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文学部 日本史学専攻
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「学」バックナンバー
#1 法学研究科 平井利枝 さん
#2 理工学研究科 並河祥司 さん
#3 経営学研究科 劉 莉 さん
#4 社会学研究科 池田さおり さん
#6 政策科学研究科 藤井えりの さん
#7 国際関係研究科 佐伯廣謙さん
#8 文学研究科 石川ちひろ さん
#9 情報理工学部 野口尚吾 さん
RS Webアンケート
経済学研究科 博士課程前期課程1回生 
中川賢司さん
2003年、2004年 岩田勝雄教授 ゼミ
2005年 寺脇 拓助教授 卒業研究

私は高校時代から環境問題に興味がありました。そこで、環境や福祉、労働問題といったものを、ヒューマン・エコノミーコースという形で経済学の観点から分析している立命館大学経済学部に興味を持ち入学しました。

まず、1回生では「ミクロ・マクロ経済学」が経済学の基礎を学ぶ上で勉強になりました。需要・供給曲線とは、人の購買意欲の行動パターン、例えば「人は安ければ買うが、高いとなかなか買わない」といったことを抽象化して、グラフに表したものです。これを分析することで、今何が売れ、何が人気がないのか、といったことが分かったり、また、そこに税金が関わってきたとき経済の流れがどう変わっていくのかを考察できるようになりました。また、「ミクロ・マクロ経済学」は数学を使って理論構築をするので、説得力もあります。しかし、一方でこれだけでは全ての経済的側面を説明できないときがあります。そのこともふまえて、考えることができるのが、「社会経済学」という授業でした。今は、この2つをバランスよく捉えて、勉強しているところです。

2回生では、岩田勝雄先生のゼミでアジア経済を中心とした国際経済、国際問題を選択しました。先生からアドバイスをもらいながら、自由に研究ができるスタイルだったので、色々な分野の研究をしているゼミ生がいて、とても刺激的でした。そして私は、環境の他に、貧困問題、開発、環境教育についても興味を持ち、卒論に向けての研究課題が見え始めてきました。 

ゼミナール大会では、フェアトレードを実現するための研究をしました。私が考えたフェアトレードというのは、国際貿易に税金を課すことにより、労働者の支援を行おうというものです。

例えば、フィリピンのプランテーションでは地主や税金、物流、卸、小売店などがほとんどの利益をとってしまい、労働者はわずかな儲けしかなく、奴隷的な生活を余儀なくされます。そこで私が考えたフェアトレードでは、年間何兆円とも言われる大規模なお金が動く国際貿易に、0.5〜1%程度の税金をかけ、その税金を豊かな人々が負担し、それを原資として、貧困に苦しむ労働者への援助を行っていこう、というものです。所得が増えれば、きちんとした教育を受けたり、病院に行くこともできます。ゼミナール大会の担当教員からは、貿易以外にも、高所得者が参加し、貿易の10倍以上の取引額が動く金融取引も課税対象としては相応しいのではないか、というアドバイスもいただきました。

また3回生からは、学術的な英語を学ぶことを目的に、立命館・UBCジョイント・プログラムを利用し、カナダへ留学しました。カナダでは語学以外にも、産業革命以前の経済史を学び、基礎的な発展の裏には貧困が存在し、その問題をどのように解決していったのかといったことを学びました。その知識をもとに、現在起こっている貧困問題などにどのように対応していけばよいか考えました。

カナダから帰る直前、これまで自分が日本やカナダで学んできたことを振り返り、学んだことを総合的に活かせるCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)について卒論を進めていこうと、考えがまとまってきました。

帰国後は、環境経済学を専門としている寺脇拓先生のもとで卒論作成を進めていくことにしました。環境に興味を持ち、世の中を変えたいと思っていましたが、企業を変えたいと思っても簡単には応じてくれないが現状です。ですから、企業の立場を理解した上で議論していくことが必要で、そこには経済学が活用できると考えました。企業には環境問題への取り組みや、従業員の手当てなどを報告した「CSR報告書」というものがあります。そこで環境問題や、途上国への賃金体制などにも配慮したCSR活動を行うことで、消費者の評価がどうなるかを金銭的に見てみよう、ということを卒論のテーマにしました。「環境への取り組み」「食品安全に対する配慮」「フェアトレード」の3つのCSR活動について、街に出て、175人から得たアンケート結果を選択型実験という手法で分析し、評価しました。結果はやはり「ある程度のCSR活動に対してならば、消費者はその製品が少々高くても積極的に購入するだろう」というものでした。

卒業論文を書く上で気をつけたことは、書くことを目的とするのではなく、社会に役立つ論文を書こうという意識を持って取り組むことでしたね。

CSRという分野は、まだまだ新しいので、参考文献があまりありません。新しいものを作るときは高いクオリティが要求されるので、これからもしっかり研究していきたいと思います。そして卒業論文を英訳し、理論的な部分を修正したうえで、学会に投稿したいとも考えています。また、政府が、企業のCSR活動の取り組みを推進させていくことの必要性を考えた、政策的観点からの研究も現在進めているところです。

将来的には、就職し、働く中でキャリアを高め、国際公務員として国連などに勤めたいと思っています。そして今研究していることを、そこで活かしてみたいです。また勤める中で、CSR活動を積極的に行い、他企業にも影響を与えていきたいですね。そして少しずつ、世の中を変えていけたら、と思っています。

卒業研究が完成するまで―中川さんの場合

回生 授業スタイルと研究方法キーワード
1回生 「ミクロ・マクロ経済学」から経済学の基礎知識を学びました。
環境問題に興味があるので、その分野の一般教養も積極的に学びました。
キーワード ex) 地球変動と生物
ミクロ・マクロ経済学
社会経済学
…etc.
2回生 ゼミナール大会で、フェアトレードに関する研究を行い、プレゼンしました。
キーワード ex) ゼミナール大会
フェアトレード
…etc.
3回生 UBCプログラムでカナダに留学をしました。語学だけでなく、世界の経済史なども学びました。
キーワード ex) 留学
アカデミック英語 
経済史
…etc.
4回生 CSR(企業の社会的責任)をテーマに卒論研究を進めていきました。
キーワード ex) CSR
アンケート集計
…etc.

研究成功の秘訣
―よりハイレベルな卒業研究のために

 

寺脇 拓 助教授

経済学部では2・3回生時にゼミが設けられており、そのゼミでの研究をさらに発展させたいと考える学生だけが卒業研究を履修します。そのため、例年卒業研究の履修者数は多くなく、非常に中身の濃い指導ができたと思っています。

中川さんは企業の社会的責任(CSR)活動に対する関心が高く、CSR活動の取り組みの事例や各国の制度について積極的に情報収集を行い、その実態を十分に把握していました。しかしそれだけでは論文にはなりません。私は、具体的な研究仮説を立て、それを客観的に分析するよう指導し、そのためのいくつかの方法論を教えました。また、論文作成の段階では、1つ1つの言葉の選択から、論文全体の構成まで、細かく指導しました。でも、中川さんはそんな口うるさい私の指導にも我慢強く耐え、持ち前の努力で見事に非常にレベルの高い論文を書き上げました。彼の論文が父母教育後援会表彰制度で優秀賞を受賞したときは、その苦労を知っているだけに私も非常に嬉しかったです。

卒業研究は、まさに大学での勉強の集大成です。卒業論文を書くことを通して、完璧な論理的思考力が身に付くとまでは言えませんが、その「かけら」は身に付けられると思います。これは、皆さんにとって他では得られない貴重な財産です。ぜひ4回生になったら卒業研究を履修し、その「論理的思考力のかけら」を身に付けて下さい。それはきっと皆さんの人生の大きな助けになると思いますよ。

取材・文 北村麻美(経営学部4回生)
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