A群世界の史的構成

 現代社会を理解する際の基礎的方法のひとつは、世界を歴史的に把握することです。この分野は、社会科学的な発想を基調としつつ人文科学の見方も包含して、社会を歴史的な観点から考察します。このような説明方法によって、現代社会を考える際に必要な見方を涵養することに努めます。
 この分野では、分野全体の基礎概念等を説明する科目によって、歴史を見る際の見方と、世界を地域の観点から眺める際の見方を学習します。そして、それを基に、世界を大きく5地域に区分して、それぞれの主要課題を考察します。この時の地域区分は、日本、日本を除くアジア、ヨーロッパ、アメリカ、そしてイスラーム圏です。
 さらに、こうした理解に加えて本学に入学した学生諸君が身近な視点から歴史的存在としての自己の認識を深めることができるような科目を配置します。

開設科目名、配当回生および概要・到達目標

※一部の学部は以下の科目群・分野の構成を適用していません

歴史観の形成

1回生以上

歴史を見る視点は多様であって、だからこそ面白いのです。この科目は一つの歴史観をたたき込むものではなく、むしろ受講生一人一人が歴史について考え、最終的にそれぞれの中で独自の歴史観を形成するためのきっかけを与えるものです。講義では様々な歴史上の事件、人物などを取り上げ、最新の学問の世界で、それらがどのような視点でとらえられ、どのような文脈で語られているのかを紹介します。大事なのは「考えること」です。全講義を聞き終えた瞬間、受講生各自の心の中に、漠然とでも独自の歴史観が生まれていることを願います。

1. 現在、歴史学の世界では、歴史がどのように認識され、どのような視点で語られているのかを理解する。
2. 学生一人一人が、「歴史」について独自の視点、歴史認識を構築できるようになる。

エリアスタディ入門

1回生以上

エリアスタディ(地域研究)は、ある地域に対して個別の学問分野の枠を超えて学際的にアプローチし、自然環境と歴史風土、社会文化、政治経済などのさまざまな側面からの考察を通じて、総合的な理解を志向する知的領域です。ここでは、地理学の成果を踏まえつつ、エリアスタディの観点から、世界の多様な地域の現状と課題を理解します。

1.エリアスタディの特徴を説明できる。
2.特定地域についての考察を深める際に、学際的研究方法の観点から考える態度を持つ。
3.特定地域の特徴や課題を考察する際に、他地域と比較研究しながら考えることができる。

新しい日本史像

1回生以上

一国史としての日本史は現在大きな転換点を迎えています。自国のための閉じた説明系ではなく、広く世界・アジアの人びとと対話できる日本史像が求められています。授業では、そのような日本史像の一端を紹介し、広く人文科学・社会科学・自然科学を歴史的観点から捉える力を養っていきます。また、日常生活には、これまでの歴史が集積しています。それらを解きほぐし、自らの歴史的位相を確認して、現代社会の問題点について考えていきます。

1. 世界・アジアの歴史を踏まえて、日本列島上の歴史的諸事象を捉えることができる。
2. 自分たちの生活に蓄積されてきた文化・思考を歴史的に理解できる。
3. 最新の歴史理論を理解し、その問題点を考えることができる。

中国の国家と社会

1回生以上

1912年までの中国は、Imperial China(中華帝国)と呼ばれました。「帝国」には、皇帝・官僚による専制支配及び多民族国家という属性がありますが、これは全く過去の遺物の話ではなく、現在に通じる構造であり、俗に「帝国」と称される国家も中国一国でありません。その中でも中国は、過去との連続性において際だった「国」「地域」です。学生諸君はこうしたユニークな隣国を、「帝国」の発生に遡って理解することを目的とします。

1. 多民族国家中国の特性を理解する。
2. 長期に渉って継続した、中央集権的官僚体制の概念を理解する。
3. 世界の四大文明のうち、唯一現在まで滅亡せずに継続した「世界史上の奇跡」を体感する。
4. 上記諸要素の理解を通じて、我が国の隣国が、我が国とは全く異なる文明のパターンを歩んできた、非常にユニークな地域であることを認識し、日中両国の関係についてより深い思考を得ることを目指す。

東アジアと朝鮮半島

1回生以上

日本海(朝鮮語では東海)を囲む東アジア地域(朝鮮半島、台湾をふくむ中国、日本、ロシア極東)は、旧時代の遺物ともいえる冷戦的な思考様式や政策がいまなお息づく世界です。朝鮮半島には、なぜ、韓国(大韓民国)と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)という二つの国家が存在するのでしょうか。北朝鮮と日本は、なぜ、いまだに国交すらないのか。韓国や中国は、なぜ、ことあるごとに日本の歴史認識を問うのでしょうか。東アジアの地域協力や地域統合はなぜすすまないのでしょうか。東アジア世界をとりまくこうした問題群は、単にこの地域の“現在”についての平面的な解説ではすまされない論点を含んでいます。それらの点をふまえ、この講義では、朝鮮半島を中心に、今日の東アジア世界がかかえる問題をその起原(日本の植民地支配やアジア侵略、さらには第二次大戦後の朝鮮半島に対する米ソの分割占領)にまでさかのぼって解説し、受講生の皆さんが今後の東アジア世界の平和と繁栄を考え、議論するうえでの素材としていきます。

1.戦前の朝鮮半島に対する日本の植民地支配について自ら考えるための基礎知識を得る。
2.朝鮮半島の分断の経緯について説明できる。
3.韓国社会の民主化の過程について説明できる。
4. 日韓条約(1965年)の問題点とその後の日本と朝鮮半島の両国の関係と課題について指摘できる。

ヨーロッパの歴史

1回生以上

今日、EU統合を成し遂げたヨーロッパはグローバリゼーションの中で新たな歴史的局面を迎えています。古代ローマ帝国の解体後、ユーラシア大陸の西の片隅に徐々に形成されたヨーロッパは際立った特徴を持った圏域を形成しました。きわめて多様な過去と伝統を持つ諸民族集団が交渉と融合を繰り返しながらいかにして共通の文明を形成したのでしょうか。また、世界史上稀に見る拡大のダイナミズムの秘密はどこにあるのか。こうした問いをめぐって主体的に歴史を考えます。

1.ヨーロッパの歴史の時代区分を理解した上で、各時代ごとの政治・経済・文化・社会などの基本的特徴を説明できる。
2.ヨーロッパのアイデンティティを理解するうえで重要な、隣接する異文明との交渉や相互影響を指摘できる。
3.ヨーロッパ「近代」の世界史的意義を説明できる。

アメリカの歴史

1回生以上

アメリカ合衆国は、幕末以降、現代に至るまで日本にとって最も重要な「隣国」であり続けました。日米は高度に発達した資本主義社会として多くの共通点を持ちますが、異質な点も多いのです。アメリカは、移民や奴隷を導入して発展したので人工的な理念の共和国であり、一貫して拡張主義政策を取ってきました。この科目は、受講生がアメリカ合衆国の現実を理解し、自分の頭でアメリカや日本を考えていくことができるようになること目的とします。

1. アメリカ社会の民族構成と主要なエスニック集団について説明できる。
2. アメリカ社会の統合の原理と制度について説明できる。
3. アメリカ社会の発展の過程について説明できる。

イスラーム世界の多様性

1回生以上

「イスラーム」が「悪者」の代名詞のように語られている今日の誤った認識と偏った報道の真相を暴き、本来の「イスラーム」とはどのような教えなのか、その歴史と思想に関する理解を深めます。同時に、今日、世界人口の五分の一を占め、なお信徒が増加し続けるイスラーム世界の広がりと多様性とに目を向け、ひとびとが「イスラーム」に何を求めるのかを考え、欧米中心の「近代社会」の問題点を明らかにします。

1. イスラームの起源と発展の概略について説明できる。
2. イスラームの基本的世界観および教義について説明できる。
3. イスラームを他の宗教と相対化でき、同時にイスラーム世界が多様であることを説明できる。