ゲストスピーカー

2015年7月26日(日)

企業分析
奥村 陽一 教授
ゲスト
医療法人社団適塾会理事
福島 公明

病院経営の基本的見方

講義風景1  「企業分析」ゲスト講師:医療法人社団適塾会理事,福島公明氏来る 7月26日(日)、医療法人社団適塾会理事の福島公明氏を迎えて、「病院経営の基本的見方」について、お話を伺う機会を得ました。

 私は,医療検査会社で勤めた後,済生会吹田病院(事務長,全国事務部長会会長を歴任),淀川キリスト教病院(常務理事,本部長を歴任)などを経て,計8件(のべ1,500床)の医療施設の建設に携わってきました。病院経営に決定的影響を及ぼすのは,①診療報酬の改訂,②高額医療機器の導入,③病棟の新設・建替えの3つです。いずれにおいても,病院の将来を見通した戦略の構築が不可欠となります。 病棟建設といえば,病院経営にとっては30年に1度の大事業です。その計画から設計・工事,開業に至るまで,最低でも4年程度の時間がかかります。4年間の間には2度の診療報酬の改訂があります。日々刻々と医療行政が変化するわけで,初期の見通しどおりに進むとは限りません。経営者は,常に厚生労働省のホームページを見て,新着情報をおさえておくことが日課になります。社会保障や税の捕捉から言われだしたマイナンバー制も,当初は医療と結び付けないと言われていましたが,今や電子カルテ等と結び付ける方向に議論が変わってきました。行政の動きを先読みしていないと,取り返しのつかない投資をしてしまうことになります。 病院は基本的に立地ビジネスなので,自ら(建設敷地)の商圏分析をしておくことも重要です。どの地域からどれだけ集患できるか,どういう疾病が多く,年齢分布はどうか等。最近は病院・疾病ごとの治療実績等がインターネットで容易に調べられるので,地理的な意味での立地だけでなく,顧客の心理面における自院のポジションについても,よく考えておく必要があります。多忙なビジネスマンを顧客とする場合は,即日入退院や夜間・週末治療などの利便性や混合診療等も,有力な差別化要因になります。

講義風景1  経営の枠組みが決まった下では,オペレーションが課題になります。病院は稼働率ビジネスでもあるので,ベッド・コントロールが決定的に重要です。病床の空き具合を全スタッフが確認し,リアルタイムで情報を共有しておくことが大切です。待機患者さんのスムーズな受入れは,病床稼働率の向上にもつながるからです。  こうした基本の徹底を前提として,グローバル化や情報化の影響にも目配りが必要です。米国では医療格差が著しく,入院治療で数千万円もかかるため,全財産を失うといった事態が生じています。財産のある人には,日本より遥かに手厚い入院環境が整備されています。またアジアにも日本の標準を上回り,日本語での対応もできる病院が多数生まれています。グローバル水準の環境を整えた病院が,苦境にある日本の病院を買収する日もそう遠くはないでしょう。他方,情報化コストの低下により,例えば新設の淀川キリスト教病院では,スカイプを使って病床から家族・友人と通話できる環境を整えることができました。種々の医療サービスにおいても,情報化による品質向上が飛躍的に進んでいくことでしょう。

 福島先生は,「病院は非営利だから特殊だと考えるのは間違っており,民間企業と同様の変化にさらされていることを見逃してはならない」と,強調されました。RBS立命館大学ビジネススクールでは,同先生による特殊講義「医療経営」を,2016年度から開設する予定です。ご期待ください。