カナダ・トロント大学のフランク・カニンガム教授
討論の様子 |
国際学術シンポジウム「グローバル化と民主主義」開催
6月22日(金)、衣笠キャンパスにおいて、立命館大学人文科学研究所主催の国際学術シンポジウム「グローバル化と民主主義」を開催した。今回は、カナダ・トロント大学からフランク・カニンガム教授、コペンハーゲン・ビジネス・スクールからモートン・オーゴー教授を招き、講演を行った。
シンポジウムでは、第1報告として、カニンガム教授が「グローバル化の時代――マクファーソンの民主主義理論」、第2報告として、オーゴー教授が「市民社会と民主的ガバナンス――トランスナショナル・ガバナンスネットワークの説明責任」と題して報告し、それぞれ、第1報告には、九州東海大学応用情報学部教授の小松敏弘氏、第2報告には山本隆・産業社会学部教授によるコメントがなされた。
第1報告では、カニンガム教授が、所有的個人主義の概念で日本でも広く知られる「マクファーソンの民主主義理論」を紹介するとともに、グローバル化時代におけるその意義について論じた。また、積極的な政治参加のもとに、真に人間らしい潜在可能性を伸ばそうという「発展型」民主主義の構想にマクファーソンの民主主義理論の核心をみるとともに、それこそがグローバル化時代の民主主義のあり方を考えるうえで重要な手がかりになると強調。小松教授は、「こうした発展型民主主義の実現にあたっては、労働時間の短縮と自由時間の拡大がカギとなる」と指摘した。
第2報告では、オーゴー教授が、グローバル・ガバナンスの民主化とそこにおける市民社会組織の役割、意義について、OECD(経済協力開発機構)でのいくつかの具体事例を取り上げつつ論じた。また、市民社会組織の関与がOECDのような国際機関の活動や政策決定プロセスの透明性、監視、アカウンタビリティの向上につながるとの見方を示し、山本教授は、ヨーロッパの事例をもとに、「ガバナンスの民主化はグローバルなレベルに加えて、リージョンやサブリージョンなど多層のレベルで展開しており、そこにおけるアソシエーションを通じての市民社会の関与が決定的に重要だ」と述べた。
討論の部では、マクファーソンの「所有的個人主義」の概念と積極的な政治参加のもとに「真に人間らしい潜在可能性」を伸ばそうという「発展型」民主主義の構想との関係、グローバル・ガバナンスの民主化とそこにおける市民社会組織の役割・意義、市場経済と市場社会の関係などの論点をめぐって、報告者、コメンテーター、さらにはフロアを交えて活発な討論と意見交換が行われた。
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<2007年7月11日掲載>
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