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経営学研究科
劉 莉 さん
CLA講座で
TOEIC®スコア240点アップ
朝倉さやかさん
「究」バックナンバー
#1 情報理工学部情報システム学科
西尾信彦 教授
#2 理工学部 深川良一 教授
#4 立命館大学歴史都市防災研究センター幹事
中谷友樹 助教授
#5 文学部 木立雅朗 教授
#6 情報理工学部 田村秀行 教授
#7 文学部 北岡明佳教授
#8 理工学部ロボティクス学科
牧川方昭 教授
RS Webアンケート
望月 昭 教授
文学部
立命館大学人間科学研究所所長

人間科学研究所ではどのようなことを行っているのですか?

人間科学研究所では、従来の領域の表現でいえば、 心理、教育、社会学、 社会福祉など、人が人に関わる際の基礎から実践に至るまでの広い領域における研究を行っています。とりわけ近年は、高齢者、心身に障害のある方など、何らかの援助を必要とする人を対象にした「対人援助」に関する研究が中心ですね。「対人援助=助ける」という言葉をキーワードに、生活環境などの物理的環境から法的制度まで、人々をサポートする環境を整えるための研究が求められていると思います。

2000年度からこの「対人援助」プロジェクトは、「学術フロンティア推進事業」、そして2005年度からは「オープン・リサーチ・センター整備事業」という文部科学省の研究支援のもと、広く研究人材を受け入れ、大学院や学部の教学とも連携し、学生と一緒に「対人援助学」という新たな学問を創ろうとしています。

 

「対人援助学」について教えて下さい。

この研究が進んできた背景には「現場」の声が大きく影響しています。「対人援助」には、臨床、教育、福祉関係者等、様々な立場から関わる人達の連携体制がとても重要です。しかし、「共通言語」が十分に整備されておらず、それはそれぞれの背景となる学問領域が、未だにばらばらである現状があります。そんななかで大学はどんな役割を果たすことができるのかというきわめて実践的課題が、このプロジェクトの基本コンセプトです。

この分野での研究は、これまで「測定(はかる)・教授(おしえる)・治療(なおす)」を基本とし、障害のある人が、現状での日常生活を送るために、ことばや運動のスキルなどを教える方法を検討していました。しかし、現在は当事者だけに努力を強いるのではなく、環境に新しい設定を設けること、それもいきなりマクロな設定を変えるだけでなく、一人ひとりに寄り添って、連続的に変更を要請していくことが必要です。

さらにこの環境設定の変更についても「押し付け」とならないように、当事者の自己決定の原則に基づき、それを「助ける」ために不可欠な「過不足のなさ」をどう提案するかが重要なポイントとなります。

人間研主催特別公開講座
「当事者と共に創る対人援助」
生協書籍部でのジョブコーチ作業

 

先生の研究活動について教えて下さい。

私は現在ジョブコーチシステムの研究をしています。このジョブコーチシステムとは、障害のある人の就労現場にジョブコーチ(援助者)が共に入り、様々な支援を行い、円滑に就労出来るようにするシステムです。立命館では2004年から学生ジョブコーチシステムという取り組みがスタートし、学生が主体となって援助作業を行い、実践を通じて先に挙げた「対人援助学」の方法論を創り上げています。この学生ジョブコーチは、実習生に教えるだけでなく、より働きやすい環境はどのようなものかを厳密な記録から分析し、企業の人々にプレゼンテーションをして理解を得る、という対人援助に必要な総合的活動を行っています。

立命館で行っている学生ジョブコーチシステムは、大学生協で生徒に職場実習を体験させたいという近隣の養護学校からの依頼からスタートしました。具体的な内容としては大学院生2人一組が学生ジョブコーチとなり、立命館生活協同組合の書籍部で実習生をサポートしました。ジョブコーチは書籍部での仕事を学びつつ、実習生のサポートも同時に行っていたため、当初は苦戦を強いられました。しかし、立命館生活協同組合の方々の多大な理解とサポートのもと、実習生の状態に見合った課題分析や援助設定の発見・新しい援助設定の定着を依頼する活動まで行うことができました。

今では、立命館生活協同組合の他、学外でもユースホステルや生活協同組合等で、学部や研究科を超えて20人ほどの学生が活動しています。

学生ジョブコーチが、実践援助と分析的検討から、新しいアイデアを打ち出し、それが企業や養護学校で受けいれてもらえた時、そしてそこで見つかった方法論が、今までの学問領域からは示されない新しいものだと感じたときに、このプロジェクトが役に立ったと実感できますね。

 

最後に学生へのメッセージをお願いします。

「対人援助」というキーワードを中心に、法律系や工学系など様々な分野の研究者、そして企業、自治体などと実践的テーマの共有化を図ることができてきました。最近では、衣笠キャンパスのみならず、びわこ・くさつキャンパスや立命館アジア太平洋大学の研究者との連携も進めています。

私は人間科学研究所を「出会い系研究所」と呼んでいるのですが、今後はさらに様々な現場とのネットワークを構築し、実績を積むことで「対人援助学」を深め、国内外に発信をしていきたいと思っています。近々、人間科学研究所のホームページ上のFive at the Corner というネットフォーラムで、国外の研究者・実践者の意見を連載していく予定です。学生の皆さんもアクセスしてみて下さい。

人間科学研究所では、様々なプロジェクトが進行しています。その内容や成果はホームページで逐次紹介していますので、参加したいと思うプロジェクトがあれば、学年、学部を問わず、修学館の2階の人文社会学リサーチオフィスの人間科学研究所担当のスタッフにご連絡ください。

学生ジョブコーチによる
養護学校向けプレゼンテーション
ひらめき☆ときめきサイエンス
(中高生向け公開研究会)
「携帯電話を用いた
障害者とのコミュニケーション」

 

立命館大学人間科学研究所
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取材・文 河野浩子(政策科学研究科M2)
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