シンポジウム「脳を鍛える−介護予防にむけてのアプローチー」開催
3月4日(日)衣笠キャンパスにおいて、立命館大学人間科学研究所主催「脳を鍛えるー介護予防にむけてのアプローチ−」を開催した。
午前の部では「認知症の介護予防の可能性−茨城県利根町の認知症予防対策事業を中心にしてー」と題し、日本の認知症医療の第一人者であり、茨城県利根町で認知症予防プロジェクトを立ち上げ、実際に町レベルで予防対策事業に取り組む筑波大学臨床医学系精神医学教授の朝田隆氏が講演し、認知症予防の地域介入としての運動療法について論じた。
「予防と言えど、現時点でアルツハイマー病など認知症に対する真の1次予防が可能とは思えない。実際には認知症の発症、事例性が明らかになるのを1年間遅らせることができれば十分ではないか」と述べ、このような考え方は認知症に限らず、糖尿病や高脂血症あるいは動脈硬化などいわゆる生活習慣病全体についても当てはまるとした。そして、介入手段としては、運動、栄養、休養、そして知的活動を媒介とする社会交流を挙げ、これらは全般的な発症遅延効果をもたらすものとして注目されていると紹介した。さらに「地域における保健事業や予防介入という視点に立つなら、今後のこれらの活動の効果判定では、地域における包括的な医療費と住民のQuality Of Life (QOL)というアウトカム(成果)が重要になってくるだろう」と述べた。
午後の部のシンポジウムでは、「5年間の『音読・計算』活動から見えてきたこと−高齢者プロジェクトの現在と展望−」と題し、吉田甫・文学部教授から「これまでの経過の報告」、高橋伸子・衣笠総合機構客員研究員と立命館大学人間科学研究所高齢者プロジェクト地域サポーターの箱岩千代治氏、細江つよ子氏、吉田清子氏から「サポーターの立場から」、佐藤たづ氏から「学習者の立場から」、また京都市北区福祉介護課課長補佐の遠藤裕憲氏より「行政(京都市)の立場から」というテーマの報告が行われた。
会場に訪れた参加者たちは熱心にシンポジウムに聞き入っていた。
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