超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis KOD1



超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis KOD1 株は、鹿児島県小宝島の硫気孔より分離された。
超好熱始原菌とは、至適生育温度が80℃以上の始原菌である。
本菌は65℃〜100℃という高温で生育する絶対嫌気性菌であり、硫黄呼吸や発酵を行って、アミノ酸や多糖類を分解・資化する。また、
16S rRNA 解析による比較により、KOD1株は
進化系統樹の根の近縁に位置する極めて単純な生命体である可能性が示唆された。

また、KOD1株由来のタンパク質は耐熱性が極めて高く安定であることから、工業的にも非常に利用価値が高い。中でも耐熱性DNAポリメラーゼは実際に商品化され、DNA鑑定で必須となる遺伝子増幅反応(Polymerase Chain Reaction, PCR)に利用されている。さらに、KOD1株は一定の培養条件で大量の水素を生成することも見出している。これら様々な観点から、当研究室ではKOD1株の解析を進めている。



           進化系統樹                           電子顕微鏡写真

  

鹿児島県子宝島
                       硫気孔  


  

KOD1 株では全ゲノム解析が終了している。(T. kodakaraensis ゲノムプロジェクトのページ
ゲノム塩基数は、2,088,737 塩基対で、大腸菌の40%以下である。
ORFは最大に見積もって2306であり、約半分は機能推定可能であるが残りの半分は機能未知である。
KOD1 株がこのような少ない数の遺伝子で生命を維持していることから、この事より、生命の基本メカニズムを理解する上で本菌は恰好の題材であると考えられる。



ゲノム塩基数:   2,088,737 bp  

遺伝子数:   2,306

 機能未知遺伝子:  1,141


T. kodakaraensisの推定主要代謝系および輸送系

          

超好熱始原菌においては遺伝子数が少ないにも関わらずこれまで遺伝子破壊系が確立されておらず、遺伝子機能を研究する上で大きな障害となっていた。
KOD1
株は、超好熱始原菌では
世界で初めて特異的に遺伝子破壊できる系が確立された菌株である。pyrF 欠損ウラシル要求性株を宿主とした遺伝子破壊系が構築されている。pyrF 遺伝子を選択マーカーとして、挿入による遺伝子破壊pop out によるマーカーの除去、を繰り返すことで多重遺伝子破壊・交換が可能である。この技術を用いて、機能未知遺伝子を破壊してその影響を解析することにより、その生理的役割を明らかにすることが可能である。

KOD1株は、前述より進化系統樹の根の近縁に位置する極めて単純な生命体である可能性が高い。機能未知遺伝子の解析を通じて、生命の基本原理の解明に貢献していきたい。

 











立命館大学 | 生命科学部・生物工学科 | 創造理工専攻 | 今中研