イノベーションの実践

2015年12月12日(土)

旭化成ケミカルズの水島製造所と三菱化学の水島事業所
イノベーションの実践
濱田 初美 教授
訪問先企業
旭化成ケミカルズの水島製造所と三菱化学の水島事業所

ワン バーチャル カンパニー

 旭化成株式会社(以下、旭化成と記載)と三菱化学株式会社(以下、三菱化学と記載)は、共に岡山県倉敷市にある水島地区に、旭化成は水島製造所を、三菱化学は水島事業所を構え、石油化学分野および、機能商品分野の製品を製造している。

 両社が拠点を構える、水島コンビナートは、敷地面積が約2,500万平方メートルもあり、両社の様な石油化学をはじめ、石油精製、鉄鋼、自動車、電力会社等、約250社が集積し、工業製品出荷額は約4兆円、従事する従業員は2万人を超える。  岡山県は、この水島コンビナートに拠点を構える複数企業を「ワン バーチャル カンパニー」として、地域一帯を一つの架空の企業と見なし、県の工業の中核として据えている。

 また、構想だけにとどまらず、コンビナート内では、企業の垣根を越えて、相互にパイプラインで繋がれているなど、資本を超えた協力体制が敷かれている。

 国内外の総合化学企業を比較した場合に、指摘されるべきは企業規模である。欧米の大手総合化学企業のダウ・ケミカル、デュポン、BASFと比較すると、日本の総合化学企業の企業規模は見劣りすると言わざるを得ない。

 規模の拡大によって、汎用化学製品においては、大規模生産による“コスト削減”が可能になり、機能製品においては、“詳細な仕様への対応”や“開発・納期の短縮化”が可能になる。これらの顧客からの要望に応える研究開発と大規模設備への投資は、企業規模によるところが大きい。日本の総合化学企業は、他の業界に比べ、再編が遅れていることに加え、世界のライバル企業と伍して戦えるような突出した企業もないのが、現状となる。

 海外進出に関しても、自ら製品を携えて世界に打って出るのではなく、顧客である企業の海外進出に付随して打って出る傾向が強いものと思われ、内需志向で積極的な世界戦略発想が乏しいとも言わざるを得ない。

 また、日本の総合化学企業が世界で戦っていくために必要な、高付加価値事業や新規事業の展開、グローバルな事業展開を行うためには、時間と資金をかけて優秀な人材と事業を育成しなければならないが、投資ファンドなど「物言う株主」の増加により、短期的な企業価値を求められる傾向も世界的に強くなっており、このジレンマを克服する必要もある。(Y・K)