ゲストスピーカー

2016年1月16日(土)

人材戦略
佐藤 修 教授
ゲスト
ダノンアジアパシフィック社 タレントスカウト部長
大村 尚弘

ダノンアジアパシフィック社部長,大村尚弘氏来る

講義風景1 1月16日(土),ダノンアジアパシフィック社のタレントスカウト部長:大村尚弘氏を迎え,「リーダーシップとリーダーシップ開発」をテーマに,ダノンジャパン社の変革の足跡を語っていただいた。同氏は日本通運時代(16年間)には米国日通で人事マネジャーとして制度改革を実施され,米国医療機関(5年間)では人事総務マネジャーとしてM&Aに関わり,仏ダノンジャパン(8年間)では人事部長としてリーダーシップ開発を手掛けられた。

 リーダーシップに関しては,「リーダーは正しいことを行う」とするP.F.ドラッカーの定義や,「リーダーは変革を主導する」というJ.P.コッターの定義が有名であるが,この違いはどこにあるのか,という問いから講義が始まった。リーダーシップは1930年代から盛んに論じられるようになるが,今日までにグレートマン理論,特性理論,行動理論,条件適合理論,変革型・交換型理論等が唱えられてきた。当初の研究はリーダーシップを先天的な能力とする考えが支配的であったが,最近では後天的に獲得できるという考えに基づく研究が進んでいる。また長年,リーダー個人の属性に焦点を当てた研究が進んできたが,今日ではフォロワーとの関係性に着目した研究が増えている。

 このような中でダノン社では,仕事(業績)中心的な行動と人間中心的な行動のバランスを図ったCODEというリーダーシップを追求している。同社では,リーダーは,「目指す将来像を実現するために尽力し(Committed),開かれた心を持ち,メンバーと学び,共有する(Open),メンバーの能力を引き出し,育成することによって(Empowered),速やかに結果を出す(Doer)」人財であるとしている。授業では,「いかにして業績低迷企業の組織変革を行い,高業績チームを構築するか」というケースをもとに,このようなダノン流のリーダーシップ論の応用を検討した。

 次に,リーダーシップ開発に話が及んだ。リーダーシップに繋がる能力には専門能力・対人能力・概念化能力があるが,管理職から経営職に向かうほど後者の能力が重視される。様々な能力開発の機会があるが,リーダーは特に経験したことを概念化できる能力が期待される。「どうして失敗したのか」という問いだけでなく,「失敗から何を学んだか」という問いに応えられることが重要なのである。ダノン社では能力開発の機会として,OJT(コーチングとフィードバック)60%,集合研修10%,自己啓発10%,ネットワーキング10%が各割合で重要と考えており,潜在能力の高い人財については,適切なキャリア開発の機会(抜擢人事と3年以内の人事異動,部門横断プロジェクトへの参加,合意したキャリア開発計画の遂行,社内外ネットワークづくりの支援)を設けているという。授業では,「経営企画畑で育った担当課長を執行役員営業企画部長に昇格させたところ,発令3か月で休職を申し出てきた」というケースを素材にして,社長・人事部長が行った人事判断ならびに事前のリーダーシップ開発の妥当性を検討した。これをつうじて,系統的なリーダーシップ開発の重要性を学ぶことができた。

 ダノン社で展開されている人材戦略をケースにして,リーダーシップ理論の今日的適用について,分かりやすく教授いただいた次第である。

(文責:奥村 陽一 教授)