とかから始めると、文章読むのがちょっと苦手な子でも読めるんじゃないかなって気はしますね。図書館のインタビューなのでいいのか分かりませんが、マンガも色々読みます。少女マンガも。『山田太郎ものがたり』とか全巻読みました。少女マンガになるとやっぱり恋愛モノが多いので、あかんなぁと思うのもありますが…。親もマンガ読みで本読みなんですよ。小さい頃のルーツとしては、親父の『山口六平太』とか、おかんが読んでた『鬼平犯科帳』とか。『鬼平犯科帳』は時代小説ですけど。鬼の平蔵の人情捌きがね、なかなか見所でございますよ。

―映画がお好きだったとのお話でしたが、大学時代、他に熱中してたことはありますか。

勉強以外は大体熱中してましたね(笑) あんまり真面目な学生じゃなかったんで。勿論、勉強もそれなりにはしたんですけど、それ以外のことの方が面白いなぁって思う人だったので。バイトとか、サークルとか、友達と遊びに行くこととか。バイトは通算20個ぐらいやってました(笑) 結婚式の友人のふりとか、変なのもやったことあります。ブライダルのバイトではなくて、人材派遣会社とかにたまに来るやつ。友達のふりをしてほしいっていう需要があって、依頼を受けて、しかも、会って2,3時間くらいしか経ってないのに、友人代表でスピーチをするっていう(笑) 楽しかったですね。サークルは、元々中学のときからずっとやってたんで、バドミントンのサークル。あと友達と一緒に旅行サークルを作りました。内輪だけでやってたんで、部員はそれ以降入ってはきませんでしたけど(笑)

中妻 拓也 先生(総合心理学部)

―学生に向けてのメッセージなんかがあると嬉しいなと思うんですけど。

ううん…ちゃんとするとか、真面目にするとかっていうのも大事なんでしょうけど。研究してるとですね、根詰めすぎると、何もかもしたくなくなるんですよ(笑) 『ああもうヤバイ!』ってなったら休むのも勉強の一環。だから、上手く勉強してほしい。僕の大学の学部は臨床系で、テクニカルな部分はすごく勉強するんですよ。実際に自分が臨床心理士になったらどうするかとか。でも、その知識はどうやって積み上げられてきたかとかは分からなくて。先生の経験談とかで語られる時って、その先生の見方でその経験をすればそうなんだろうけど、「自分はそれに当てはまるのかな?」って気になり始めて。その時、感覚的に、そう思う自分ってここに合ってないんだろうなって思ったんです。合えば疑問に思っても突き進めるだろうけど、僕はそこでもう、「別のことしてえな」って思ってしまって。一旦違和感を覚えるとだめで(笑)  臨床と全然関係ないことしたんですよ。卒論は脳波の研究にして、修士では犯罪心理学の研究をして。『共感』も、お話した通り、本当にぽっと出たテーマですしね。変に意地になって、「臨床分野のことしない!」ってなったから。そんな時に上手く立ち回れてたら、もうちょっと色んなことが出来てたんだろうなぁって。先生も施設も資材なんだから、上手いこと使ってください。一つの分野に絞ったらその分野の人にしか聞いちゃだめなんじゃないかとか、誰かのゼミに付いたら他の先生の意見を聞いちゃだめなんじゃないかっていうのは違うと思います。心理は、どっちかっていうとコミュニケーションを取るのが好きな先生が多いんです。研究以外のことでも、むしろ日常の話とかもできればいいのにと思っている先生も結構いるし。無理なら無理で先生方、『その話はちょっと』ってはっきり言うから(笑) そこで学生が制約設けるともったいないと思います。

あと余談ですけど、世の中一般で言われているキャッキャしてるイベントは、年を重ねれば重ねるほど、なかなか踏ん切りがつかなくなってくるから、参加しておいた方がいいですよ!(笑)

―普段から図書館を利用されていますか?

多いですね。今はだいぶ落ちましたけど、昔は大体毎日一冊借りてましたね。自分の研究分野が本を多用するジャンルなので。OICの図書館は、これからもっと本が入ってくるんだろうなっていうのはあるんだろうけど。院生時代、今は建て直されましたけど、衣笠の図書館の地下で電灯点けて読んでたのを思うと、明るいなぁって(笑) 学生が座ってるすぐ後ろにおじいちゃんが座ってて、新聞読んでたりするのが、面白いなぁと思って。地域に根ざしたスタイルの図書館という感じがしていいんじゃないでしょうかね。そういうおじいちゃんをたまに観察してたりします(笑)

―今、読んでいらっしゃる本はありますか?

色々ありますが、『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ』っていうコラムを読みました。簡単に言うと、その人(著者)が日々どうやって研究しているかとか、鳥類学者の人がどうやって研究しているかっていうような話です。ちょっとアカデミック寄りなんだけど、書き口は専門書と違っていて。フィールドワークの段取りとかそういうのではなく、『なんでこんな辛いところに行かなあかんねん』とか、『金かかんねんマジで』とか(笑) 楽しいんだけどしんどい、しんどいんだけど面白いっていう、研究者ならではの苦労が書いてある本です。結構面白いと思いますよ。

心理の本で単純に面白いなって思うのは、僕の研究領域にも関係あるんですけど、カール・ロジャーズの『静かなる革命』っていう自伝です。まあその中でロジャーズが言ってることがなかなか面白い。『当時の心理学者にこんなつながりがあったんや!』とかっていうので面白い部分もあります。ロジャーズがいた頃、同じ大学に精神分析の精神医学病棟、ではないんだけど、精神医学部みたいなところがあって、そこにもう一人の『共感』研究者と言われている、ハインツ・コフートっていう人が同時期にいて。さらに『共感性』の尺度を初めて作った女性も、実はロジャーズの下で働いてて。あと、ロジャーズがシカゴ大学に来る前に、ハリー・スタック・サリヴァンがいたって話とか。その当時、そのシカゴ近辺に沢山の心理学者が共生してたっていうのがあるんだけど、実は、ほぼほぼ交流がなかったっていうのが分かってるんです。裏話までたくさん書いてて面白いですよ。この前、返却しました。

あとはもう単純に、学部生が最初に読んだらいいんじゃないかなって思うのは、手前味噌でうちのボス (院生時代の指導教官) ですけど、『心理学の名著30』。うちのボスだっていうのを抜きにしても、入門書として面白いです。

―本日はありがとうございました!

今回の対談で紹介した本

『太陽の塔』、森見登見彦、新潮社、2003年
『鬼平犯科帳』、 池波正太郎、文春文庫、2017年
『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』、川上和人、新潮社、2017年
『カール・ロジャーズ静かなる革命』、カール・ロジャーズ、誠信書房、2006年
『心理学の名著30』、サトウタツヤ、筑摩書房、2015年