ゲストスピーカー

2015年7月13日(月)

企業分析
奥村 陽一 教授
ゲスト
カップヌードルミュージアム 館長
筒井 之隆

日清食品ホールディングスの現状(2015年3月期決算)と戦略

講義風景1  7月13日(月)、日清食品ホールディングス常勤顧問の筒井之隆氏を迎えて、当社の決算・中期計画及びグローバル戦略をめぐって、お話を伺う機会を得ました。

 15年3月期には売上高が4,316億円に達し,海外売上高比率も19%を超えました。「グローバル・カンパニー化」を目指す中期計画目標(2015年度:売上高4,500億円,海外売上比率20%,ROE7%超)にほぼ手が届くところまで来ました。牽引役となったのは12%伸長の海外売上ですが,なかでも中国市場での「合味道(あいみどう)」(中国版カップヌードル)の普及が大きく貢献しています。人口300万人以上の60大都市(うち28都市には自社販売拠点の営業所を設置)で一斉に販売を強化しており,高価格商品ながら若年層(80年代以降生まれ)に受け入れられています。

 「出前一丁」(香港など24か国),「NISSIN」,「カップヌードル」(80か国),「Top Ramen」(米国など18か国)の4つのグローバルブランドを育成していますが,製品開発やマーケティングは現地化して,ブランド管理のみ日本から調整するといった「グローカル戦略」を徹底しています。トムヤンクン味(タイ),マサラ・カレー味(インド),ミーゴレン味(インドネシア),地鶏スープ味(ブラジル),ホットチリ味(メキシコ)など,国と地域に合わせた「おふくろの味」(現地の人にとって最もComfortableな味)を表現する製品開発を進めているのです。現地化をいっそう推進するために,この1年で125名もの意欲の高い現地経営人材の採用を行いました。こうした人材獲得にかかわる管理費用の増大が,今期の営業減益の要因の一つでした。

 そういう先行投資もありROEが5.3%と目標未達になりました。当社は、ROEを大切にしていますが、エクイティを小さくしてまで目標に合わせることはしない方針です。当社では個人株主を重視しており,1日に約3千人の方に来場いただく株主懇親会を年2回開いています。個人株主は日清食品のファン=お客様であり,増加策を進めています。さまざまな先行投資が実を結ぶ頃には,自ずとROEも株価も付いてくるでしょう。ここ1年が勝負の年になります。

講義風景1  グローバル展開を意識したブランディングとしては,テニスの錦織圭選手やサッカーのマンチェスター・ユナイティッドとのタイアップ広告や,ネットをつうじたデジタル・マーケティングに注力しています。ブラジルW杯の時にネット上で展開したSAMURAIシリーズのCMには,世界中で2,300万もの動画視聴回数がありました。デジタル・マーケティングでは,驚きと感動を顧客同士がシェアすることが鍵となります。最近のカップヌードルのCM「リア獣」をご覧になった方がいらっしゃると思いますが,これはツイッターで「日清,マジやばい!」などの書き込みが相次ぎ,ツイート数でソフトバンクの「犬のお父さんシリーズ」を抜いてトップにたちました。こうしたSNS上での拡散効果が,やがて日清ブランドに対するロイヤリティ・ループを形成するように様々な仕掛けを打っています。こうした新しい日清食品のチャレンジを観ていただくと,その潜在力について評価いただけるのではないかと思います。

 以上,日清食品の「攻め」の展開について,多方面からお話を伺うことができました。日経BP「ブランドジャパン2015」における,第3位「日清食品」,第24位「カップヌードル」という,同社の「見えない資産」について理解が進みました。