ゲストスピーカー

2015年5月16日(土)

マーケティング
鳥山 正博 教授
ゲスト
野村総合研究所 上級コンサルタント
安岡 寛道

ポイント・会員組織が新しい価値を生む!

講義風景1 野村総合研究所の安岡寛道氏は顧客管理・会員ビジネス・ポイント・企業通貨・マイナンバー制度に関する日本を代表する論客である。今回の講義は「ポイント・会員制サービス」についてである。

冒頭、大塚家具の父娘の争いについて「高級志向の会員制vsカジュアル中価格帯シフト」と報道されたが、大塚家具の言う会員制は入り口で名前を書かせて店員が案内するだけで、そのデータはまったく利用されていなかったことが明かされ、ニトリの方が見事に会員データを活用しているというエピソードから講義がはじまった。

かつてのマス・マーケティング施策の多くはいわば遠洋漁業で常に新規顧客(既存顧客も区別がつかない)を開拓していたのに対し、会員制サービスは養殖のようなもので常時イケスに顧客を囲うものだという。会員カードによる購買履歴に加え携帯GPSによる位置情報とウェブのアクセスログとSNSのソーシャルグラフというデータをとるようになると様々な精緻なセグメンテーションやタイミングのよい個別のプロモーションが可能になる。これをマーケティングプラットフォームとすると顧客の見える化、ファン化の施策、送客に加え、メディアとの連携やプロセスの改善が行われる。同じだけ原資がかかるなら、そもそも値引きをするよりもポイントを発行したほうがよいのは次回の購買への導線となる上、効果測定等のデータとなるからである。また提携企業とは相互に送客をし合うことも可能になるのだ。

ではどんな場合にポイント制度が効果的なのか。①ポイント獲得先が多く②限界費用が安いサービスを提供し③知覚価値が高い還元先を持つ場合である。エアラインがまさにそれに相当する。エアラインはそのメリットを生かし様々な業種と提携することでポイント交換の中核的位置を占めている。従来のマーケティングではあまり顧みられなかったポイント交換のネットワークは図にしてみると圧巻である。最近の大きな動きはTポイントカードやポンタや楽天カード・リクルートを交えての合従連衡の動きである。

講義風景1 ここ10年であらゆる業種においてポイントの保有率は激増しほとんどの業種ではすでに当たり前のものになりつつあるが、なぜそこまで発達したのであろうか。これはポイントにより購買行動を変える日本人の性向が生み出したものだ。また所得が高いほどポイントの影響を受けることも明らかになっている。優良会員向けの優遇策についても各社の工夫がこれでもかと紹介された。会員組織は大企業が行うこと、というのが通念であるが、LINEのようなプラットフォームを使えば実は自分だけの会員組織を作ることができるような時代であるという説明には受講生一同「なるほど」と納得していた。

最後にこの膨大な会員データをどう分析するか、どう活かすかについての類型と実例が紹介され、さらにO2O(オンラインtoオフライン)という形で現在どう進展しつつあるか、ソーシャルグラフや位置情報に基づいてどう進展し得るか、一億総会員化の先には何があるかを大胆に見通して講義を終えた。膨大な情報量に圧倒されつつも具体的な事例をベースとする話なので受講者の理解度は高く満足度も高い講義であった。