RS Web 学園通信
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文学研究科
石川ちひろさん
情報理工学部
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教職支援センター
竹内久代 さん
「究」バックナンバー
#1 情報理工学部情報システム学科
西尾信彦 教授
#2 理工学部 深川良一 教授
#3 文学部 望月 昭 教授
#4 立命館大学歴史都市防災研究センター幹事
中谷友樹 助教授
#5 文学部 木立雅朗 教授
#6 情報理工学部 田村秀行 教授
#7 文学部 北岡明佳教授
RS Webアンケート
牧川方昭 教授
立命館大学 理工学部 ロボティクス学科
立命館大学スポーツ・健康産業研究センター・センター長
所属学会:バイオメカニズム学会、日本生体医工学会など

先生の脳科学システムプロジェクトの一つ「座るだけで心電図がとれる椅子」はどのように生まれたのですか?

従来の心電図というと、素肌に3個以上の電極を付けて計測するのが一般的で、手間が掛かるものでした。そのため先行研究では、韓国において浴槽を用いて計測する方法等が研究されていました。そこで、もっと簡単に計測する方法はないものかと考えたことが、この研究を始めたきっかけです。そうして研究室の学生である丸山敏弘さん(理工学研究科博士課程前期課程2回生)らと開発したのが、服の上から2個の電極を乗せるだけで心電図を計測できるという技術でした。

 

この技術のポイントと将来の可能性について教えてください

この心電図計測技術は服を脱ぐ必要も無く、また電極によって皮膚がかぶれる心配もありません。そのため、より容易でまた幅広い場面で心電図を測定することが可能になります。今はノイズ等の課題がありますが、私は今後この技術をさらに発展させ、心電図計測を簡易なものにすることによって様々な用途が生まれると思っています。例えばイスやベッドに組み込むことで、高齢者の生体機能状況のチェックが行えますし、車のハンドルに組み込むことで運転者の眠気を感知することもできます。ぬいぐるみに組み込めば、ぬいぐるみが子供の気持ちを汲み取ることができるかもしれませんね。

昔は「ロボット」というと、ヒトが入れないような危険なところで仕事をするためのものでした。しかし、これからはヒトに優しいロボットの研究が行われ、ヒトの生活の中にもっとロボットが入っていくようになるでしょうね。そしてヒトがロボットを管理する必要はなくなり、今度は「ロボットが人を気遣う」世界になっていくのではないでしょうか。

座るだけで心電図がとれる椅子
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平成18〜20年度文部科学省知的クラスター創成事業 岐阜・大垣地域
ロボティック先端医療クラスター:高齢者向けベッドモニタリングシステム

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他にどのような研究テーマがあるのですか?

私の研究室は生体工学を専門としていて、工学の生体機能解明への応用や工学の医療・福祉分野での応用、生体機能の工学応用を対象としたテーマが多いのが特徴です。研究生には世の中のためになることで、「新しいこと」を研究するように言っています。

具体的な研究テーマとして、まず「マイクロ体内ロボットの開発」があります。このロボットは体腔内で診断、サンプリング、切除、凝固手術をすることができます。私は内視鏡機構に搭載するコンピュータシステムを開発していて、がん細胞を死滅させる方法等も研究しています。この他に、コンピュータシステムを開発していく中で出てくる技術を産業に応用しています。

「体内埋め込みセンサの開発」では、生まれたてのウシなどの家畜にセンサをあらかじめ埋め込むことで、体内温変動、心拍変動、体動などを長期にわたって管理するシステムを開発しています。また、「靴下の快適性の評価」では歩行中の足の骨のアーチ構造の変化に着目して、新しい定量評価手法を開発したり、また研究を活かして実際に靴下の開発を行ったりもしています。その他にもスポーツ、健康に関連した研究をいくつも行っています。 

診断・治療のためのマイクロ体内ロボット(2010年)
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埋め込み式センサチップの開発
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生体工学を研究するに至ったきっかけを教えて下さい

大学時代の私は物理系生物工学を専攻していて、専門は電子工学の電子回路でしたが、卒業後は滋賀医科大学医学部の整形外科とご縁があり、そこで働くことになりました。そこで、電子工学という分野を医学の整形外科(骨や筋肉という対象)に活かすことができるのではないかと考えました。そして滋賀医科大学やその後に勤めた国立循環器病センターでは、整形外科の医師と共に研究を行っていました。その中で私は、工学の知識を生体機能解明の手段に変え、また逆に生体機能を研究することでそれを工学に応用していくようになりました。最初に世間に注目された研究は、電子回路技術を使ってリウマチの患者の病態の変化を小さい装置で計測するというものでした。この開発で苦労したのは、この装置の評価実験を被験者の日常の中に入れて行なうことでした。実験するというだけで被験者の患者さんがいわゆる「白衣症候群」(白衣を目の前にすると血圧が上がってしまう)になってしまいました。バイオメカニクスの研究開発においては、共同研究者である医師だけでなく、高齢者のような被験者(ヒト)のことを深く考えることが大切なのです。

 

先生にとって研究のやりがいは何ですか?

まず、学生が新しいものを生み出したときにやりがいを感じますね。私の研究室の学生は自主的に勉強し、先輩がゼミを開いて後輩をアシストするという好循環があります。学生が自分たちで経験を積んで、努力して成果を出すという、勉強に対する「やる気」を見ることができたときは、私にとってとても嬉しいことです。

また、自分が新しい発見をしたときも、とてもやりがいを感じますね。今までになかった新しいことをひらめいた瞬間はやはり興奮しますし、そしてそれが実験によって実証され、新しい技術を生み出したときに大きな喜びを感じます。新しいものを生み出すというのはやはり理工系の一番の楽しみだと思います。私にとって研究は趣味みたいなものですね。

 

学生に向けてメッセージをお願いします。

学生には普段から色々なことを経験してほしいです。経験は事象に対する対応方法として蓄積されます。様々な経験をした人ほど対応方法のパターンが多くなるので、初めての経験に対してもパターンの組み合わせによって対応することができるのです。その組み合わせこそが "セレンディピティー(serendipity)"(偶然に幸運な予想外の発見をする能力)につながるのです。

記憶や知識を貯めるだけというだけでは勉強とは言えません。色々な人と話をすること、また様々な経験をすることや、必要ないと思われるようなことも学ぶことが勉強だと思います。ですから、ぜひ学生のうちにたくさんの経験をして下さい。

 
牧川研究室ホームページ
取材・文 向 梨奈(MOT M1)
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