山際永三氏(右側)と弁士澤登翠氏(中央)
冨田美香文学部助教授(左側)による講演
 

映画上映の模様
 
 
立命館大学アートリサーチセンター秋季連続講演会「弁士・生演奏付 無声映画鑑賞会」開催
 
 2004年11月28日(日)、立命館大学アートリサーチセンター主催の秋季連続講演会「弁士・生演奏付 無声映画鑑賞会 −無声映画、等持院に還る!−第五弾チャンバラ王国マキノの軌跡」が開催され、『戦国時代』『人斬伊太郎』の二作品が、立命館大学衣笠キャンパス以学館2号ホールにて上映された。

 弁士の澤登翠さんは、定期鑑賞会から海外の映画祭まで幅広い弁士公演を行い、現代に生きる「弁士」という新境地を開拓。そして、楽団カラード・モノトーンは、無声映画上映時に生演奏で音楽を担当する和洋楽器混成の専属楽団。

最初に上映された『戦国時代』は、主演の高木新平扮する覆面の怪人が、彦根城を舞台に「鳥人」ぶりを発揮し、人質に取られた姫を奪還するチャンバラアクション映画。二本目の『人斬伊太郎』は、並木鏡太郎監督作の冷血漢の人斬伊太郎と彼を捕らえようとする武士との間で繰り広げられる死闘を描いた作品。

 上記二作品の上映の間に、澤登弁士と映画監督である山際永三氏を交えて「マキノ映画と並木鏡太郎監督」と題した講演会も行われた。山際氏は並木監督の遺作となった自伝的小説『京都花園天授ヶ丘 マキノ撮影所物語』について「並木さんは、永井荷風や泉鏡花の小説が大好きだった。その感性が活かされたもので、日本映画史に一石を投じた作品だと思う」と語った。澤登弁士は『人斬伊太郎』を「強烈で生々しく、切迫したものを感じる。救いようのない悪、伊太郎が暴れまくる様は、そのまま戦前昭和初期の混沌とした社会状況がフィルムを通して肌で感じられる作品」と評した。

 この日集まった観客は、澤登弁士の軽妙且つ迫力のある話術と、楽団の奏でる重厚で繊細な音色に彩られた無声映画に熱心に見入っていた。