ゲストスピーカー

2015年01月14日(水)

オーナーシップ
濱田 初美 教授
ゲスト
Bain Capital最高顧問(前会長)
堀 新太郎

投資のプロから見た日本の潜在可能性と隘路

講義風景1 立命館大学経営大学院(RBS)は大阪キャンパスにてオーナーシップ(濱田初美教授)の講義に、Bain Capital最高顧問の堀新太郎氏を招聘し特別講義を実施した。

 テーマは「投資のプロから見た日本の潜在可能性と隘路」である。1984年、ボストンにて大統領候補にもなったロムニー氏が創業、コンサルティングアプローチを投資に適用、金融出身者が多い他の投資ファンドとは異なる。現在、約7兆円の資産を運用、投資利回りの高さと安定性で出色の存在である。トップから現場まで支援を行う強力な企業経営の専門家集団を擁する。これまで300社近くの投資実績があり、現在の投資先売上高は13兆円以上従業員100万人を超える。2005年に日本参入以来、既に再上場を果たした「すかいらーく」の他、ジュピターショップチャンネルやドミノピザ、マクロミル等の実績がある。

 プライベート・イクィティファンドは、対象企業に投資するファンドを組成し、当該企業への徹底した経営支援をおこなうことにより、高い収益力と企業価値の達成を通じて、その結果として上場(再上場)やシナジーのある企業との統合等により、自社の投資リターンを得ることをスキームとする。

 人口減少により日本は低成長だが、高い業績改善可能性(フルポテンシャル)のある企業が多い。効果的なリーダーシップや変革シナリオがあれば、日本企業の潜在力は高いとみている。企業変革のアプローチに特別な手法はなく、まず、これまで多くの日本企業に残されている5つの基本課題を高い目標とスピード感で推進して行くことだ。①粗利益の改善、②労働生産性の改善、③販間費の改善、④売上高の成長、⑤資産と投資の効率化である。Bain Capitalの投資注力分野は、業界の魅力度や成長性よりも、当該企業の業界内競争力が高いことだ。

 日本企業のフルポテンシャル追求のための基本策は4点。①経営管理力の強化により先に述べた基本課題での成果を出す、②真のグローバル化、③事業モデルの変革、④M&Aによる戦略的成長、である。これらは一つとして目新しいテーマはない。しかしながら多くの日本企業はこれらの点において優れたグローバル企業から遅れを取っており、その結果、フルポテンシャルが追及出来ていないといえよう。Bain Capitalはこれを実践している。その方法は以下の通り。

 投資前からマネジメントやオーナーと信頼関係を醸成、自前スタッフでの徹底したデューデリジェンスとエグジットも意識したアプローチ、投資判断はMD全員で徹底的に協議し、マネジメントとブループリントの結果を共有している。投資後は資本と経営を一体運営し、必要に応じて施策の加速化のための優れたエキスパート投入する。彼等は肩書も骨も埋める意識も排除し、一定期間で結果を出すことに貢献する事だけに注力するプロである。役割が終了すれば出来るだけ早くプロパーや後任に委任していく。

 今日の企業組織では、権限意識はあるが責任感の欠如している人が多い。ベインキャピタルでは全ての投資先について、幹部全員で週次の業績報告とディスカッションを行う。計画と実績のギャップについては0.1%迄の拘りを持つ。担当者自身が軌道修正のアクションを取りその結果を反映した計画まで含めて報告するのが原則である。各々が自己責任・自己管理、権限意識のない責任意識(=Ownership)を持っている。利益のフルポテンシャルの実績が出ることを確認し、次ステップがグローバル化だ。事業ポートフォリオの管理・モデルの変革は、コア事業の競争力強化とキャッシュフローの大幅改善が前提となる。これらの施策の時間軸は半年から1~2年だ。追加のM&Aではシナジー効果はプラスアルファ、当該投資先企業をサポートして投資後の企業価値アップがどの程度可能か、つまり元々の投資と全く同じ観点での事業評価と運営を行う。Bain Capitalはマネジメント力強化による成果追求型M&Aを志向している。つまり、常に企業力強化に特化した組織運営体制の構築と運営をサポートし、オペレーショナルエクセレンスを目指す。

講義風景2 『これから日本が飛躍する要件は、かつて日本の社会や企業が持っていた、個人の利害よりも組織のことを考え、かつその中で個人個人が責任意識を持つ集団を再構築することだ。集団志向・集団責任という今日の日本社会や日本の組織が陥っている状況でもなく、個人の利害・個人責任で動くきらいがあるグローバルモデルでもない、日本固有のモデルへの回帰が必要だ。社会や組織志向とその中での個人責任意識がある、藤澤周平の多くの小説に登場するような日本人を取り戻す必要がある』と締めくくられた。