薬師寺管主の安田暎胤氏
 

熱心に講義に耳を傾ける聴講生
 
 
2005年度リレー講義「現代社会と宗教」
第7回「心の復興−現代世相における宗教の意味」
 
 5月23日(月)、衣笠キャンパスにおいて、連続リレー講義「現代社会と宗教」第7回目講義が行われ、薬師寺管主の安田暎胤氏が「心の復興−現代世相における宗教の意味」をテーマに、宗教者の視点から現代社会で起きる様々な問題について講義を行った。

 冒頭、安田氏は「9.11事件を境に宗教間の対立が問題視されるようになった。世界の人々が信仰する神はそれぞれ異なるが、人々の心に宿る神に差はないのではないか」と宗教間の共通性について触れた。キリスト教やイスラム教などにもお互いを尊敬しあうことや世界平和を願うことなど共通点が多いことを指摘し、宗教それ自体よりも、宗教を信じる人々の敬虔な心が重要であることを示唆した。

 安田氏は日中関係の焦点になっている靖国問題についても言及し、中国の対応に苦言を示しながらも「私の父も戦争の犠牲者で、靖国神社に奉られている。英霊たちも二度と戦争が起こらないことを願っていると思う。日中関係がギクシャクするような参拝ならしないほうがよいのではないか」と小泉首相の対応にも意見を述べた。

 また、宗教が示す人生訓について、仏教の教義の一つ「諸行無常」を引き合いに、「『諸行無常』とは、この世にあるものは刻一刻と変わることを意味する。昨日のことにとらわれず、明日に向かって努力するのが仏教の教え。一生懸命努力すれば、必ず明るい未来がやってくる」と語った。

 最後に安田氏は、癌で余命3ヶ月と告げられた友人のエピソードなどを交えながら、仏教思想と日常生活の関わりを具体的に説明し、講義を終えた。