「核持込密約」問題についての声明

立命館大学国際平和ミュージアム
名誉館長 安斎 育郎
館長 高杉 巴彦

 2010年3月9日、外務省の有識者委員会(座長:北岡伸一・東京大学教授)は、日米間の外交上の「密約」についての検証結果を岡田克也外務大臣に報告しました。
その結果、①1960年の「日米安全保障条約」改定時に、核兵器を積んだアメリカの艦船が日本の港に寄港したり、領海を通過することについて、「事前協議の対象にしない」という「暗黙の合意」があったこと、②朝鮮半島有事のとき、アメリカ軍が在日米軍基地を自由に使うことを例外的に認めること、③沖縄の日本への返還にあたっては、原状を回復するための費用を日本側が肩代わりすること、について「広義の密約」があったことが明らかにされました。

 平和博物館の重要な使命の一つは、戦争や軍備についての資料を展示・解説し、そのことを通じて事態の本質を明らかにし、社会の平和づくりに貢献することです。政府による資料の隠匿は極めて重大な問題であり、ましてや、国家の安全保障にかかわる重大な外交上の約束が、国家間で「密約」として取り交わされ、政治指導者が国民に虚偽の説明を重ね、半世紀にもわたって国民の目を欺いてきたとすれば、それは民主主義の根本に関わる深刻な事態であり、情報開示に基づく開かれた政治のあり方を否定する暴力と言わなければならないでしょう。

 すでに、私たちは、2007年10月、「沖縄返還後の『核持ち込み密約』を示す米公文書についての声明」を、広島市立大学広島平和研究所・所長の浅井基文氏、および、長崎平和研究所・所長の川原紀美雄氏と共同声明として発表するなど、この問題に関心を払い、社会にその重大性をアピールし続けてきました。

 今般の外務省有識者委員会の検証によって、日本外交の闇の部分に幾分かの光が当てられたことを契機に、国民にとって透明性のある国家関係、正々堂々とした外交関係が構築されることを強く求めるとともに、国際平和ミュージアムとしては、密約情報の一層の開示を求め、関連資料の展示などによって問題の経過や本質を広く伝え、平和博物館としての社会的使命を果たす努力を続けることを声明します。

2010年3月18日