センター長ごあいさつ

教養教育のかたちを変えた全学共通・教養教育の「立命館モデル」

立命館大学 教養教育センター長

立命館大学 文学部教授

瀧本 和成(たきもと かずなり)

立命館大学は、これまでの教養教育改革の基本的理念やこれまでの全学共通・教養教育の実践とその成果をふまえつつ、近年の学士課程教育における教養教育への社会的要請を念頭に置いた新たな取組み(学士課程教育における教養教育の「立命館モデル」)を展開しています。

全学共通・教養教育の「立命館スタンダード」の展開

立命館大学は、京都・衣笠キャンパスの5学部、びわこ・くさつキャンパスの6学部、さらに2015年度に開設した大阪いばらきキャンパスの2学部の合計13学部からなる総合大学です。その総合大学の特長を活かし、全学で教養教育を支えるとともに、学部の差異にかかわりなく立命館大学で学ぶ学生に対して、「立命館スタンダード」としての全学共通の教養科目を提供しています。

立命館大学における教養教育の基本的理念と到達目標

立命館大学は、これまで「学部専門教育とは質的に異なる知識」を習得することによって、「各学部専門教育の知識体系と価値について、専門以外の幅広い分野から考察するための価値観の習得」と、「幅広い教養と確固たる世界観を形成することによって、人生の指針ともなるような知性と知恵の獲得」を目指してきました。これは、立命館憲章が定める「確かな学力の上に、豊かな個性を花開かせ、正義と倫理をもった地球市民として活躍できる人間の育成」をめざす理念にもとづくものです。

こうした基本的理念を具体化するために、以下の11項目から成る到達目標を掲げます。

  1. (a) 基本的人権と平和の重要性を認識し、行動できる
  2. (b) 倫理観・正義感・社会性を備えている
  3. (c) 国際性を有し、異文化を理解できる
  4. (d) 異なる価値観を理解できる
  5. (e) 社会の変化に自主的能動的に対応できる力を有する
  6. (f) 芸術に関する知識を有する
  7. (g) 論理的・批判的思考力を有する
  8. (h) 数理的な分析能力を有する
  9. (i) 社会科学・人文科学・自然科学の幅広い知識を有する
  10. (j) 心身の健康状態を維持できる
  11. (k) 専門分野を超えた総合的な視点と考え方を有する

5つの科目群によって構成される多角的な教養科目の提供

学びの主体である学生にとって教養教育の目標がよりよく理解でき、当該教養科目を履修することの意義が実感できるように、教養基盤科目としてのA群を中心に、次の5つの科目群から成る科目を提供しています。

A群:教養基盤科目
人類が創造し培ってきた知的体系や先端的な知識の獲得、現代的諸課題を多様な視点から幅広い教養と確かな人間観・世界観の構築とともに、諸課題に対する問題意識や問題解決のための発想力の涵養をめざした7つの分野から成る基盤科目群。
B群:国際教養科目
英語など外国語を授業言語とする教養科目群、日本語による日本事情科目群、異文化理解セミナー(海外留学プログラム)、海外留学科目(学部単位授与科目)によって構成される。英語による教養科目群は、国際関係学部おいて開設されたグローバルスタディーズコースの在籍者のみならず、留学生とともに人文・社会・自然科学の基礎的学びを通して幅広い教養と確かな人間観・世界観の構築をめざす日本人学生にも開講される。日本事情科目は、日本語を授業言語として日本の人文・社会的学びを学修する外国人留学生向けに開講される。
C群:社会で学ぶ自己形成科目
他者および社会(企業・社会団体・地域社会)との連携・協働・相互理解を通して、市民としての倫理観・正義感・社会的責任感(シチズンシップ)の涵養、いいかえれば「学力」のみならず「人間力」の獲得をめざす参加・実践型のキャリア教育科目、インターンシップ科目、サービスラーニング科目によって構成される。
D群:スポーツ・健康科目
スポーツに親しみ健康に関する意識を高めることは、若者の人間形成に重大な役割を果たすという認識のもと、スポーツ実践そのものを学びの対象とする実技科目と、スポーツの歴史やスポーツ振興を通じた健康づくり・地域コミュニケーション、ヘルスケアなどの生活文化をテーマとする講義科目によって構成される科目群。特に実習については、学部・回生を超えたスポーツ集団づくりを通じて、スポーツ技術や集団に関する幅広い知識と分析能力の涵養をめざす。
E群:学際総合科目
現代社会に必要な課題をテーマとし、学際的総合的な知の構築をめざし、とりわけ学生の主体的な授業参加を重視する科目群。教養科目A~D群の分野を超えた、また各分野にまたがるテーマで、講義だけでなく協同学習(グループ学習)を取り入れた多様な授業方法で展開する参加型の新「特殊講義」と、小集団での調査・研究・討議・発表などを通じて、共通のテーマについて学生が主体となって学びあうことをめざす「教養ゼミナール」から成る。

立命館大学ならではの特色ある教養教育

「平和と民主主義」教育
立命館大学の教学理念である「平和と民主主義」を教養教育のなかで具体化・内実化するために「A群」の第7分野に「平和と民主主義」を設置しています。広島・長崎、中国、韓国を訪れ平和学習を行う「国際平和交流セミナー」など、特色ある5科目を設置しています。
教養ゼミナール
他の多くの科目が講義形式で展開されるのに対して、「教養ゼミナール」は、学びの主体である学生諸君が中心となり、学部・回生を越えて、教員の指導のもとに特定のテーマに沿った学びを追求する小集団授業です。
外国語による講義科目の開設
立命館大学はこれまで全学的に国際教育に積極的に取組み、数多くの学生諸君の海外協定校などへの送り出し、海外からの留学生の受け入れを行ってきました。こうした状況に鑑み、教養教育においても外国語(当面は英語のみ)による講義科目を開設しています。これにより、日本人学生と外国人留学生との協同の学び、海外留学前の準備教育および留学後の外国での学びのフォローアップが保証されることでしょう。 本学では、教養科目B群(国際教養科目)のさらなる充実化を目的として、2016年度にカリキュラム改革を予定しています。今後も外国語による講義科目のさらなる発展を目指してまいります。
社会との連携をめざした教養教育
教養科目といえば、講義形式による幅広い知識の獲得をめざす「学力」重視の科目というイメージが強いかもしれません。しかし、立命館大学では、これまでの参加・実践型のキャリア・インターンシップ・サービスラーニング系科目の授業実践をふまえ「教養科目C群」において、市民としての倫理観・正義感・社会的責任感(シチズンシップ)の涵養、いいかえれば「人間力」の構築をも本格的に目指す「社会で学ぶ自己形成科目」に力を注いでいます。
スポーツ健康教育の重視
スポーツ健康教育は、若者の人間形成に重大な役割を果たすという認識のもと、この分野の学びの意義がよりいっそう実感できるよう、これまでいくつかの分野に配置されていたスポーツ・健康教育系の講義・実技科目を「教養科目D群」として統合しました。とくに近年、実技科目の「スポーツ方法実習」において、ヨガ、ウォーキングなど、学生のニーズを踏まえた新たな種目の開発にも取り組んでいます。

確かな教養教育の展開に向けた立命館大学ならではの取組み

全学共通・教養教育を支え、推進する教養教育センター
立命館大学における教養教育は全学部が一体となって取組んできましたが、その推進組織として、共通教育推進機構内に教養教育センターが設置されています。本センターは、キャリア教育センターおよびサービスラーニングセンターなど関連機関と連携しながら、よりよき教養教育の展開・推進をめざし、政策立案のみならず、学生アンケートの調査・分析を進め、各学部や授業担当者にフィードバックして、授業改善や新たな改革につながる活動を展開しています。
基本担当者制度
全学で複数以上のクラスが開設される教養科目の展開にかかわって、クラス担当者との間で緊密な連携を図るため基本担当者(コーディネーター)制度を導入しています。基本担当者は、教養教育の「立命館スタンダード」の考え方にもとづき、科目担当者会議、全学基本担当者会議を通じて、各キャンパス・学部で開設されている当該科目の適切な運営を担っています。
TA・ES導入制度・ゲストスピーカー招聘制度
よりよき授業展開を支援、推進するためにTA(大学院生によるティーチング・アシスタント)およびES(学部学生による教育サポーター)を、また、授業内容の豊富化をめざし必要に応じて外部から講師を招くゲストスピーカー制度が導入され、学びの確かさを保証してくれるものとして受講生から高く評価されています。

以上のように、立命館大学は教養教育に対して様々な取組みを展開してきましたが、教養教育センターは、教養教育に関わる全学の確固たる協力体制のもと、共通教育推進機構を構成する他のセンター(サービスラーニング、キャリア教育)とも協働して、各学部における人材育成目標の実現に寄与してまいります。

2015年4月