立命館大学図書館

   
  1. TOP>
  2. 学生支援>
  3. 教員インタビュー>
  4. 「第75回:本をたくさん読もう」山下 洋一 先生(情報理工学部)

「第75回:本をたくさん読もう」山下 洋一 先生(情報理工学部)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ ハン、松本

2020.10.27

―先生の研究分野について教えてください。

音声認識とか音声合成などの音声情報処理ですね。

音声認識とは喋った言葉をコンピューターで認識させることです。音声認識自体はもう社会で実用化が進んでいて、文字に変換するという技術はもうかなり完成されているので、いまやっているのは喋っている音声から感情の推定、喋っている人が怒っているのか悲しんでいるのかそういったことをやろうとしています。それから音声合成の方も同じでただ読み上げるのでなくていろんな声であるとか、いろんな感情であるとかそういった音声を合成できるようにというのが一つのテーマです。

音声ではないですが身の回りの音の認識にも取り組んでいます。例えば今どこで何をしてるかとか、自動的に判定できればライフログの生成つまり活動の記録の生成ができると思っているのでそういったことをやろうとしています。後、音の合成もしています。音声ではなく、いろいろな音の合成。効果音をつけるというときに、データベースにある音を探すだけでなくこういう感じの音が欲しいというときに自動的にそういう音を合成することを目指しています。例えばカーンという音が欲しいとなればカーンという文字表記を入力してカーンという音ができる、そういうことをしています。

―先生が電子工学科を専攻したきっかけを教えてください。

当時私が大学に進もうとしたときは、まだ情報と名がついた学科がそれほど多くなかったんですよ。今はね、情報・コンピューターに関わることを学ぼうと思うと情報何とかといった学部や学科に行くのが普通ですけど、当時は結構電子工学科や電気工学科といった学科の中にまだ情報の分野が結構入ってたんですよ。私は阪大の出身だけど阪大の場合だと工学部のなかには情報という名のついた学科はなく、電子工学科のなかに情報に関するような研究をやっているところが多くてコンピューターに魅力や可能性を感じていたということです。

―山下先生の今までの読書体験について教えてください。

私はそれほど本を読んでないですが、学生時代に戻って何をしたいと聞かれると読書というのがまずあがるかな。もっと本を読んでおけばよかったなと思っています。その中でも結構読んでたのが筒井康隆の小説をよく読みました。『俗物図鑑』というのがあってそこから始まって結構読み漁りましたね。これまでに読んでる本はそういう小説であるとか雑学に関するような内容が多くて自己啓発的なものはあんまり読んでないです。

―大学時代に戻れるならどんな本をよんでみたいですか

読書というものは自分が出来ないようなことを疑似体験させてくれるということも多いので、例えば小説とか人の気持ちを実際に経験してなくてもわかるのかなと思いますね。学生時代は筒井康隆の本をよく読んでいてしばらくしたら司馬遼太郎の歴史小説を散々読みましたね。最近読んでるのはね、原宏一さんという方の本をよく読みます。

―原宏一さんの小説はどんな内容ですか

現代に転がっているいろんなネタをモチーフにして、実際はそんなことがないようなことがありそうな感じでいろんなことを書いてます。『アイドル新党』とかね、アイドルが政治家になるみたいなそんなネタなんですけど、ちょっと古いのでいえば『床下仙人』とかね、ある家に床下にずーっと別の人が住んでるとかそういう話とかね、実際にはないんだろうけどひょっとしたらあるかもしれないといった時事ネタをベースにしたのが多くって、そういう作家さんですね。

山下 洋一 先生(情報理工学部)

―大学生活では図書館をどのように利用していましたか。

大学時代は今ほどインターネットが普及してなかったので何か調べようと思ったら図書館で調べるしかなかったですね。それか自分で買うか。買うといったって専門書は高いので専門的な内容を調べようと思ったら図書館がどうしても必要だったと思います。いまは図書館に頼らずともネットで検索したらいろんな情報が出てくる時代になってしまったのでどうしても学生諸君はそっちの方がとっつきやすいかなと思いますね。後ね、小説とか図書館で借りていた記憶が私はあんまりないです。

―直接買ってらっしゃったのですか

はい、そもそも立命の図書館に小説が結構置いてあることをあんまり知らなかったんですよね。私は長男が立命の理工学部の出身なんですよね。うちの息子はねよく小説を借りてました。それで結構図書館に小説があるんだと知りました。そういった意味では図書館も小説などのPRをすると学生が図書館に足が向かうかなと思います。

―将来の図書館はどのようになると思いますか

難しいなー、それは。専門書は本よりも電子的なものに移行しているので例えば学会の発表論文はかつて冊子で出版されていました。しかし今では電子データで配布されるのが当たり前になっていると思います。後、小説においてもsubscriptionしかりオンラインで電子データをみるのが盛んになっているので図書館もそういったことを提供するようなサービスを考える必要があるのかなと思います。

―自分の部屋で電子版の本を読むことができて自宅と図書館の違いが消えていくと思っていますが先生はどう感じますか。

そうだね。電子データ中心だとどこでも読めるので、ただ紙の方がいいというのもあるのはあるので紙の方がパラパラとちょっとめくって、中身の概要を知るであるとかはやりやすいですよね。目的がはっきりしていれば電子データで十分かなと思うんですけど、今まで知らなかったものに出合うであるだとかは紙の方がいいのかなと思いますね。本屋さんでね、立ち読みじゃないけどパラパラと目にしておいてこんなもんがあるのかということを気が付いたりするのは実際の本じゃないかな。

―影響を受けた本やお勧めの本を教えてください。

影響を受けた本。あんまりないかな。お勧めの本は学部のホームページに何冊か出してます。君たち知ってるかな、二宮忠八って。飛行機を最初に飛ばした人はライト兄弟なんですけど日本人でも二宮忠八ってひとがいてね、この人がライト兄弟よりも先に飛行機の原理を考案したというか思いついたということになっていて、大英博物館ではちゃんとそういう風に紹介されていてるらしいんですよ。その人の物語です。その人の出身が私の出身と同じで、私の故郷ではヒーローなんですよ。話も技術者としては面白いかなと思います。例えば飛行機の開発をしてたんですけどライト兄弟に先を越されたと聞いたとたんに作ろうとしていた自分の飛行機を叩き壊したと。2番煎じになるのが嫌でね。っていうあたりは技術者魂も感じると思いつつそういう話も出てきます。後ね、最近読んだ本では、立命館アジア太平洋大学の学長をされている出口治明先生の『還暦からの底力』かな。今本屋さんで取り上げられて結構売られていると思うんですけどこの本も非常に興味深く読みました。還暦からのと書いてあるから高齢者向けの本と思いきやそうでもなくて、若者諸君が読んでも非常に参考になることがたくさん書かれていると思います。

―内容を教えていただいてもいいですか。

年を取ってから老け込むんじゃないよという話もあるんだけど、例えばダイバーシティの重要性、世の中のお客さんの半分は女性だからそれを考えると女性もいたほうがいいでしょという当たり前の話が出てきたり、事実に基づいて判断行動すべき、噂であるとか何となくの印象であるとか本当にそうなのかっていうことを数字、データをしっかり見て判断・行動すべきでしょうというようなことも指摘されていて非常にためになると思います。

―大学生活の中で学生が読んでおくべき本はありますか。

理系の学生でいうと、科学技術表現の本を1冊は読んでおいて欲しいですね。つまり論文の書き方です。論文を書いて人にやっていることを正しく伝えるためにはどんなことを気にしなければならないかということに関する本はいっぱい世の中に出ていて私も本棚の後にいっぱいありますけども1冊くらいは学生諸君も読んでおいて欲しいと思います。

どの本というよりも本を読んでほしいね。自分が読んでこなかったという反省も込めて。小説でも新書でもいいしとにかく読むということが必要かなと思います。

―どの種類の本を読んだ方が良いでしょうか

自分の趣味に関することでもいいと思います。私はサッカーが好きなのでサッカー選手が書いた本結構読んでますね。遠藤保仁、中村俊輔、長友佑都そのあたりです。サッカーの選手は野球の選手と比べると空いている時間がいっぱいあるんですよ。プロ野球は毎日試合があるでしょ。サッカーって試合は週に一回で、しかも練習って1日2時間くらいらしいんですよ。だから野球選手に比べるとサッカー選手は時間があるので、現役の選手がいっぱい本を出してます。野球で現役時代に本を出す人はほとんどいないと思うんだけどサッカー選手はいっぱい出してます。

―学生へメッセージがあれば何かお願いします。

なんでもいいから本を読んだ方がいいというくらいですね。 自分の趣味にかかわるであるとか、小説であるとか、小説もいろんなジャンルがあるから人気の小説家の本を読んでみるとか。本をたくさん読みましょう。

―山下先生ありがとうございました!

今回の対談で紹介した本

『還暦からの底力―歴史・人・旅に学ぶ生き方』、出口治明著、講談社現代新書、2020年5月
『レポート・論文の書き方入門』、河野哲也著、慶應義塾大学出版会、1997年8月