A群平和と民主主義

 この分野の名称は、本学の教学理念に由来します。日本の多くの大学と同様、本学もアジア太平洋戦争に組したという痛恨の歴史をもっています。その反省にもとづいて戦後打ち立てられた教学理念が、「平和と民主主義」にほかなりません。本学は、この教学理念を具体化するために、全学をあげて「平和」・「民主主義」・「人権」に重点を置いた教学と運営を展開してきました。
 この分野の科目群は、こうした本学で培われてきた教学蓄積を活かしつつ、本学に入学してきた学生が、各人のめざす専門分野が何であれ、次世代を担う地球市民としての視野と責任をもって生きていくために、「平和と民主主義」こそ、最も基本となる人間的課題であると考え、開設されたものです。
 この分野の特長は、第二次世界大戦後、固有の学問として誕生し、発展してきた「平和学」を軸に、自校史(「日本の近現代と立命館」)を学びつつ、戦争と平和、人権をめぐる諸課題についてアプローチしようとするところにあります。また座学にとどまらず、平和な世界づくりに貢献する「地球市民」を育てることを企図して開発された広島・長崎やアジアなど海外でのフィールドワーク・プログラム(「国際平和交流セミナー」)、および歴史に学び、未来の平和創造をめざす立命館大学国際平和ミュージアムの取り組みと連携した授業などが展開されます。

開設科目名、配当回生および概要・到達目標

※一部の学部は以下の科目群・分野の構成を適用していません

平和学入門

1回生以上

わが大学は、先のアジア太平洋戦争に際して、多数の学生を戦地に送り、数千人の先輩が非業の死をとげたという痛苦の歴史をもっています。この「わだつみ(海神)の悲劇」を繰り返させないためにどうしたらよいのかという模索が、戦後のわが大学の歩みのなかに刻印されています。とくに「核と宇宙の時代」にあって、核兵器などの大量殺戮兵器を使う戦争や原子力発電所を標的にしたテロや紛争が起これば、地球社会の持続的発展は致命的な打撃を受けます。このような脅威をとりのぞき、憎悪と戦争の悪循環に歯止めをかけ、戦争の根を絶やしていくには、どうすればよいのでしょうか。この科目では、人類がこれまで蓄積してきた英知と実践の総体をふまえて、これらの問題を考察していきます。

1. 「核と宇宙の時代」において、戦争の性格が変わり、人類共滅をもたらしかねない段階に足を踏み入れていることを理解し、友人にも説明できる。
2. 戦争を根絶するために、人類の経験と英知が総動員されてきただけでなく、じっさいに多くの成果が蓄積されてきたことを理解し、友人にも説明できる。
3. 世界で唯一の大学立の平和博物館を生み出した立命館学園の歴史を振り返り、立命館大学で専門科目を学んでいく意味について理解するとともに、持続可能で平和な世界を創造するための実践に足をふみだすことができる。

日本の近現代と立命館

1・2回生

本学で学ぶ者にとって共通した「身近な場」である大学の歴史を通して、日本近現代史を学び、今日我々が直面している近代化のひずみ、教育の危機などの問題を身近な視点から再考します。

1.立命館学園の歴史を学ぶことを通じて、日本近代における高等教育の歴史についての知見を深める。
2.それを通じて今日の立命館が置かれている状況、さらには日本の高等教育が直面している問題点を歴史的・総合的に考察できるような目を養う。

現代の人権

1回生以上

21世紀を考えるキーワードとして、人権、環境、平和、ジェンダー、宗教、民族などがあり、そのすべてが、「人間が人間らしく生きること」を目指しており、人権はその中心にあります。今日、人権ほど広く用いられている言葉は少ないが、明確に説明できる人は少ないのです。本講義では、人権の基本的な概念と歴史、さらにいくつかのトピックを取り上げて、人権の理論と実際を分かりやすく理解することを目指します。

1. 人権とはなにかを歴史的背景を踏まえて説明できる。
2. 世界人権宣言をはじめとする主要な国際人権文書を理解し、説明できる。
3. 今日における人権問題の主要な課題が何かを理解し、人権問題について考えることができる。

戦争の歴史と現在

1回生以上

20世紀の戦争は、国家資源を総動員した総力戦として戦われ、かつてない大量殺戮の世紀となりました。そして新世紀も、テロと報復戦争の応酬に示されるように、暴力と戦争の影をひきずって出発しました。 戦争という病的な国際関係は、なにゆえ生まれるのでしょうか。ここから、どのような教訓をひきだしたらよいのかを学際的な手法を用いて考察します。

1.「平和」について、その定義を歴史的事実関係を通じて、説得力を持った内容で説明できる。
2.わたくしたちの日常生活の中で、「平和な状態」と、「平和ではない状態」を見分ける判断力を持つことができる。
3.多元主義的な価値観を理解し、根本主義的あるいは原理主義的、さらに独善的価値観から解放される。少なくとも、他者の異なった価値観を尊重するようになる。

国際平和交流セミナー

1回生以上

国際平和交流をテーマに国内外でのフィールドワーク、講義、討論などを行います。現地での体験学習を通して相互交流と理解を深め、国際的観点から平和を捉える力を養うとともに、世界平和の構築、国際相互理解と協力の道を探り、平和な世界づくりに貢献する「地球市民」を育てます。

1.国内外でのフィールドワーク・講義・討論などを通して、戦争と平和、人権をめぐる諸課題について学ぶことができる。
2.世界平和の構築、国際相互理解と協力の道を探るうえで、その背景となる各国々の社会、政治、経済、歴史、文化などへの関心を深める。
3.国際交流を通して多様な価値観を学び、自らが平和創造の担い手として何ができるのかを探求する。