ワクチン情報ページ |
立命館保健センター 2010.09.27
2011.02.22更新
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このページでは、皆さんにワクチンや感染症についてお知らせしていく予定です。
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ワクチンに関するニュース |
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ワクチンで予防可能な疾患(VPD)と大学生へお勧めのワクチン |
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国内で流通しているワクチンで予防可能な疾患は、現在のところ下記の通りです。これらのうち、定期予防接種に指定され、公費で行われる予防接種は、青色バナーの8感染症だけです。その他はすべて任意接種として扱われ、接種を希望する場合は自己負担となります。任意接種対象の疾患のうち、緑色バナーの6疾患に対する予防接種は、定期予防接種化することが望ましいと考えられます。
定期予防接種のうちで自分が受けていないものがある場合、今からでも是非受けておきましょう。この場合、任意接種となり有料になります。また、定期予防接種に加えて大学生の皆さんが是非受けておいた方が良い予防接種として、おたふくかぜ、水痘などの小児ウィルス性感染症の予防接種をお勧めします。もちろんこれまでに罹ったことがないか、抗体価が陰性の場合に限ります。
海外留学の際には、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘、DTP(ジフテリア・破傷風・百日咳)、結核、B型肝炎などに対する幅広い免疫を要求されることがあります。特に、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘などのウィルス性疾患に罹ったことがなく、予防接種も打っておられない方は、早めに予防接種を済ませておく事をお勧めします。
女子学生には、ヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチンを打っておくことを是非お勧めします。性行為により伝播するHPVによる持続感染は子宮頚がんを起こす危険性があります。子宮頚がんは20歳台、30歳台から罹患率が急増しますが、その原因のほどんどがHPV感染によるものであることが分かっています。HPVワクチンは、わが国では2010年から打てるようになった新しいワクチンで、HPV感染を予防し子宮頚がんに罹りにくくします。半年間の間に合計3回接種する必要があります(初回、2回目は1ヵ月後、最後は半年後)。現在、わが国でも12歳程度の女児を対象に定期予防接種化することが検討されていますが、大学生の皆さんは現在も今後も、任意接種で打つしか方法がありません。多少料金は高い(3回で5万円程度)ですが、子宮頚がんが予防できることを考えると、決して高い額ではないと思います。是非打っておきましょう。(HPVワクチンについてのリンク: allwomen.jp (gsk))
予防接種を受けられる際は、その記録のために母子手帳を必ず持って行き、記録をつけてもらいましょう。
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ウィルス感染症 |
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麻疹 (はしか) |
風疹 |
日本脳炎 |
ポリオ(急性灰白髄炎) |
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おたふくかぜ (ムンプス) |
水痘 (みずぼうそう) |
B型肝炎 |
ヒトパピローマウィルス |
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インフルエンザ |
A型肝炎 |
黄熱 |
狂犬病 |
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天然痘 |
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細菌感染症 |
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ジフテリア |
破傷風 |
百日咳 |
結核 |
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肺炎球菌感染症 |
インフルエンザ桿菌 |
コレラ |
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凡例 |
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定期予防接種 |
定期予防接種化が望まれるもの |
任意予防接種 |
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定期予防接種 |
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日本の定期/任意予防接種スケジュール(20歳未満)(IDSC作成、2010年4月現在、PDF) |
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ワクチン情報へのリンク |
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国立感染症研究所感染症情報センター ワクチンページ |
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厚労省 予防接種対策に関する情報 予防接種ガイドライン 予防接種と子供の健康 |
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厚労省検疫所 FORTH |
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社団法人 細菌製剤協会 |
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学会 日本ワクチン学会 日本小児感染症学会 日本小児科学会 日本産科婦人科学会 日本婦人科腫瘍学会 |
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京都健康医療よろずネット 京都市内のワクチン取り扱い医療機関が検索できます |
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滋賀県救急医療情報ネット 滋賀県内のワクチン取り扱い医療機関が検索できます |
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国内で流通しているワクチンの種類 (厚労省ページを参照) IDSC |
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ジフテリア・百日せき・破傷風混合(DPT)ワクチン |
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ジフテリア菌及び破傷風菌の産生する毒素を精製無毒化したジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイドを含む液と,百日せき菌から分離・精製した感染防御抗原を含む液にアルミニウム塩を加え,不溶化した不活化ワクチンです。 |
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ジフテリア・破傷風混合(DT)トキソイド |
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ジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイドを混合した不活化ワクチンです。百日せき既罹患者及び第2期の定期接種に使用します。沈降DTトキソイドと液状DTトキソイドの2種がありますが,現在市販されているものは沈降DTのみです。どちらの場合にも0.1mlを皮下注射すます。
例外的に第1期接種にDTトキソイドを使用する場合は,沈降DTを4〜6週間隔で各々0.5mlずつ2回皮下注射するのが一般的です。 |
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ジフテリアトキソイド |
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ジフテリアトキソイドを含むワクチンです。成人用には,高度に精製したトキソイドにアルミニウム塩を加えた成人型沈降ジフテリアトキソイドがあります。 |
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破傷風トキソイド |
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破傷風トキソイドを含むワクチンです。沈降破傷風トキソイドの基礎免疫(3〜8週間隔で各々0.5mlずつ2回皮下接種します。6〜18カ月後にさらに1回0.5ml接種)が行われていれば,その後の外傷時に追加接種(0.5ml)を行うと十分な免疫効果が得られます。 |
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ポリオワクチン |
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ポリオウイルスには,I型,II型,III型の3種類があり,この3種類の弱毒ウイルスを,適切な比率で混合した「生ワクチン」です。経口服用します。1回の服用では3種のウイルスが必ずしも同じように増殖するとは限らないので,2回の服用が行われることになっており,2回目の服用では1回目の服用で増殖せず免疫の成立しなかった型のウイルスのみが増殖し免疫を獲得します。なお,ポリオは腸管内増殖をするので,他の目的でガンマグロブリンの注射を受けた直後でも,免疫の成立に支障はありません。
生ワクチンのため、ワクチンによるポリオ感染事例が年間10数例みられることより、今後は海外で用いられている「ポリオ不活化ワクチン」に切り替えられて行く予定です。 |
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麻しんワクチン |
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弱毒化した麻しんウイルスを凍結乾燥した生ワクチンであり,添付の溶解液(局方蒸留水)で溶解し使用します。高温や紫外線に弱い生ワクチン株を使用しているので保管に注意する必要があります(5℃以下の冷蔵庫又は冷凍庫に保管)。
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風しんワクチン |
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弱毒化した風しんウイルスを凍結乾燥した生ワクチンであり,添付の溶解液(局方蒸留水)で溶解し使用する。高温や紫外線に弱い生ワクチン株を使用しているので,保管に注意する(5℃以下の冷蔵庫又は冷凍庫に保管)。 |
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日本脳炎ワクチン |
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これまでは、マウス脳による旧ワクチン(日本脳炎ウイルス(北京株)をマウス脳内に接種し,増殖したウイルスを精製し,ホルマリンで不活化した後,更に精製したもの)が使用されていましたが、H17年に接種後の副反応としてADEM(急性散在性脳脊髄炎)の事例がみられたため、以後定期接種であるのにも拘わらず積極的勧奨が控えられてきました。その後、乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが使用可能となり、H22/8/27には旧ワクチンに代わり乾燥細胞日本脳炎ワクチンが正式な定期接種ワクチンに変更されました。
積極的勧奨がされてなかった期間、接種を控えていた人は、定期接種が受けられる年齢の範囲にある場合、定期接種として受けることができます。また、I期に旧ワクチンを打った人も、II期に新ワクチンを打つことも可能になりました。
日本脳炎ワクチンについてのQ&A 厚生労働省 |
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BCGワクチン |
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牛型結核菌を継代培養して弱毒化した菌で,開発者の名をとり,カルメット・ゲラン菌(BCG)と呼ばれています。これを凍結乾燥させた生ワクチンで,添付の溶解液(局方生理食塩液)を用いて溶解し,管針法にて接種します。菌の不活性化を防ぐため光の直射を避け早く使用しなければなりません。 |
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インフルエンザワクチン |
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インフルエンザHAワクチンは,高度に精製されたウイルス粒子にエーテルを加えてウイルス粒子を分解し,HA成分を採取し,ホルマリンで不活化したワクチンです。インフルエンザワクチンに含まれるウイルス株はインフルエンザの流行状況を考え毎年決定されます。 |
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おたふくかぜワクチン |
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ムンプスウイルスを弱毒化したあと凍結乾燥した生ワクチンであり,添付の溶解液(局方蒸留水)で溶解後使用します。高温に弱い生ワクチン株を使用しているので保管に注意する必要があります(5℃以下の冷蔵庫又は冷凍庫)。 |
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HBワクチン |
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組換えDNA技術を応用して産生されたB型肝炎ワクチンです。 |
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水痘ワクチン |
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弱毒化した水痘帯状疱疹ウイルスを凍結乾燥した生ワクチンであり,添付の溶解液(局方蒸留水)で溶解し使用します。高温や紫外線に弱い生ワクチン株を使用しているため,保管に注意する必要があります(5℃以下の冷蔵庫または冷凍庫)。自然水痘に罹患すると重篤化しやすい人を主たる対象として開発されてきたワクチンですが,健康児への接種も差し支えない。 |
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肺炎球菌ワクチン(23価多糖体) |
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80種類以上ある肺炎球菌の中で感染する頻度の高い23種類の肺炎球菌を型別に培養し,殺菌後各々の型から抽出精製された莢(きょう)膜多糖体(ポリサッカライド)を混合したワクチンです。
莢(きょう)膜多糖体とキャリアー蛋白とを結合させた結合型肺炎球菌ワクチンではありません。
23種類の肺炎球菌は高齢者の肺炎球菌感染症の80%を占めており,1回の接種で接種された型による肺炎球菌感染症を5年以上予防する効果が期待できます。ペニシリン耐性肺炎球菌感染に対しても予防効果があります(2歳未満の者に接種しても期待する抗体反応は得られにくい)。 |
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小児肺炎球菌ワクチン(7価結合型) |
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7価肺炎球菌ワクチンです。肺炎球菌血清型 4,6B,9V,14,18C,19F,23Fに由来する抗原を利用した、結合型(コンジュゲート)ワクチンです。不活化ワクチンのため合計4回の接種が必要です。生後3ヶ月頃接種を開始します。 |
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Hibワクチン |
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インフルエンザ桿菌b型の感染を予防するワクチンです。不活化ワクチンのため合計4回の接種が必要です。小児肺炎球菌ワクチンと同様に、生後3ヶ月頃から接種を開始します。 |
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A型肝炎ワクチン |
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A型肝炎ウイルス(KRM003株)を培養細胞(GL37)で増殖させ,それを精製,不活化,凍結乾燥したワクチンです。アジュバントやチメロサールは含ません。 |
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狂犬病ワクチン |
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狂犬病ウイルスを凍結乾燥した不活化ワクチンで,添付の溶解液(局方注射用水)で溶解し使用します。チメロサールなどの防腐剤が含まれていないため,溶解後直ちに使用し,残液を保存して再使用することはできません。 |
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HPVワクチン |
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HPVにはいくつかのタイプがあり、HPV16型と18型は子宮頚がんの原因のなかでもっと多いものです。このHPV16型と18型に対する不活化ワクチンが世界では既に100ヶ国以上で使用されています。HPVに対する感染を防ぐワクチンで、既に感染していうるHPVをやっつけるものではありませんので注意してください。その為、なるべく早い年齢での接種が勧められます。1セット3回のワクチンをすませておくと、最低、6.4年間は感染しないことが分かっています。 IASR: ヒトパピローマウイルスワクチンに関するWHO協議2005年 |
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HPVワクチンについてのリンク: allwomen.jp (gsk) 日経トレンディ |
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感染症の各論 |
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麻疹 (はしか) |
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麻しんウイルスの空気感染によって起こります。感染力が強く,予防接種を受けないと,多くの人がかかる病気です。発熱,せき,鼻汁,めやに,発疹を主症状とします。最初3〜4日間は38℃前後の熱で,一時おさまりかけたかと思うとまた39〜40℃の高熱と発疹が出てきます。高熱は3〜4日で解熱し,次第に発疹も消失します。しばらく色素沈着が残ります。
主な合併症としては,気管支炎,肺炎,中耳炎,脳炎があります。患者100人中,中耳炎は7〜9人,肺炎は1〜6人に合併します。脳炎は1,000人に2人の割合で発生がみられます。また,亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という慢性に経過する脳炎は約5万例に1例発生します。また,麻しん(はしか)にかかった人は数千人に1人の割合で死亡します。わが国では現在でも年間約50人の子がはしかで命を落としています。
麻疹に関するQ&A 厚労省 学校に於ける麻疹ガイドライン 麻疹の現状と今後の麻疹対策H14 |
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風疹 |
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風しんウイルスの飛沫感染によって起こります。潜伏期間は2〜3週間です。軽いかぜ症状ではじまり,発疹,発熱,後頸部リンパ節腫脹などが主症状です。そのほか,眼球結膜の充血もみられます。発疹も熱も約3日間でなおるので「三日ばしか」とも呼ばれることがあります。合併症として,関節痛,血小板減少性紫斑病,脳炎などが報告されています。血小板減少性紫斑病は患者3,000人に1人,脳炎は患者6,000人に1人くらいです。大人になってからかかると重症になります。
妊婦が妊娠早期にかかりますと,先天性風しん症候群と呼ばれる病気により,心臓病,白内障,聴力障害などの障害を持ったお子さんが生まれる可能性が高くなります。先天性風疹症候群について 風疹と先天性風疹症候群についてのQ&A 風疹の現状と今後の風疹対策H15
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おたふくかぜ (ムンプス) |
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ムンプスウイルスの初感染による全身感染症で起こります。耳下腺腫脹を主症状とします。ウイルスは患者の唾液,尿に排泄され,飛沫あるいは接触により感染します。発病数日前から耳下腺腫脹の消退するまで約7〜10日間伝染力があるとされます。潜伏期は16〜18日。不顕性感染が多く(30〜40%),一度罹患すると終生免疫が得られます。大流行を起こすことは稀で,年間を通じて幼児,学童に患者発生がみられます。唾液腺のみならず、全身の分泌腺組織,神経系組織が侵されます。唾液腺の中では耳下腺炎が多く,発熱,頭痛などの前駆症状の後耳下腺が腫脹し,1〜3日のうちに最大となります。25%は一側性に終わります。耳下腺腫脹は痛みを伴い,3〜7日持続します。発熱は1〜6日持続し,解熱後に耳下腺腫脹が軽快します。顎下腺炎,舌下腺炎も認められます。合併症として精巣炎(思春期以降の男児),髄膜炎,膵炎,卵巣炎,甲状腺炎,腎炎,感音性難聴などがあります。有効な抗ウイルス薬はなく,予防には弱毒生ウイルスワクチンが用いられます。 |
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水痘 (みずぼうそう) |
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水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染による発症します。幼児,学童期前半に多く,通年性に発生するものの夏,初秋には減少します。自然感染により終生免疫をが得られます。患者の気道,水疱内容が感染源となり,空気,飛沫感染によって伝播し,伝染力は強力です。発疹出現1〜2日前より水疱が痂皮化するまで伝染力があるとされます。潜伏期間は14〜16日。軽い発熱,倦怠感,発疹で発症し、発疹は紅斑から始まり2〜3日のうちに水疱,膿疱,痂皮の順に急速に進行します。発疹の好発部位は体幹,顔面で四肢には少なく,求心性に分布します。発疹は頭部有髪部位にも出現し,口腔には粘膜疹も認められます。発疹は痒みがあります。細菌性二次感染を起こさなければ瘢痕は残りません。合併症として皮疹部二次性細菌(ブドウ球菌,溶連菌)感染症,脳炎(小脳性運動失調症を呈するものが多い),肺炎(成人に多い),肝炎,ライ症候群があります。治療には抗ヘルペス薬のアシクロビルやバラシクロビル,予防にはわが国で開発された水痘生ウイルスワクチンが用いられます。 |
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ポリオ(急性灰白髄炎) |
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「小児マヒ」と呼ばれ,わが国でも1960年代前半までは流行を繰り返していましたが,現在は,予防接種の効果で国内での自然感染は報告されていません。しかし,現在でもインド,アフリカなどではポリオの流行がありますから,これらの地域で日本人がポリオに感染したり,日本にポリオウイルスが入ってくる可能性があります。
ポリオウイルスはヒトからヒトへ感染します。感染したヒトの便中に排泄されたウイルスが口から入りのど又は腸に感染します。感染したウイルスは3〜35日(平均7〜14日)腸の中で増えます。しかし,ほとんどの場合は,症状が出ず,一生抵抗力(免疫)が得られます。症状が出る場合,ウイルスが血液を介して脳・脊髄へ感染し,麻痺を起こすことがあります(麻痺の発生率は1,000〜2,000人に1人)。ポリオウイルスが感染すると100人中5〜10人は,カゼ様の症状を呈し,発熱を認め,続いて頭痛,嘔吐があらわれ麻痺を起こします。一部の人には,その麻痺が永久に残ります。呼吸困難により死亡することもあります。 |
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日本脳炎 |
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日本脳炎ウイルスの感染で起こります。ヒトから直接ではなくブタの体内で増えたウイルスが蚊によって媒介され感染します。7〜10日の潜伏期間の後,高熱,頭痛,嘔吐,意識障害,けいれんなどの症状を示す急性脳炎になります。
流行は西日本地域が中心ですが,ウイルスは北海道など一部を除く日本全体に分布しています。この地域で飼育されているブタにおける日本脳炎の流行は毎年6月から10月まで続きますが,この間に80%以上のブタが感染しています。以前は小児,学童に発生していましたが,予防接種の普及などで減少し,最近では予防接種を受けていない高齢者を中心に患者が発生しています。
感染者のうち1,000〜5,000人に1人が脳炎を発症します。脳炎のほか髄膜炎や夏かぜ様の症状で終わる人もいます。脳炎にかかった時の死亡率は約15%ですが,神経の後遺症を残す人が約50%います。 |
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A型肝炎 |
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A型肝炎ウイルス感染により引き起こされる肝炎です。ウィルスに汚染された飲料水や食物を介して経口的に感染するため,流行がみられます。東南アジアなど感染多発地域へ旅行する際には注意が必要です。わが国では感染源として牡蠣などの貝類の生食と家族内感染が重要です。季節的には3月をピークとして1月から5月に多くみられます。潜伏期間は4週で,発熱,食欲不振,全身倦怠感などで発症し,やや遅れて黄疸が出現します。通常は予後良好な疾患で自然治癒傾向が強いですが,時に劇症肝炎を引き起こすことがあります。合併症として、急性腎不全や肝内胆汁うっ滞症を合併することがあります。一度感染すれば終生免疫を得ます。A型肝炎はワクチンやヒト免疫グロブリンにより予防が可能です。 |
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B型肝炎 |
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B型肝炎ウイルスの感染によって起こる肝炎です。一過性の感染(急性肝炎)と持続性の感染(慢性キャリア)の2通りの感染を起こします。日本人では,成人では急性肝炎がほとんどで慢性化は稀でです。急性肝炎のうち劇症肝炎を起こすのは1%以下です。持続性感染(キャリア化)は通常,母児感染によって引き起こされます。キャリアは当初HBe抗原陽性でウイルス量は多いものの,肝障害のない無症候性キャリア状態で推移しますが,多くは思春期から30歳代に一時的にせよ肝炎を起こします。これを契機に約90%のキャリアはHBe抗原からHBe抗体へとセロコンバージョンを起こし,再び無症候性キャリアへと戻りますが,残りの10%ではHBe抗原のまま肝炎が持続します。HBe抗体陽性となったキャリアのうちの5〜10%でも変異株HBVが増殖して肝炎が持続し,これら慢性肝炎例では肝硬変,肝癌へと発展することが多いです。急性肝炎は対症療法で、慢性肝炎では抗ウイルス療法としてインターフェロンとラミブジンが使用されます。B型肝炎の感染源はHBVを含有した血液で,感染経路は輸血,針事故,出産時産道感染,性交感染などです。予防にはHBIG(抗HBsヒト免疫グロブリン),HBワクチンが有用です。
ウィルス性肝炎についてのQ&A(一般) B型肝炎についてのQ&A(専門) 参考: C型肝炎についてのQ&A(専門) |
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インフルエンザ |
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インフルエンザウイルスの感染により起こります。飛沫や接触にて感染,数日の潜伏期を経て,発熱,頭痛,筋肉痛,全身倦怠感のほかに鼻汁,咳などの呼吸器症状が現れます。成人の場合は合併症がなければ5〜7日で回復しますが,小児,老年者では死亡することもあります。日本では毎冬に流行し,数十万〜数百万の患者が発生します。A型インフルエンザウイルスは強い伝播性があり大流行を起こします。
ウイルス粒子表面の赤血球凝集素(HA蛋白質)とノイラミニダーゼ(NA蛋白質)には連続変異(ドリフト)と不連続変異(シフト)が起こり,後者が起こった場合は新型インフルエンザウイルスとして世界的流行となります(パンデミック)。連続変異はB型ウイルスでも認められるが,A型に比べて流行の規模は小さいと言われます。C型は単発に終わり通常,流行はありません。
新型インフルエンザに関するページへ(厚労省)
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狂犬病 |
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狂犬病ウイルスによる人畜共通伝染病の1つです。感染すると、全ての温血動物が発病し得ますが,発展途上国では主としてイヌなどの家畜が,アメリカ,ヨーロッパなどではキツネ,アライグマ,コウモリなどの野生動物がウイルスを保有しており,これらの動物の咬傷によりヒトに感染します。過去約40年間,わが国に本病は存在しませんが,一歩海外へ出るとほとんどの国が本病の常在国です。病獣に咬まれ感染が疑われる時は,ただちにワクチン接種を開始して発病を抑えることが可能です。100%致死的で,発病してから回復したのは世界でこれまで3例しかありません。
狂犬病ウイルスに感染した場合,3週〜3か月の潜伏期間の後に,頭痛,発熱,咬傷部位の疼痛などの前駆症状が2〜7日続き,その後に発症します。患者の約3/4では,精神的興奮状態,水を飲む際の苦痛を伴う嚥下困難,恐水状態(恐水症)を呈し,咽頭喉頭筋攣縮により窒息死します。残り1/4では精神運動機能は低下し昏睡状態となります。厚労省:狂犬病ページへ |
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ヒトパピローマウィルス感染症 |
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ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症です。
HPVは種々の疣贅(イボ)を形成し,尖圭コンジローマを誘発する。尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス6型,11型感染により生じ、外陰部や肛囲に好発し,大部分が性交あるいはその類似行為によって感染します。感染後2〜3か月で出現。乳頭状,鶏冠状の腫瘍で,淡紅色または褐色調のものが多いです。子宮頸癌の90%でHPVが検出され(16,18,31,45型)、子宮頚癌の原因となります。
HPVのウイルス粒子は直径50〜55nm,正20面体。ゲノムは約8000塩基対からなる環状二本鎖DNAです。宿主域はきわめて狭く,ヒトの上皮細胞の一部でのみ増殖可能で、核内で増殖します。ヒトに接触感染を繰り返し,良性の腫瘍(疣,コンジローマ)を誘発,一部は悪性化します。ウイルス粒子は良性腫瘍組織から分離可能で、現在70種(型)以上が分離されています。HPVは粘膜指向型と皮膚指向型に大別され,さらに癌化への関与の有無により,高リスク型と低リスク型に分けられます。粘膜高リスク型の代表例としては子宮頸癌組織から高頻度に分離され,トランスフォーム能をもつ16型,18型,低リスク型では尖圭コンジローマなどから分離される6型,11型があります。皮膚高リスク型では,疣贅状表皮発育異常症患者に発生する扁平上皮癌組織から分離される5型,8型,低リスク型では尋常性疣贅から分離される2型,7型などが挙げられます。 |
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HPVワクチンについてのリンク: allwomen.jp (gsk) 日経トレンディ |
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黄熱 |
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黄熱ウイルスによる感染症です。ネッタイシマカにより伝播されます。アフリカ中部・中央南アメリカのジャングル地帯にサルなどの動物によって維持されています。伝播力,毒力ともに強く、感染すると肝炎症状を呈します。潜伏期は3〜6日で悪寒,高熱,頭痛,結膜充血が出現し,3〜4日後いったん解熱しますが再び発熱します。乏尿,出血傾向,肝腫大,黄疸,吐血,下血などを認め,重症例は心不全で死亡します。致死率は約10%。治療は対症療法のみで,肝庇護を中心に行います。予防は弱毒生ワクチンの接種が効果があります。 |
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天然痘 |
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痘瘡とも言います。かつては死亡率の高い人類最大の伝染病でしたが,1967年WHOの痘瘡根絶計画の発足により,1977年前半にソマリアにおける少数の患者発生を最後に地球上から消滅しました。痘瘡の特徴は、発疹は末端より体幹に向けて広がり、皮疹の丘疹から水疱そして膿疱,痂皮化の変化が一斉にみられます。水疱には痘臍があります。全身症状は水痘より重く、熱型は二峰性です。 |
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ジフテリア |
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ジフテリア菌の飛沫感染で起こります。
1981年にジフテリア・百日せき・破傷風(DPT)ワクチンが導入され,現在では患者発生数は年間1〜2名程度ですが,ジフテリアは感染しても10%程度の人が症状が出るだけで,残りの人は症状が出ず,保菌者となり,その人を通じて感染することもあります。
感染は主にのどですが,鼻にも感染します。症状は高熱,のどの痛み,犬吠様のせき,嘔吐などで,偽膜と呼ばれる膜ができて窒息死することがある恐ろしい病気です。発病2〜3週間後には菌の出す毒素によって心筋障害や神経麻痺を起こすことがありますので,注意が必要です。 |
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破傷風 |
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破傷風菌はヒトからヒトへ感染するのではなく,土の中にひそんでいて傷口からヒトへ感染します。傷口から菌が入り体の中で増えますと,菌の出す毒素のために,口が開かなくなったり,けいれんを起こしたり,死亡することもあります。患者の半数は自分や周りの人では気がつかない程度の軽い刺し傷が原因です。日本中どこでも土中に菌はいますので,感染する機会は常にあります。また,お母さんが抵抗力(免疫)をもっていれば出産時に新生児が破傷風にかかるのを防ぐことができます。 |
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百日咳 |
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百日せき菌の飛沫感染で起こります。
1956年から百日せきワクチンの接種がはじまって以来,患者数は減少してきています。
百日せきは,普通のカゼのような症状ではじまります。続いてせきがひどくなり,顔をまっ赤にして連続的にせき込むようになります。せきのあと急に息を吸い込むので,笛を吹くような音が出ます。熱は出ません。乳幼児はせきで呼吸ができず,くちびるが青くなったり(チアノーゼ),けいれんが起きることがあります。肺炎や脳症などの重い合併症を起こします。乳児では命を落とすこともあります。 |
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結核 |
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結核菌の感染で起こります。
わが国の結核患者はかなり減少しましたが,まだ3万人を超える患者が毎年発生しており,大人から子どもへ感染することも少なくありません。また,結核に対する抵抗力はお母さんからもらうことができませんので,生まれたばかりの赤ちゃんもかかる心配があります。乳幼児は結核に対する抵抗力が弱いので,全身性の結核症にかかったり,結核性髄膜炎になることもあり,重い後遺症を残す可能性があります。 |
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肺炎球菌感染症 |
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高齢者では肺炎を起こし、乳幼児では細菌性髄膜炎を起こします。 |
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インフルエンザ桿菌b型感染症 |
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非莢膜株は上気道に常在する細菌で、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎などの気道感染症を起こす。莢膜株は殆どがb型(Hib)で、敗血症、髄膜炎、結膜炎、急性喉頭蓋炎、関節炎などを起こしますが、なかでも重篤なのが乳幼児での細菌性髄膜炎です。 |
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コレラ |
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コレラ菌の感染によって起こります。本菌によって汚染された水あるいは食物を摂取することにより感染します。東南アジアなど流行地に旅行する際には注意が必要です。潜伏期間は1〜3日。小腸内で増殖した本菌はコレラ毒素を産生し、腸管内へ多量の水・電解質が分泌されます。症状は米のとぎ汁様の水性下痢と嘔吐,著しい脱水症と代謝性アシドーシスを起こします。水性下痢は重症の場合1日5〜10Lを超えることもあります。治療は下痢・嘔吐により喪失される水・電解質を経口または点滴で補充します。WHOが推奨する経口輸液(ORS)が著効を示します。テトラサイクリンなどの抗生物質を投与する。適切な治療により予後は著しく改善します。予防対策として,流行地では生水,生食品を摂取しないことです。現在のコレラワクチンの予防効果はあまり期待されるものではありません。 |
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