比叡山・延暦寺学問所長の小林隆彰氏
会場の様子
2005年度連続リレー講義「現代社会と宗教」
第9回目「宗教者の務めとしての対話、相互理解」
6月6日(月)、衣笠キャンパスにおいて連続リレー講義「現代社会と宗教」の第9回講義が行われた。今回は、比叡山・延暦寺学問所長の小林隆彰氏が「宗教者の務めとしての対話、相互理解」をテーマに、87年に比叡山開創1200年を記念して開催した「比叡山宗教サミット」の取り組みについて講義を行った。
講義の中で小林氏は、宗教サミットにおいて世界中から各宗派を集めたいきさつと、その苦労について述べた。この中で同氏は宗教間の相互交流について、「各宗派をそれぞれ話し合わせると、自分の宗派の正統性を論じ合って収集がつかない。これに対して『平和』をテーマに扱うと、各宗派がみな同じ方向で議論ができた。天は世界中を通じて繋がっているように、宗派を問わず人間の幸せを願うことが大切」と述べた。またサミット終了後、訪れたバチカン市国の枢機卿のひとりが、「世界中の宗教が人類の問題に対応するために共に協力関係を築くとき、仏教の役割は相当なものだ」と述べたエピソードを披露し、己を忘れることを大切にしている仏教が、今日世界の宗教の中で重要な位置を占めていると強調した。
会場からは「脳死や安楽死など、生命倫理に反すると受け止められる動きや、自殺、いじめ、幼児虐待などの社会問題が深刻化する状況の中で仏教が果たす役割とは何か」との質問が出された。これに対し小林氏は、「寺はいつも閉門していたり、日常雑務に忙しく内向きであるという反省に立たねばならない。これからも(今回の講義などを通じて)メディアなどの協力を得られる形で多くの方に仏教の精神を伝えていきたい」と答えた。
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