会場の様子
 

渡辺真也氏による報告
 
 
アート・リサーチセンター「表象とジェンダー」プロジェクト企画 開催
 
 6月6日(月)、衣笠キャンパスにて、立命館大学アート・リサーチセンター「表象とジェンダー」プロジェクト企画として公開講演会が行われた。アーティストのセイラ・カメリッチ氏とキュレーターの渡辺真也氏をゲスト・スピーカーに迎え、3時間に渡って報告がなされた。

 セイラ・カメリッチ氏は、旧ユーゴスラビア(現在のボスニア・ヘルツェゴビナ)の首都サラエボに、ボスニアン・ムスリムとして生まれ、18歳からサラエボの伝統的デザイン・グループである「トリオ」に最年少で参加し、国際的注目を集めた。講演の中で、セイラ氏は、学生時代に経験したボスニア紛争が彼女のアートに大きな影響を与えていると説明。作品には、当事者へのメッセージよりも、むしろそのような状況を作ってしまった社会に対するメッセージを込めていると語った。また、国境を扱ったアートをきっかけに、そこを通った人たちが「本当にこの国境は必要なのか?」と問い始めたエピソードを挙げ、「アートは単に情報を与えるだけでなく、人に考えるきっかけを与えることができる」と述べた。

 渡辺真也氏からは「アートと国民国家」をテーマに報告がなされた。東京オリンピック・大阪万博を例に挙げ、世界の悪を隠蔽する力があると批判的な見方を示した。今回の愛知万博では、アメリカが日本の自衛隊イラク派兵決定直後に、万博に参加すると決めたことについて触れ、「万博の深層に眠る国民国家的枠組みを考える上で象徴的な出来事であり、アメリカ政府にとって、安く効果的な国際協力政策推進の象徴であることを意味している」と述べた。

 最後に質疑応答を通して、セイラ氏は「偶然通りかかった人が作品と出会い、その出会いをきっかけとして、それまで感じていなかったことを考えたり感じたりすることが大切だ」と語り、講演会は終了した。