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Special Interview 1 : Mikio Yoshida 「学び合い」を通じて、変化に立ち向かっていく力を。 未来を生み出す人を育てる立命館の教育。 ◎スペシャルインタビュー 立命館大学長 吉田美喜夫

避けられない変化の中、それに立ち向かっていく姿勢を。

世界中で同時に進むグローバル化、さらに国内においては少子高齢化など、私たちは避けることができないいくつもの変化に晒されています。また、時代は知識基盤社会、つまり知識を新たに創造し、それを活かすことが求められる社会へと向かっています。そのような社会の担い手たる学生を育てるにあたり、教育課程全体の総括を果たす教育機関としての大学は重要な役割を担うことになります。

立命館大学がどのような学生を育てていくのかについては、ご承知のように「立命館憲章」の中で謳われています。「『未来を信じ、未来に生きる』の精神をもって、確かな学力の上に、豊かな個性を花開かせ、正義と倫理をもった地球市民として活躍できる人間」。私はこれに尽きると思っています。

もとよりこれは抽象的な表現になっていますので、現実の教育の中で具体化させなければいけません。そこでポイントとなるのは、いま存在している職業が30年後や40年後にはなくなっている可能性があるということです。つまり、一つの職業を60歳や70歳になるまでやり続けることができるかわからない。そう仮定すると、大きな変化を前にしてもなお、自分の個性を発揮し続けなければいけない。言い換えれば、変化に立ち向かっていかなくてはならないのです。立命館大学は毎年約7000人の学生を送り出し、彼らは社会のあらゆる分野の仕事に従事しています。その責任を自覚しながら、変化に対して挑戦し続けることができる学生を育てていきたいと考えています。

グローバルなつながりの中で生きていくこと。

同時に、活躍の場は日本国内にとどまらず、アジアはもちろんのこと、北南米・ヨーロッパ、あるいはアフリカといった地域にも広がっていくでしょう。そしてこれは立命館大学の学生に限った話ではなく、日本人一人ひとりに対して求められるようになるはずです。

一方で、グローバルな社会は、私たちに日本という国のなりたちや私たちの身近な生活の基盤である地域について考え、行動することを求めます。現代は情報化が進んでおり、人の移動も便利になっていますから、ローカルに働く人もグローバルな世界との結び付きが必要になる、つまり地球規模のつながりの中で生きていかざるを得ないのです。例えば、各地域の企業で働いていても、その取引は海外に広がってきており、その国の文化背景や宗教などを理解しながら、交渉手段を模索したり、ニーズ&シーズを検討する必要が生じてきています。

「学び合い」の中で、必要とされる力を養う。

では、その力をどのようにして身につけていくのか。これにはさまざまなアプローチが考えられます。PBL( Project-Based Learning /課題解決型学習)や、立命館が他大学に先駆けて実践してきた小集団教育、あるいはインターンシップへの参加や留学体験など、一連の学びの仕組みを通じて必要とされる力を養っていく。その結果として、社会の大きな変化を生き抜いていける、新しい学生像が生まれてくるのではないでしょうか。

時代の要請に応え、先進的な事例に学びながら、私たちなりに新しい教え方や学び方を開発して実践し、そして検証する。立命館には、教員と学生が一緒になって学び方をつくり上げる伝統があります。学生もまた、友人や先輩・後輩の中で「学び合い」をします。例えば、基礎演習の教室に先輩がやって来て、自らの経験に基づき、後輩に助言やサポートをする。こうした中で脈々と学び方の継承が行われていくのです。

最近では「ピア・ラーニング」と呼ばれ、その重要性が叫ばれていますが、立命館においてはすでに何十年もの歴史があります。経験の蓄積はとても大事で、ある日突然に始められる話ではありません。長い時間をかけた継承関係があってこそ、初めて本物になる。このピア・ラーニングをもっと本格的にすることで、「学びの立命館モデル」を形づくっていきたいと考えています。

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学生同士の「学び合い」を通じて、「学びの立命館モデル」を形づくっていきたい。

「コモンズ」という場が、学び合いを活発にする。

ピア・ラーニングの実践の場として強調したいのが、「コモンズ」という概念です。もともとは共有地や入会地、里山という意味で、誰でも自由に使える場所を指します。自由に入れるわけですから、当然みんながそこにやって来ます。すると、そこで挨拶が交わされ、コミュニケーションが行われるようになる。そして、新しい技術や知識が伝わり、だんだんと広がり、深まっていく。このサイクルを私は教育の現場で具体化していきたいのです。

この発想を元に、衣笠キャンパスとBKCの図書館に「ラーニングコモンズ」をつくりました。そして今年新しくできたOICでは、図書館の中だけではなく、キャンパス内の至るところに学びの場・コモンズが用意されています。このような場所を通じて、ピア・ラーニングをもっと活性化させていきたいと思っています。

コモンズの特性を活かす立命館の強みのひとつが、全国から学生が集まっているという点です。1回生の最初の基礎演習クラスではさまざまな土地の方言が飛び交っているわけですが、ここにもう異文化交流の芽がある。さらに、1300人を超える留学生が世界中から集まっています。これからスーパーグローバル大学創成支援事業の計画に基づいて予定している事業を進めることで、この数はもっと増えていきます。今までの何倍もの学び合いが行われることになるのです。

全国から集まった学生同士や日本人学生と留学生の相互交流を一層活発化させていく。このことを通じて、グローバルな社会に立ち向かっていく気風を、学生一人ひとりに行き渡らせる。大切なお子様を預かった大学の責任として自覚し、そういう教学を実践していきたいと思っています。

キャリアセンターという名に込められた意味。

立命館大学は他の大学に先駆けて、「就職部」というセクションを「キャリアセンター」という名称に変えました。これは名前を変えたことではなく考え方の変化に意味があります。

大学あるいは大学院というのは、社会に出ていく直前の教学機関であり、それゆえに就職というものの持つ意味がいかに大事であるか、十分承知したうえで伝統的に重視してきました。しかし、就職すればそれで終わりかというと、決してそうではない。先ほど申し上げたように、最初に就いた職業がこれから先もあるのかわからないわけですから、長い人生を生き抜いていく力をいかにつけるか、そういう視点を持って学生を指導していかなければいけない。まさに「キャリア」をつくり上げていく、そういう問題意識を持って学生に接する必要がある。そのような役割を担うセクションとしてキャリアセンターというものを設けたのです。ですから、このような考え方で学生に対する指導をしているということを、父母の皆様に是非ご理解していただきたいと思っています。

子どもを見守るためには、信頼することが大切。

私自身も子どもの就職を見守る経験をしました。育ててきた自分の子どもが、いよいよ社会で活躍していく。親としてこれほど楽しみなことはありません。他方で、社会は厳しいということも親はよくわかっています。「生き抜いてくれるかな」という不安もありますが、ここは子どもを信頼することが大切だろうと思います。

よく「温かい目で見守る」と言いますが、この言葉に代わる表現はないのではないでしょうか。これから社会に出ていこうとする子どもたちに、「親も自分という存在を大事にしてくれている」「ちゃんと見守ってくれている」と感じてもらえる態度や物言い。なかなか難しいわけですが、そんな心持ちであれば、自ずとそういう態度なり物言いになると思うのです。そのことを心がけていただきたいと思います。

近年、景気回復の影響により、就職は多少明るい状況ではありますが、これが続くかどうかはわかりません。依然として就職は重要な課題で、学生は大きなストレスの下に置かれているのが現状です。エントリーシートを書いて応募し、面接を受けるということを何十社にわたって繰り返す。そして、東京・大阪・九州など、いろいろなところへ出かけていく。その苦労を理解していただき、細やかな配慮をしていただくことが結局は一番大事なのだと思います。そのベースとなるのが信頼です。自分の子どもをとことん信頼することが、最良の励ましになるのではないかと思います。

親御さんの立場で考えれば、今の就職活動がどうなっているのかについて、わからないことがおありなことは当然だと思います。「これからはグローバルに活躍していかなければいけない」と言っても、そのような経験がなければ、親としてアドバイスできる範囲には自ずと限界が生まれます。そういう時には、「キャリアセンターに行って相談してみたら」とか、「ゼミの先生・先輩・友人に自分の力量や個性を尋ねてみたら」とお声掛けをしていただくのがいいのではないでしょうか。大学としては、学生の置かれている状況を重々理解し、適切なアドバイスができるスタッフと環境を揃えていますので、その点についてはご安心いただきたいと思います。

親の経験は、子どもにとって強い説得力があります。しかし、学生にはより広い経験を積み、さまざまな情報に触れてほしいと思うのです。そのためには、キャリアセンターや先生方、先輩たちにも話を聞いてみてほしい。それを促すこともまた、「見守る」あるいは「励ます」ことの中身になるのではないかと思っています。

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自分の子どもをとことん信頼することが、最良の励ましになると思います。

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吉田美喜夫
1977年、立命館大学大学院法学研究科民事法専攻博士課程後期課程単位取得退学。産業社会学部助教授、法学部教授、大学院法務研究科教授などを経て、2015年1月より現職。

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