ゲストスピーカー

2015年11月19日(木)

中国ビジネス
前田 宏一先生
ゲスト
中国国務院発展研究センター研究員 経営管理研究科客員教授
林 家彬

「中国ビジネス」ゲスト講師:中国国務院発展研究センター研究員,林家彬客員教授来る

 11月19日(木),中国国務院発展研究センター研究員の林家彬氏(本研究科客員教授)を迎えて,第13次5ヶ年計画において中国経済が移行を目指している「新常態(ニュー・ノーマル)」について,お話を伺った。

講義風景1 【以下、林先生ご講演】
 2013年の政府報告書では,中国経済がかつてのような2桁成長から7%台の中高速成長に移行しているとの言及がなされました。この中高速成長がめざしているのが,「新常態(ニュー・ノーマル)」です。2桁成長を支えていた政治経済条件:旧常態との対比をつうじて,新常態の内容を明らかにしたいと思います。
旧常態を支えていた条件は5つあります。
 まず第1は,「高い貯蓄率」です。高貯蓄は,旺盛な投資需要(インフラ・不動産)に向かいましたが,今や道路・鉄道は既に十分ですし,住宅投資も今後は年率5%程度の伸びでしょう。
 第2は,「輸出主導」です。2003-2013年は年率23%の成長を遂げていますが,その伸び悩みはここ2-3年で明らかになっています。
 第3は,「低い要素コスト」です。とくに労働コストは米国の20分の1でしたが,賃金が2001-2011年の間に4倍になっており,その上昇率はGDPの成長率を追い越しています。若い農民工のニーズも高度化しており,権利意識の向上も顕著です。社宅も相部屋では出ていって,個室に移り住むようになっています。また,土地は企業誘致のため無償に近い価格での提供が行われていましたが,今は昔のようなことが無くなっています。
 第4は,「環境意識」です。大気・水・土壌の汚染は深刻です。今は環境意識が高まり,あちこちでニンビー運動が起こるようになっています。
 第5は,「労働力供給」です。かつては都市戸籍のない農民工の供給が無限にあったわけですが,ついに2008年には需給均衡し,ルイスの転換点を迎えました。熟練労働者の不足が際立ってきており,高度な自動機械の導入が進んでいます。
 ずっとこれまではキャッチアップ型後発国経済で来たわけですが,アルゼンチンのような中所得の罠にはまらず,先進国入りするには,理想的な新常態を実現しなければならない,という問題意識に立っています。そこで取り組んでいるのが,3つのチャレンジです。それは,①「財政・金融リスクのコントロール」,②「非貿易部門の生産性向上」,③「イノベーションの推進」です。

講義風景1  林先生の90分間のプレゼンテーションが終わると,会場からの質問タイムに入った。中国出身の留学生も,政府研究機関の研究員から直接に話を聞ける機会とあって,多数の質問が矢継ぎ早になされた。林先生は一つ一つの質問に丁寧に対応された。本研究科に多くの留学生がいることも驚かれていた。特殊講義「中国ビジネス」のゲストとして講演いただいたが,中国ビジネスの環境変化が著しい今日,変化の方向性について深い理解ができたことは有意義であった。